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歯学部に100人入学して歯科医師になれるのは何人?|コホート生存曲線で見る私立17校の6年間

kameman

歯学部に、100人が入学しました。6年後、そのうち何人が歯科医師になれるでしょうか。

答えは、大学によって大きく変わります。私立歯科大学17校の平均では、約45人。最も高い水準の大学では約72人。そして最も低い水準の大学では、約30人にとどまります。「入学=歯科医師」ではありません。同じ100人でスタートしても、6年間で学生は少しずつ減っていき、ゴールにたどり着く人数は大学によってまるで違うのです。

本記事では、文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果(医学教育課調べ)」のデータをもとに、同じ年度に入学した学生集団が学年ごとにどう減っていくかをコホート生存曲線という1本の線で可視化し、私立17校を比較します。そして、この曲線の終点が、本ブログが大学選びの最重要指標としてお伝えしてきたストレート合格率(正式名称:修業年限内合格率)そのものである——という種明かしまでお届けします。

受験生本人はもちろん、お子さんの進学先を検討している保護者の方にも、ぜひ最後までお読みいただきたい内容です。

本記事の要点(30秒まとめ)

  • 私立17校平均では、6年次に到達できるのは入学者の約6割(60.4%)。ストレートで国家試験に合格できるのは44.6%、100人換算で約45人
  • 東京歯科大学・昭和医科大学(旧昭和大学)の2校は終点70%超で突出。一方、最下位の鶴見大学は29.5%(第116〜118回3年平均)
  • 大阪歯科大学は6年次残存率79.7%と17校中最高水準なのに、終点は47.1%。詰まりは進級ではなく「卒業後の国家試験」段階
  • 生存曲線の終点はストレート合格率と定義上同じ。だからこの1つの数字で、6年間の減衰プロセス全体を平等に比較できる

※ 本記事の分析はデータに基づく傾向の比較です。各大学の教育方針や学生支援の内容を評価するものではありません。数値は本記事の集計基準日(2026年6月上旬)時点で公表されていた文部科学省データに基づきます。

目次

  1. コホート生存曲線とは|入学者の減り方を1本の線で追う
  2. 東京歯科大学|入学128人の6年間を実数で追う
  3. 私立17校平均の生存曲線|6年次に到達できるのは約6割
  4. グループ対比と全17校ランキング|曲線の形は大学でここまで違う
  5. 大阪歯科大学の特異性|6年次残存79.7%なのに終点47.1%
  6. 生存曲線の終点はストレート合格率そのもの
  7. 留年1年で約1,500万円|生存曲線は経済リスクの地図にもなる
  8. まとめ|出口の数字を主軸に、入学後の学習で勝ち切る

コホート生存曲線とは|入学者の減り方を1本の線で追う

コホート生存曲線とは、同じ年度に入学した学生集団を卒業・国家試験合格まで追いかけ、各学年に何人が残っているかを1本の線で描いたグラフです。「同じ年度に入学した集団」のことを、統計の用語でコホートと呼びます。

本記事では、平成30年度・平成31年度に入学した2つのコホートを追跡し、その2年平均を基本とします。単年のデータは年ごとのブレが大きいため、2年分をならすことで、より実態に近い形を見ることができます。

曲線が下がる主因は「留年・休学」という一時的な足止め

なぜ曲線は下がっていくのでしょうか。主な原因は留年と休学です。学年が上がるところで進級できなかった学生、あるいは休学した学生が、その分だけ次の学年から減っていきます。

私立歯科大学17校の平均では、令和7年度のデータで在籍学生の27.6%が留年または休学の状態にあります。6年次に限ると、その割合は平均41.6%まで上がります。歯学部の6年間に「足止め」がいかに多いかが分かる数字です。

ここで大切なのは、留年や休学は一時的な足止めだということです。留年した学生は翌年度以降に復帰できます。ただし、同じ年度に入学した集団を基準に見ると、その年度の時点では「次の学年に進めなかった」としてカウントされます。

