歯学部29大学の情報公開姿勢を徹底比較【留年率・ストレート合格率の公開状況ランキング】
歯学部を選ぶとき、志望校の公式サイトで「留年率」や「ストレート合格率」を調べたことはありますか。調べようとしたのに見つからなかった大学、逆に、求められている以上にたくさんの数字を出している大学——その差は、思っている以上に大きいのが実情です。
実は、留年率やストレート合格率を大学のホームページで公表することは、2014年から国が歯学部に求めてきた方針です。それでも、自校で公開していない大学、1年以上古いデータを放置している大学が現にあります。一方で、最低限を超えて多くの数字を自主的に出している大学もあります。
この記事では、歯学部のある全国29大学について、情報公開の姿勢を同じ4つの基準で採点し、S・A・B・Cのグレードに分けたランキングをお届けします。「この大学で6年間を順調に終えられるのか」という肝心の問いに、確かな情報で向き合うための記事です。
本記事の要点(30秒まとめ)
- なぜ歯学部だけ留年率・ストレート合格率の公開が求められているのか(2014年からの国の方針)
- 全29大学の情報公開姿勢を4軸で採点したグレードランキング
- 最低限を超えて自主開示する大学(グレードS:3校)の実態
- 国公立と私立、情報公開の姿勢が前向きなのは意外にも私立
- 大学が出す数字は正しく作られているか——松本歯科大学の進級者数の表を例に
目次
- 歯学部の情報公開は「国の方針」——2014年から何が求められているのか
- 評価基準——何で採点するか(4軸・S/A/B/Cグレード)
- 私立17校ランキング——グレードS・A・Bの実態
- 国公立12校の公開状況——意外にも私立より後ろ向き
- 松本歯科大学に見る「数字の正確性」——進級者数の表は信用できるか
- 情報公開の誠実さと、大学選びの進め方
歯学部の情報公開は「国の方針」——2014年から何が求められているのか
結論からお伝えします。留年率・ストレート合格率を大学ホームページで公表することは、2014年から国が歯学部に明確に求めてきた方針です。情報公開の姿勢を大学選びの指標にする——この記事の考え方は、国の方針に沿ったものなのです。
大学が見せる数字には2種類ある——パンフレットの数字と、文科省が求める数字
本題に入る前に、大切な考え方をひとつ共有させてください。大学が見せる数字には、2つの種類があります。
ひとつは、パンフレットやオープンキャンパスで、大学が自ら前面に出してくる数字です。これは自校の強みや特色を押し出す性質上、見栄えよく整えられている可能性があります。もうひとつは、文部科学省の求めに応じて公開される数字です。留年率やストレート合格率といった、教育の質を客観的に示すよう国から指示された指標であり、大学の本当の姿はこちらにこそ表れます。
大学の特色や特徴ある取り組みを知るには、パンフレットが役に立ちます。けれども「この大学で6年間を順調に終えられるのか」という肝心の問いに答えるのは、文科省の求めで公開される客観データのほうです。この記事で調べたのは、その客観データを各大学がどう出しているか——つまり情報公開の姿勢です。
そもそも大学の情報公開義務とは(学校教育法施行規則第172条の2)
大学の情報公開には階層があります。土台にあるのは学校教育法施行規則第172条の2です。これは、すべての大学に対して、卒業者数・授業料・進路の状況などを公表するよう義務づけたものです。公表項目は年々拡充されており、2025年4月施行の改正では「入学者の選抜に関すること」が新たに追加されました。
ただし、留年率やストレート合格率そのものは、この条文が直接義務づけている項目ではありません。これらは、歯学部に対して特別に「上乗せ」で求められたものです。
歯学部への「上乗せ要請」——2014年の「提言・要望」
その上乗せの決定打が、2014年2月24日の、文部科学省「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」による提言・要望です。ここで各歯学部に対し、「大学ホームページに掲載するなどの方法により、入学者選抜区分ごとの留年率・国家試験合格率を公表すること」と明確に要請されました。
※この記事では「ストレート合格率」を通称として使います。正式には「修業年限内合格率」と呼ばれ、入学者数を分母として、6年間という標準の修業年限内に国家試験へ合格した割合を示す指標です。