一方、退学、つまり大学を恒久的に離れることによる減少もあります。私立17校の平均では年あたり約4.4%(令和4〜6年度の3年平均)です。ただし大学差が大きく、最も低い大学では1%台、最も高い大学では10%を超えます。曲線の大きな段差の多くは留年・休学による足止めの影響ですが、退学による減少も一部含まれている、と理解してください。

学年別の留年率の詳しい比較は、別記事「私立歯学部の留年率ランキング」で整理しています。

曲線が「増える」例外:松本歯科大学は曲線比較から除外

一部の大学では、曲線が途中で増えて見えることがあります。これは、編入・転入で学生が加わったり、大学側の集計上の扱いによったりするためです。

特に松本歯科大学では、こうした理由で学年の途中から人数が増えており、「入学者が何人残るか」という生存曲線としては機能しません。そのため本記事では、松本歯科大学を曲線の比較から除外し、終点の数値(ストレート合格率3年平均30.1%・私立17大学中16位)のみを記載します。松本歯科大学の修学状況の詳細は個別記事をご覧ください。

曲線の終点は「ストレート合格率」

そして、最も重要な点です。曲線の起点は入学者数(100%)、終点は「修業年限の6年でストレートに国家試験に合格した割合」。この終点は、本ブログが毎回お伝えしているストレート合格率と定義上同じものになります。

なお、本記事では曲線(各学年の残存率)は平成30・31年度入学コホートの2年平均、終点のストレート合格率は第116〜118回の3年平均で表記します。大学を比べる標準として、終点は単年でなく3年平均で語る——これは本ブログ共通のルールです。私立平均で見ると両者はほぼ同じ水準であり、解釈に支障はありません。

データ出典:文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果(医学教育課調べ)」。私立17校の修学状況データの全体像は、親記事「歯学部の修学状況まとめ」で整理しています。

東京歯科大学|入学128人の6年間を実数で追う

まずは1校を、実際の人数で追いかけます。取り上げるのは、ストレート合格率が私立17大学中1位の東京歯科大学です。平成30年度・平成31年度の平均で、入学者は128人でした。

時点在籍者数(概数)残存率
入学128人100%
2年次123人96.1%
3年次115人90.2%
4年次111人87.1%
5年次104人81.6%
6年次100人78.5%
ストレート卒業93人73.0%
ストレート国家試験合格約92人71.9%(3年平均)

※人数は平成30・31年度入学コホートの2年平均に基づく概数です。残存率(2年平均)と、終点のストレート合格率(第116〜118回3年平均)を基準にしています。

東京歯科大学 入学128人の生存曲線

128人で入学して、2年次に進級できたのは123人(96.1%)。ここでの減少は5人です。3年次115人(90.2%)、4年次111人(87.1%)、5年次104人(81.6%)と続き、6年次には100人(78.5%)。そして6年間で留年せずに卒業した「ストレート卒業」が93人(73.0%)。その勢いのまま国家試験にもストレートで合格した人数は、ほぼ同じく約92人です。第116〜118回の3年平均で見たストレート合格率は、71.9%になります。

整理しましょう。128人で入学して、6年後にストレートで歯科医師になれたのは約92〜93人。残りの約35〜36人は、6年間のうちにどこかで足止めされ、6年でのゴールには届かなかった計算です。

ここが大事なところです。これは私立17校の中で最も高い水準の大学の数字です。その最高水準の大学でも、入学者の3割近くは6年でゴールできていない。歯学部の6年間は、それだけ関門の多い道のりだということです。

では、平均的な大学ではどうなるのでしょうか。次のセクションで、入学者の規模をそろえて全体を比較します。

東京歯科大学の修学状況の詳細は「東京歯科大学の修学状況」をご覧ください。

私立17校平均の生存曲線|6年次に到達できるのは約6割

大学によって入学者数は48人から132人まで幅があります。そこで、すべての大学の入学者を100%に換算し、同じスタートラインに並べて比較します。

時点私立17校平均私立15校平均(東京歯科・昭和医科除く)
入学100%100%
2年次87.3%86.1%
3年次77.0%75.5%
4年次70.7%68.8%
5年次63.9%61.5%
6年次60.4%58.0%
ストレート卒業51.7%48.8%
ストレート国家試験合格(3年平均)44.6%41.0%

※残存率は平成30・31年度入学コホートの2年平均。終点のストレート合格率は第116〜118回の3年平均。本記事の集計基準日(2026年6月上旬)時点で平成31年度コホートのデータが未公表だった3校(北海道医療大学・日本歯科大学(東京)・大阪歯科大学)は平成30年度コホート単独値で算入しています(詳細はH2-4・H2-5)。

私立17校平均・15校平均の生存曲線

約4割は6年生になる前に足を止めている

私立17校平均では、2年次87.3%、3年次77.0%、4年次70.7%、5年次63.9%と毎年着実に下がり続け、6年次は60.4%です。学年ごとの下がり幅を見ると、実は入学から2年次への12.7ポイントが最大の段差で、最初の壁は想像以上に低学年にあります。

注目してほしいのは、この6年次の数字です。私立平均では、6年次まで到達できるのは入学者の約6割。裏を返せば、約4割の学生は、6年生になる前にどこかの学年で足を止めている計算です(大半は留年・休学による一時的な足止めですが、一部には退学も含まれます)。

そして最終的に、ストレートでゴールできるのは44.6%。100人で入学したら、約45人。残りの55人は、6年でのゴールには届かなかったことになります。

突出2校を除いた「私立15校平均」では約4割まで下がる

東京歯科大学と昭和医科大学(旧昭和大学・2025年4月に改称)の2校は、数字が飛び抜けて高く、平均値を引き上げます。本ブログでは、この上位2校によるノイズを除いた私立15校平均を比較の主軸としています。

15校平均では、2年次86.1%、6年次58.0%、ストレート卒業48.8%。そして終点のストレート合格率は41.0%です。

上位2校を除くと、終点はおよそ41%。入学者のおよそ4割しか、6年でゴールにたどり着けない。これが、多くの私立歯学部が属する、中間から下のリアルな水準です。

グループ対比と全17校ランキング|曲線の形は大学でここまで違う

ここからは、曲線の「形」を比べます。突出した上位2校、私立15校平均、そして最も苦戦しているグループ。この3つを並べると、同じ歯学部でも6年間の風景がまったく違うことが分かります。

時点東京歯科昭和医科私立15校平均日本歯科大学(新潟)鶴見
入学100%100%100%100%100%
2年次96.1%95.8%86.1%86.2%78.8%
3年次90.2%86.5%75.5%59.3%73.5%
4年次87.1%83.3%68.8%47.2%69.5%
5年次81.6%81.8%61.5%39.0%53.6%
6年次78.5%79.2%58.0%36.6%43.7%
ストレート卒業73.0%75.0%48.8%35.7%34.9%
ストレート国家試験合格(3年平均)71.9%70.6%41.0%32.9%29.5%
グループ対比の生存曲線(突出2校・15校平均・最下位群)

突出2校:東京歯科・昭和医科は「そもそも減らない」

東京歯科大学は、前のセクションで見た通り、各学年での脱落が少なく、曲線がゆるやかに下がっていきます。終点は71.9%で私立17大学中1位です。

昭和医科大学も、ほとんど同じ形です。2年次95.8%、3年次86.5%、4年次83.3%、5年次81.8%、6年次79.2%。終点のストレート合格率は70.6%で、私立17大学中2位です。

この2校の曲線は、私立15校平均のはるか上を通ります。特定の学年に壁があるのではなく、各学年での減り方が根本的にゆるやかなのです。昭和医科大学の修学状況の詳細は個別記事で解説しています。

日本歯科大学(新潟):3年次進級時(2年生のとき)に大きな壁

最も苦戦しているグループは、曲線の形そのものが違います。

日本歯科大学(新潟)は、2年次の残存率86.2%と、ここまでは15校平均とほぼ同水準です。ところが、3年次で59.3%まで一気に落ちます。3年次進級時、つまり2年生のときの進級の壁で、入学者の4分の1以上(約27%分)が足止めされる計算です。その後も4年次47.2%、5年次39.0%と下がり続け、終点のストレート合格率は32.9%(私立17大学中15位)です。