今からおよそ12年前、留年率とストレート合格率を自校サイトで出すことは、すでに文部科学省の強い政策方針になっていたわけです。
なぜ歯学部だけ?——3つの背景
では、なぜ歯学部だけここまで細かく数字を求められるのか。背景は大きく3つあります。
- 歯科医師の供給過剰:歯学部の入学定員は、昭和60年の3,380人から平成26年には2,460人へと、27.2%も削減されてきました。
- 入試の選抜機能の低下:大学全入時代を迎え、入試で十分な選抜が働きにくくなりました。
- 低い国家試験合格率・留め置き問題:国家試験の合格率が低く、留年や留め置きが深刻化しました。文科省の第1次報告は「歯科医療の信頼性に関わる深刻な事態も憂慮される」とまで記しています。
定員を減らすこと(量の適正化)と、教育の質を数字で見える化すること(質の可視化)。この2つは、車の両輪として進められてきました。
全大学共通の流れ——教学マネジメント指針・グランドデザイン答申
情報公開は、歯学部だけの特殊な話ではありません。すべての大学に向けても、国は強く求めています。
2018年の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では、「教育の質の保証や情報公表に真摯に取り組まない大学は……撤退する事態に至ることがあり得ることも覚悟しなければならない」と記されました。さらに2020年の「教学マネジメント指針」では、「修業年限期間内に卒業する学生の割合、留年率、中途退学率」を、すべての大学が把握・公表すべき基本情報として明記しています。
この指針には「入学前の情報提供が不十分で入学後に学生が失望する例」という一文があります。これはまさに、受験生にとって情報公開がなぜ大事なのかを言い表した言葉です。情報公開は、歯科業界限定の話ではなく、国の高等教育政策全体の流れなのです。
評価基準——何で採点するか(4軸・S/A/B/Cグレード)
ランキングの信頼性は、採点基準を先に開示することで担保されます。読者の皆さんが、自分の志望校を自分の目で確かめられるよう、基準を明らかにしておきます。
4軸の採点基準
採点は、次の4つの軸でおこないました。
| 軸 | 採点内容 |
|---|---|
| 軸1:自校公開の有無 | 各学年の進級状況・ストレート合格率を自校公式サイトで公開しているか(文科省へのリンク1本だけは「公開なし」扱い) |
| 軸2:最新性 | 文科省が公表済みのR7(令和7年5月1日現在)相当データまで自校で更新しているか。1年以上遅れていないか |
| 軸3:基本項目の網羅 | 国の要請する最低限——各学年の進級状況・ストレート合格率——が揃っているか |
| 軸4:+α 自主開示 | 最低限を超えて、全学年分の進級状況・中退率・就職率・国家試験合格率の複数年推移・計算式の明示などを自主的に公開しているか |
軸1〜3を満たしたうえで、この軸4まで満たした大学が、最高評価のグレードSになります。
S・A・B・Cグレードの定義
| グレード | 定義 |
|---|---|
| S | 軸1〜3を満たした上で、軸4(+α自主開示)が顕著。最低限を大きく超えて自主開示している |
| A | 軸1〜3をすべて満たす——自校公開あり・R7相当の最新・基本項目を網羅。国の要請に過不足なく応えている |
| B | 自校公開はあるが、最新でない(更新が文科省より遅れている)または基本項目が一部欠ける |
| C | 自校での公開が実質ない(修学状況ページがない、または専用ページはあっても中身が文科省リンクのみで自校データはゼロ) |
BとCの違いは大切なので、はっきりさせておきます。Bは「自校サイトに修学状況データを載せているが、最新版に追いついていない/項目が足りない」。Cは「自校サイトに自校のデータがそもそも載っていない」。B=出してはいるが不十分、C=出していない、という切り分けです。
調査方法
本ランキングは、2026年5月17日時点の各大学公式サイトを確認し、文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果」(令和7年版)と対照したものです。情報公開の状況は変わり得るため、志望校の最新の状況は各大学公式サイトでご確認ください。
私立17校ランキング——グレードS・A・Bの実態