詳細は「日本歯科大学新潟生命歯学部の修学状況」をご覧ください。

鶴見大学:5・6年次進級時に絞られる「後半型」

鶴見大学は、また違う形をしています。2年次でいったん78.8%まで下がるものの、3・4年次の減りはゆるやかで、4年次時点では69.5%と15校平均(68.8%)並みの水準にあります。ところが5年次進級時(4年生のとき)に53.6%へ、6年次進級時(5年生のとき)に43.7%へと、後半の2年間で大きく絞られていきます。この2年間だけで、入学者の約26%分が減る計算です。

終点のストレート合格率は29.5%で、私立17大学中17位となっています。詳細は「鶴見大学の修学状況」で解説しています。

ここでひとつ、大切な補足です。これらの数字はあくまで統計的な傾向であり、「この大学に入ったら歯科医師になれない」という意味では決してありません。最終的な合否を決めるのは、入学後の毎日の学習です。この点は、記事の最後で改めてお伝えします。

全17校ランキング(ストレート合格率3年平均)

私立17校全体の位置関係は、終点の数字=ストレート合格率で次の通りです。

順位大学名ストレート合格率(第116〜118回3年平均)
1位東京歯科大学71.9%
2位昭和医科大学70.6%
3位愛知学院大学52.1%
4位日本歯科大学(東京)51.4%★
5位奥羽大学48.5%
6位大阪歯科大学47.1%★
7位北海道医療大学44.3%★
8位日本大学44.3%
9位日本大学(松戸)42.3%
10位福岡歯科大学42.3%
11位朝日大学42.1%
12位明海大学38.3%
13位神奈川歯科大学36.2%
14位岩手医科大学34.1%
15位日本歯科大学(新潟)32.9%
16位松本歯科大学30.1%★★
17位鶴見大学29.5%

※参考値:私立17校平均44.6%/私立15校平均41.0%(東京歯科・昭和医科除く)
※★:本記事の集計基準日(2026年6月上旬)時点で平成31年度コホートの卒業・国家試験データが未公表だったため、平成30年度コホート単独値で生存曲線を描いた3校(北海道医療大学・日本歯科大学(東京)・大阪歯科大学)です。うち日本歯科大学(東京)は2026年6月下旬に平成31年度データが公表されましたが、同テーマのYouTube動画と数値をそろえるため本記事では平成30年度コホート単独値のままとしています(ストレート合格率3年平均は公表値ベースのため変更ありません)。表のストレート合格率3年平均の値自体は、17校すべて公表値から算出しています。
※★★:松本歯科大学は編入・転入や集計上の扱いで学年途中に人数が増えるため、生存曲線の比較からは除外しています。ストレート合格率の数値自体は正確です。
※3年平均は各年の合格率の単純算術平均です。文部科学省が公表する3か年平均値(3年通算の合格者数÷入学者数による加重平均)とは最大0.3ポイント台の差が生じることがあります。上位・下位の構図は変わりませんが、44.3%・42.3%が同率で並ぶ僅差の中位(7〜10位)では、算出方法により順位が入れ替わることがあります。

なお、上位2校を除く15校のストレート合格率は僅差で並ぶ「団子状態」に近い構造です。特に中位の7〜11位は44.3%〜42.1%と、わずか2.2ポイント差の中に5校がひしめいています。年ごとのわずかな変動で順位が大きく入れ替わりうる点には注意してください。だからこそ本ブログでは、単年ではなく3年平均での比較を標準としています。

大阪歯科大学の特異性|6年次残存79.7%なのに終点47.1%

グループ対比のどの型にも当てはまらない、特異な形の大学があります。大阪歯科大学です。

最初にデータの注意点をお伝えします。大阪歯科大学は修学状況の学年別データの公表が遅れており、令和6年5月1日時点のものが最新です(2026年7月確認時点)。平成31年度入学コホートの卒業・国家試験データが未公表のため、このセクションの生存曲線は平成30年度コホート単独で描いています。一方、終点のストレート合格率は他校と同じく第116〜118回の3年平均(47.1%・私立17大学中6位)を使います。

時点残存率(平成30年度コホート単独)
入学100%
2年次96.9%
3年次87.5%
4年次87.5%
5年次83.6%
6年次79.7%(17校中最高水準)
ストレート卒業75.0%
ストレート国家試験合格(3年平均)47.1%
大阪歯科大学の生存曲線(6年次→終点の落差)
大阪歯科大学の生存曲線(6年次→終点の落差)

6年次まで残れる大学、のはずが

6年次の残存率79.7%は、17校の中で最も高い水準です。入学者の8割近くが6年次まで到達できている。少なくともこのコホートでは、6年次までの残存率が高い大学だと言えます。

ところが、終点のストレート合格率を見ると47.1%。6年次の79.7%から終点の47.1%への落差は32.6ポイントで、17校の中で最大級です。6年次まで8割が残ったのに、最終的なゴール到達は半分以下まで落ち込む。この落差は、いったいどこで生まれているのでしょうか。

詰まりは進級でも卒業でもなく「卒業後の国家試験」

内訳を見ると、この大学の構造が見えてきます。

  • 6年次79.7% → ストレート卒業75.0%:下がり幅はわずか4.7ポイント。6年生まで進んだ学生は、ほぼ無事に卒業できています
  • ストレート卒業75.0% → ストレート国家試験合格47.1%:ここで一気に約28ポイント落ちます

つまり、大阪歯科大学の詰まりは、進級でも卒業でもなく、卒業した後に国家試験へ合格する段階で大きく起きているのです。

6年次までの残存率の高さだけを見ると、足止めの少ない大学に見えます。しかし卒業した後に、国家試験という別の関門が待っている。これが、このコホートで見えた大阪歯科大学の構造です。生存曲線は「どの段階で詰まる大学なのか」まで教えてくれる、という好例だと言えます。この「出口の関門」というテーマは、別記事「歯学部に入学しても歯科医になれない?退学・留年・国試の壁を私立17校で比較」でも詳しく分析しています。

ただし繰り返しになりますが、これは平成30年度コホート単独のデータです。平成31年度のデータが出そろった時点で、改めての確認が必要です。大阪歯科大学の修学状況の詳細は個別記事をご覧ください。

生存曲線の終点はストレート合格率そのもの

ここまで、入学した学生が学年ごとにどう減っていくかを見てきました。このセクションでは、生存曲線の「終点」について、本記事で最も重要なことをお伝えします。

生存曲線の終点——入学者のうち、修業年限の6年でストレートに卒業し、国家試験に合格した割合。これは、ストレート合格率そのものです。

文部科学省の修学状況データで、入学者を起点に「最低修業年限で国家試験に合格した人数」まで追っていくと、その値は文部科学省が公表する修業年限内合格率、つまり本ブログでいうストレート合格率と同じ定義になります。実際、本記事の元データでも、平成30年度コホートの全17校で両者の人数が一致することを確認しています。曲線を正確にたどっていけば、終点は必ずストレート合格率に行き着く——両者は、同じものを別の角度から見た数字なのです。

つまり、こういうことです。本記事でやってきたのは、ストレート合格率という1つの数字を、6年間の物語として目に見える形にほどいていく作業でした。

退学も、留年も、休学も、卒業試験も、国家試験も。歯科医師になるまでに乗り越えるべきすべての関門の結果が、終点の1つの割合に集約されています。曲線の形を見れば「どの学年で学生が減る大学なのか」という脱落の構造が分かります。一方で、最終的な大学選びの比較は、ストレート合格率1本で、すべての大学を平等に行うことができます。

なぜ本ブログがストレート合格率を大学選びの最重要指標としてお伝えし続けているのか。それは、この数字が入学から歯科医師になるまでの6年間の減衰プロセス全体を、たった1つの割合に凝縮しているからです。