まず全体像です。私立17校の内訳は、グレードSが3校、グレードAが11校、グレードBが3校。そして「自校での公開が実質ない」というグレードCはゼロ校でした。私立の歯学部は、すべての大学が自校サイトで修学状況を公開しています。ここはまず、評価できるポイントです。
グレードS(3校)——最低限を大きく超えて自主開示する大学
- 東京歯科大学:全学年分の進級状況・中退率・就職率・国家試験合格率の複数年推移、さらに中退率の計算式まで、5つの+α項目をすべて自校サイトで公開。受験生が検索してすぐ確認できる設計です。
- 日本大学松戸歯学部:注目すべきは「令和8年5月1日現在」のデータまで掲示していること。これは全29校で唯一、文科省より1年先行した公表です。国家試験合格率の5年分推移を新卒・総数別で出している点も充実しています。
- 朝日大学:中退率・就職率・国家試験の複数年推移・全学年分の進級状況という4項目をPDFで公開。
グレードA(11校)——国の要請に過不足なく応えている大学
グレードAは、私立17校のうち最も多い11校です。奥羽大学・日本大学歯学部・日本歯科大学(新潟)・神奈川歯科大学・昭和医科大学・明海大学・鶴見大学・岩手医科大学・松本歯科大学・愛知学院大学・福岡歯科大学。これらの大学は、自校サイトで公開しており、データもR7相当の最新版、基本項目もそろっています。
中でも奥羽大学と日本歯科大学(新潟)は、卒業率の計算式まで明示しており透明性が高い。とくに日本歯科大学(新潟)は、編入学を「含む」欄と「除く」欄を分けて注記しています。これは後の章でも触れますが、とても誠実な出し方の好例です。
グレードB(3校)——自校公開はあるがR6止まり
グレードBは、日本歯科大学(東京)・大阪歯科大学・北海道医療大学の3校です。この3校に共通するのは、自校での公開はあるものの、データが令和6年版(R6)で止まっていること。文部科学省はすでにR7データを公表済みなのに、自校サイトはR6版のままです(2026年5月時点)。
繰り返しになりますが、グレードBは「公開がない」のではなく「公開はあるが古い」点がグレードCとの違いです。受験生としては、自校サイトのデータが最新かどうか、基準日を確認する習慣が大切になります。
情報公開の姿勢とストレート合格率は別物——相関は見られない
「情報公開の姿勢が前向きな大学ほど、ストレート合格率も高いのでは?」——気になるところですが、実際のデータを見ると、はっきりした相関は見られません。たとえばグレードSの3校でも、第118回のストレート合格率は東京歯科大学75.0%に対し、日本大学松戸歯学部は38.6%。同じグレードSでも大学差が大きく、グレードB3校(日本歯科大学・東京51.9%/大阪歯科大学46.9%/北海道医療大学43.4%)と比べても、グレードが高いほど合格率が高い、とは言えません。国公立でも、自校公開のないグレードC校がストレート合格率では高い、というケースが珍しくありません。
逆に言えば、「合格率が高いから情報を公開する/低いから隠す」という単純な話でもないということです。情報公開の姿勢は、ストレート合格率の高い低いとは別の、独立した指標。その大学が受験生にどれだけ誠実に向き合い、データをどれだけ正直に・最新の状態で見せているか——学力レベルとは切り離して見るべき、その大学のガバナンスの問題なのです。だからこそ、合格率ランキングとは別に、情報公開の姿勢そのものを見る価値があります。
なお、各大学のストレート合格率そのものの比較は、別記事の全29大学の修学状況まとめで詳しく扱っています。
国公立12校の公開状況——意外にも私立より後ろ向き
「国立だから安心」という素朴な思い込みが、情報公開の姿勢で見るとむしろ逆になる——そんな意外な発見をお伝えします。
グレードA(4校)——R7最新まで公開
国公立でグレードAは、東北大学・大阪大学・徳島大学・九州歯科大学の4校です。これらはR7の最新データまで自校で公開しています。
グレードB(4校)——公開はあるが更新が遅れている
グレードBは、新潟大学・長崎大学・広島大学・鹿児島大学の4校。自校公開はありますが、新潟・長崎・広島はR6版で止まっており、鹿児島にいたってはR4版、つまり3年遅れです。私立のグレードB3校と同じく「公開はあるが最新版に追いついていない」グループです。
グレードC(4校)——自校公開が実質ない