各大学のストレート合格率が過去10年でどう推移してきたかは、別記事「ストレート合格率の推移(第109回〜第118回)」で大学別に整理しています。

留年1年で約1,500万円|生存曲線は経済リスクの地図にもなる

ここで、保護者の方に向けて、もう一歩踏み込んだ話をします。生存曲線の「下がり」は、そのままご家庭の経済的なリスクにつながるからです。

仮にお子さんが1年留年すると、どのくらいの負担増になるでしょうか。本ブログでは、次の独自試算をお伝えしています。

項目金額
学費(1年分・全大学共通の目安値)500万円
生活費(1年分)200万円
機会損失(キャリア終盤の1年分の年収)800万円
合計約1,500万円

学費は私立歯学部1年分の目安として500万円、生活費は住居費・仕送りなどで200万円と置いています。そして見落とされがちなのが機会損失です。留年で歯科医師としてのスタートが1年遅れるということは、キャリアの一番最後の1年——経験を積み、収入が高くなった時期の1年分——が失われると考えられます。これを800万円と置くと、合計は約1,500万円。留年1年の重みは、学費の追納だけでは測れないのです。

※この1,500万円は本ブログ独自の試算です。実際の金額は大学・生活環境・その後のキャリアによって変わります。

私立17校平均の生存曲線が示す通り、入学者の約4割は6年次より前に足止めを経験しています。コホート生存曲線は、この経済的リスクが「どの大学で、どの学年で」高まりやすいかを、入学前に視覚的に把握するためのツールでもあります。曲線の下がり方が急な大学ほど、足止めのリスクは統計的に高い。志望校の曲線を、学費の資金計画とあわせて確認しておくことをおすすめします。

まとめ|出口の数字を主軸に、入学後の学習で勝ち切る

最後に、本記事の内容を整理します。

  • 私立17校平均では、6年次に到達できるのは入学者の約6割(60.4%)。ストレートで国家試験に合格できるのは44.6%、100人換算で約45人
  • 私立15校平均(東京歯科・昭和医科除く)では、終点は41.0%まで下がる
  • 突出2校(東京歯科71.9%・昭和医科70.6%)は、特定の壁ではなく曲線全体がゆるやか
  • 日本歯科大学(新潟)は3年次進級時(2年生のとき)の壁、鶴見大学は5・6年次進級時の後半絞り込みと、苦戦しやすい学年は大学によって異なる
  • 大阪歯科大学は6年次残存率79.7%と最高水準なのに終点47.1%。詰まりは卒業後の国家試験段階にある
  • そして、生存曲線の終点はストレート合格率そのもの

曲線の形は、大学ごとの「脱落の構造」を教えてくれます。しかし最終的な大学選びの指標としては、ストレート合格率1本で、すべての大学を平等に比較できます。だからこそ本ブログは、ストレート合格率を大学選びの主軸とすることをおすすめし続けています。ストレート合格率の高い大学を選ぶことは、結果として、卒業後に既卒として国家試験に挑み続ける状況へ流れる可能性を下げる方向にも働きます。

どの大学でも、合否を決めるのは入学後の毎日

ここまでデータで大学を比較してきましたが、最後にいちばん大切なことをお伝えします。

本記事でお見せした数字は、あくまで統計的な傾向です。最下位とされる大学に入学したら歯科医師になれない、という意味では決してありません。最終的に国家試験にストレートで合格できるかどうかを決めるのは、入学後の毎日の学習です。数字が低いとされる大学でも、コツコツと知識を積み上げた学生は、ちゃんとストレート合格をつかんでいます。逆に、数字の高い大学に入っても、学びを怠ればゴールは遠のいてしまいます。

大学選びは、あくまでスタート地点です。低学年からしっかり学習習慣を身につけ、着実に進級していけば、ストレート合格は十分に手の届く目標です。本記事の生存曲線は、「入学後の6年間をどう走り切るか」を考えるための地図として活用してください。

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YouTube動画でも解説しています

本記事の内容は、YouTube長尺動画「入学100人→歯科医師になれるのは何人?私立17校の6年間を追う」でも詳しく解説しています。動画では、生存曲線が学年を追って下がっていく様子をグラフで確かめながら、17校を比較できます。

入学100人→歯科医師になれるのは何人?私立17校の6年間を追う(YouTube)

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歯学部受験情報館を運営しているシカラボです。 教育機関で10年以上、歯学部に関するデータを扱ってきました。 入学者ベースのストレート合格率・留年率・退学率など、見落とされやすい指標を、 厚生労働省・文部科学省・各大学公式サイトの一次資料から継続的に分析しています。
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