グレードCは、北海道大学・東京科学大学・九州大学・岡山大学の4校です。この4校は、歯学部のサイトを見ても、修学状況のページそのものが見当たりません。留年率やストレート合格率を自校では公開しておらず、受験生が自校サイトで肝心の数字にたどり着けない構造になっています。
国公立も油断できない——「九州大学 留年率」で大学公式に数値が出ない構造
たとえば「九州大学 留年率」と検索しても、大学の公式サイトに数値が出てきません(2026年5月時点)。受験生は、文科省の集計データを自分で探しにいく必要があります。学費が約350万円(6年計)で統一されている国公立は、学費公開の差はありません。しかし、修学状況の公開・更新の格差は、A4校・B4校・C4校とばらついており、決して小さくないのです。
国公立 vs 私立——情報公開の姿勢が前向きなのは意外にも私立
ここで、私立と国公立を並べてみます。私立17校はS3・A11・B3でグレードCはゼロ。国公立12校はA4・B4・C4です。
お気づきでしょうか。意外なことに、情報公開の姿勢が前向きなのは私立のほうなのです。私立は「自校での公開が実質ない」グレードCがゼロ。一方、国公立、とりわけ国立大学には、修学状況を自校サイトで公開していない大学が現にあります。
私立の歯学部は、学費約1,800〜3,200万円という大きなお金を受験生・保護者から預かる以上、説明責任への意識が働きやすいのかもしれません。逆に、国公立は税金で運営される公的機関だからこそ、本来もう少ししっかり公開すべきではないか——これは特定の国立大学を攻撃するものではなく、国公立全体への建設的な問いかけとして受け止めていただきたいところです。「国立だから安心、私立だから不安」という素朴な先入観が、情報公開の姿勢で見るとむしろ逆になる、ということです。
松本歯科大学に見る「数字の正確性」——進級者数の表は信用できるか
ここまでは「公開しているか」「最新か」という話でした。最後にもうひとつ、出している数字が、そもそも正しく作られているかというデータの正確性の視点を、ひとつの具体例で掘り下げます。
題材——松本歯科大学の修学状況「①各年度の入学者数と進級者数」の表
題材は、松本歯科大学の修学状況PDF(令和7年5月1日現在)の中の「①令和元年~令和7年度までの各年度における入学者数と進級者数」という表です。前章で触れたとおり、松本歯科大学は修学状況をR7版まできちんと公開しており、グレードAです。問題にしたいのは、公開されている下記の内容です。

何が起きているか——6年次87人が入学者数85人を上回る
上記の階段表で、松本歯科大学は1年次の人数を「②の(a)と同数」、つまり編入学を除いた当初の入学者数だと、自ら定義しています。令和元年度の入学者は85人です。本来この表は、その85人が学年を上がるごとに何人になるかを追跡する表であり、留年や退学が起きるため人数は減っていくはずです。
ところが実際の数値を見ると、令和元年度入学のコホートは、5年次が72人だったのに、6年次で87人に増えています。6年次の87人が、入学者数の85人を上回ってしまっているのです。コホート(同じ年に入学した学生集団)を追跡する表で、最後の学年の人数が最初の入学者数を上回ることは、論理的にあり得ません。
これは集計上の誤り——訂正・改善が望ましい
なぜこうなるかというと、上位学年の進級者数に、編入学してきた学生が混ざってしまっているからだと考えられます。1年次は「編入学を除く」と定義しているのに、上位学年には編入学者が含まれている。表として整合していないのです。これは集計上の誤りであり、訂正・改善が望ましいと言えます。
ここで誤解しないでほしいのは、これを「不正」や「ごまかし」といった意図の問題として言っているのではない、ということです。あくまで、表の作り方に誤りがあるという、データの正確性の観点からの客観的な指摘です。実際、松本歯科大学は、卒業率の表では「※編入学除く」、③卒業留年率の表では「※編入学を含む」ときちんと注記しています。情報をごまかそうとする意図は感じられません。
受験生はどう確認すべきか
では、受験生はこの数字をどう受け止めればよいのか。大切なのは、大学が出している表をそのまま鵜呑みにせず、「何を分母にした数字なのか」を一度確かめることです。
救いはあります。ストレート合格率そのものは、文部科学省の集計で正確に確認できます。文科省の集計は、一貫して当初の入学者数を分母にしています。本サイトも、この公式データ(厚生労働省・文科省の集計)を一次の正本として分析しています。たとえば松本歯科大学の第118回ストレート合格率は24.7%。入学者85人に対して合格者21人という、当初入学者を分母にした正確な数字です。
大学が公表する表と、文科省のデータ、そして本サイトの分析。この3つを照らし合わせれば、数字の本当の姿が見えてきます。なお、岡山大学が当初入学者と編入学者を合わせて分母にする「全学共通フォーマット」を用いている件は、松本歯科大学の①の誤りとは性質が異なる「フォーマットの違い」であり、混同しないようご注意ください。
情報公開の誠実さと、大学選びの進め方
ここまで、29大学の情報公開の姿勢を見てきました。最後に、この記事でいちばんお伝えしたいことをまとめます。
情報公開の誠実さは、パンフレットでは見えてこない
情報公開に対する誠実さは、パンフレットやオープンキャンパスのきれいな写真からは見えてきません。受験生や社会に対する説明責任を大事にしている大学は、自分の大学の論理に凝り固まらず、客観的に自校を見つめ、改善しようとしています。都合の悪い数字も含めて自分の足元を直視できる大学は、教育の中身でも信頼できる可能性が高いと考えられます。逆に、10年以上前から国が求めてきた数字すら自校で出していない大学は、その姿勢自体がひとつの答えになっているのかもしれません。
大学選びの進め方——本サイトで全体像、各大学公式で最新の一次情報
そこで、大学選びの進め方を提案します。2段構えです。
- ステップ1:本サイトで全体像をつかむ。まず全29大学の修学状況まとめ記事で、ストレート合格率・留年率の全体像を確認してください。本サイトは全29大学を同じ基準で分析済みです。
- ステップ2:各大学公式で最新の一次情報を確認する。気になった志望校について、各大学の公式サイトで最新の修学状況を確認します。本サイトのデータと照らし合わせ、その大学が自校でどこまで・どれだけ新しく出しているかも見てみてください。
- ステップ3:データが古い・見つからない場合は、その事実も判断材料に。公式サイトのデータが古かったり見つからなかったりしたら、その事実自体をひとつの判断材料として受け止めてください。
全体像は本サイトで、最新の一次情報は各大学公式で。この2段構えが、いちばん確実です。
情報公開の足並みがそろうために——文部科学省のフォローアップに期待
情報公開の姿勢は、最終的には各大学の自主性に委ねられている部分が大きいのが現状です。けれども今回見たように、最新データを出していない大学、自校では公開していない大学が現にあります。この状況は、文部科学省による更新状況のフォローアップや指導が進めば、改善が期待できます。とりわけ、税金で運営される公的機関である国公立大学には、国がもう一歩踏み込んで公開を促してほしいところです。受験生のために、情報公開の足並みがそろうことを願います。
最後にひとつ、保護者の方へ。留年は1年で約1,500万円の損失(学費・生活費・機会損失の合計)にもなります。最低限すら更新しない大学と、求められた以上に出す大学——同じ学費を払うなら、どちらの姿勢を信用したいでしょうか。情報公開の姿勢は、入学後の6年間を映す鏡でもあるのです。
まとめ
留年率・ストレート合格率の公表は、2014年から国が歯学部に求めてきた方針です。全29大学を4軸で採点した結果、私立はS3校・A11校・B3校、国公立はA4校・B4校・C4校と、情報公開の姿勢には明確な差がありました。大切なのは、本サイトで全体像を、各大学公式で最新の一次情報を確認する2段構えです。確かな情報をもとに大学を選び、6年間を順調に歩んでいきましょう。低学年からしっかり学習習慣を身につけ、着実に進級していけば、ストレート合格は十分に到達可能です。
なお、なぜ新卒合格率をそのまま信じてはいけないのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
※本記事の特待生制度・学費・公開状況に関する情報は2026年5月時点の調査に基づきます。最新情報は各大学の公式サイトで必ずご確認ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. なぜ歯学部だけ留年率・ストレート合格率の公開が求められているのですか?
A. 2014年2月24日の文部科学省「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」による提言・要望で、各歯学部に対し留年率・国家試験合格率を大学ホームページで公表するよう明確に要請されました。背景には、歯科医師の供給過剰(入学定員が昭和60年の3,380人から平成26年の2,460人へ27.2%削減)、入試の選抜機能の低下、低い国家試験合格率・留め置き問題の3点があります。
Q2. 情報公開の姿勢が前向きな大学ほど、ストレート合格率も高いのですか?
A. いいえ、はっきりした相関は見られません。たとえばグレードSの3校でも、第118回のストレート合格率は東京歯科大学75.0%に対し、日本大学松戸歯学部は38.6%と差が大きく、グレードが高いほど合格率が高いとは言えません。情報公開の姿勢は、ストレート合格率の高低とは別の、独立した指標として見るべきものです。
Q3. 国公立と私立では、どちらが情報公開に前向きですか?
A. 意外にも私立のほうが前向きです。私立17校はグレードS3校・A11校・B3校で、「自校での公開が実質ない」グレードCはゼロでした。一方、国公立12校はグレードA4校・B4校・C4校で、修学状況を自校サイトで公開していない大学が現にあります。「国立だから安心、私立だから不安」という素朴な先入観が、情報公開の姿勢で見るとむしろ逆になります。
Q4. グレードBとグレードCの違いは何ですか?
A. Bは「自校サイトに修学状況データを載せているが、最新版に追いついていない、または項目が一部欠ける」状態です。Cは「自校サイトに自校のデータがそもそも載っていない」状態を指します。B=出してはいるが不十分、C=出していない、という切り分けです。なお、データがPDF形式かHTML形式かという違いは、グレードに一切影響させていません。
Q5. 松本歯科大学の進級者数の表に誤りがあるとはどういうことですか?
A. 松本歯科大学の修学状況PDF(令和7年5月1日現在)の「①各年度の入学者数と進級者数」の表で、令和元年度入学のコホートが5年次72人から6年次87人に増え、入学者数85人を上回っています。コホートを追跡する表で最後の学年が入学者数を上回ることは論理的にあり得ず、上位学年に編入学者が混ざった集計上の誤りと考えられます。これは「不正」ではなく、データの正確性の観点からの客観的な指摘です。ストレート合格率そのものは文科省の集計(当初入学者を分母)で正確に確認でき、松本歯科大学の第118回は24.7%です。
データ出典
本記事の数値はすべて以下の一次データから取得しています。
- ストレート合格率(修業年限内合格率・第118回): 厚生労働省・文部科学省の集計。東京歯科大学96/128=75.0%、日本大学松戸歯学部44/114=38.6%、日本歯科大学(東京)51.9%、大阪歯科大学46.9%、北海道医療大学43.4%、松本歯科大学21/85=24.7%
- 各大学の修学状況・進級状況・留年率・公開状況: 各大学公式サイト(2026年5月17日調査)/文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果」令和7年版
- 松本歯科大学の進級者数の表(①各年度の入学者数と進級者数・令和7年5月1日現在): 松本歯科大学公式サイト掲載の修学状況PDF
- 歯学部入学定員(昭和60年3,380人→平成26年2,460人)・歯学教育の提言・要望: 文部科学省「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」資料
最新の数値や個別の大学の公表資料は、必ず各大学の公式サイトで原典をご確認ください。本記事の内容は2026年5月時点の公開データに基づいています。

