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【第119回】合格者379人減、ストレート合格率はどうなったか|公表済み私立4校の先行分析

kameman
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第119回歯科医師国家試験で、全国の合格者は2,136人から1,757人へ、379人減りました。では、この環境の変化は、実際に大学に入学した学生たちの「6年後」にどう表れたのでしょうか。

本記事では、令和8年(2026年)5月1日基準の修学状況をすでに公表している私立4校について、令和2年度に入学した学生が6年間でどう進み、何人が国家試験に合格したのかを追跡します。使う数字は、厚生労働省の国家試験結果、文部科学省の修学状況データ、そして各大学が公式サイトで公表している令和8年5月1日現在の修学状況です。

先に結論をお伝えします。同じ「379人減」という環境を受けたはずの4校は、人が減った段階が3つの型にはっきり分かれました。

大学何が起きたか
① 国家試験の段階で減った日本大学 歯学部/松戸歯学部2校合計で6年間ストレートで卒業した人数は−3人なのに、国家試験合格者は−33人。卒業した人の合格率が86.4%→60.0%へ
② 低学年の関門で減った愛知学院大学2年次→3年次の減少が−13人→−32人へ拡大。一方で6年次に上がった66人は全員が6年で卒業
③ ほとんど変化なし奥羽大学6年でストレートに卒業20人・国家試験合格20人・卒業した人の合格率100.0%が2年連続

つまり、「合格者が379人減ったから、どの大学も国家試験で落ちた」という単純な話ではありませんでした。ただし、ここで扱えるのは私立17校のうち4校だけです。全17校の確定した数字は文部科学省が公表しており、前年度版は12月に公表されています。本記事は、それに先行して見えている範囲の先行分析としてお読みください。


目次

  1. 第119回で全国に何が起きたか
  2. なぜ4校だけなのか|私立17校中5校しか公表していない
  3. ストレート合格率とは(新卒合格率との違い)と、もう1つのものさし
  4. 4校のストレート合格率 3世代比較
  5. 型①|国家試験の段階で減った(日本大学 歯学部・松戸歯学部)
  6. 型②|低学年の関門で減った(愛知学院大学)
  7. 型③|ほとんど変化がなかった(奥羽大学)
  8. 合格者減だけでは説明がつかない差
  9. 既卒合格率27.8%|第109回以降の11回で最低
  10. 補足|神奈川歯科大学を本編から外した理由
  11. まとめ|3つのポイント

第119回で全国に何が起きたか

まず、大学別の話に入る前に、全国で何が起きたのかを確認します。

厚生労働省の公表によると、第119回歯科医師国家試験の受験者は2,837人、合格者は1,757人でした。前回の第118回は受験者3,039人、合格者2,136人でしたから、合格者は379人の減少(−17.7%)です。

項目第117回第118回第119回118→119
受験者3,117人3,039人2,837人−202人
合格者2,060人2,136人1,757人−379人(−17.7%)
合格率66.1%70.3%61.9%−8.4pt
新卒合格率81.5%84.0%80.2%−3.8pt
既卒合格率39.8%44.9%27.8%−17.1pt

合格者1,757人という人数は、第109回以降の11回の中で最も少ない数字です。合格率も66.1%→70.3%→61.9%と、前回から8.4ポイント下がりました。

ここで押さえておきたいのが、新卒と既卒で下げ幅がまったく違うことです。新卒合格率は84.0%から80.2%へ3.8ポイントの低下でしたが、既卒合格率は44.9%から27.8%へ17.1ポイントも下がりました。既卒受験者にとって、非常に厳しい回だったことが分かります(既卒合格率については後半のセクションで詳しく見ます)。

なお、新卒合格率の分母は「その年に受験した新卒者の人数」です。卒業見込者全員ではなく、実際に受験した新卒者が分母になります。この点は、本記事の主役である指標と分母が違うため、次のセクションで整理します。

※ 第118回の大学別の合格率を詳しく確認したい方は、第118回 歯科医師国家試験 大学別合格率の詳細をご覧ください。

出典:厚生労働省(歯科医師国家試験の結果および学校別合格者状況)


なぜ4校だけなのか|私立17校中5校しか公表していない

次に、本記事が4校しか扱わない理由を説明します。

第119回に対応するのは、令和2年度(2020年度)に入学した学生の世代です。この世代が6年間でどう進み、何人が卒業して国家試験に合格したのかを知るには、各大学が公表する「令和8年5月1日現在の修学状況」を見る必要があります。

2026年8月8日時点で私立17校すべての公式サイトを確認したところ、この令和8年5月1日基準のデータを公表していたのは5校でした。

区分大学
本記事で扱う 4校日本大学 歯学部/日本大学 松戸歯学部/愛知学院大学/奥羽大学
補足枠 1校神奈川歯科大学(公表値に整合しない箇所があるため別扱い・後述)
未公表 12校北海道医療大学/岩手医科大学/明海大学/東京歯科大学/日本歯科大学(東京)/昭和医科大学/鶴見大学/日本歯科大学(新潟)/松本歯科大学/朝日大学/大阪歯科大学/福岡歯科大学

未公表12校のうち、北海道医療大学と大阪歯科大学は、令和6年5月1日基準までしか公表されていません。

ここで一言添えておきたいことがあります。今回取り上げる4校は、他大学に先行して自校のデータを公表しているからこそ検証の対象になっています。数字を分析される側に回るわけですが、情報公開に踏み出している姿勢そのものは、率直に評価されるべきものです。むしろ、公表していない大学については何も検証できません。

※ 各大学の情報公開への姿勢については、歯学部 情報公開姿勢グレーディングで詳しく比較しています。

そして大切な前提がもう1つ。本記事は残り12校の数値を推計しません。「公表していない大学も同程度だろう」といった補完は一切行いません。全17校の確定した数字は文部科学省が公表しており、前年度版(令和7年度版)は2025年12月1日付で公表されました。令和8年度版の公表日は本記事執筆時点で告知されていませんが、例年12月に公表されているため、そのタイミングで答え合わせができる見込みです。

また、4校は私立17校の一部にすぎないため、当ブログが比較の主軸に使っている私立15大学平均との比較には使えません。この点もあわせてご注意ください。

出典:各大学公式サイトの修学状況(令和8年5月1日現在・2026年8月8日確認)/文部科学省


ストレート合格率とは(新卒合格率との違い)と、もう1つのものさし

本題に入る前に、本記事で使う2つの指標を整理します。すでにご存じの方は次のセクションへ進んでください。

ストレート合格率(修業年限内合格率)

大学の広告やパンフレットでよく使われるのは新卒合格率です。これは歯科医師国家試験の新卒受験者数を分母とした合格率で、進級判定や卒業試験を通過した学生だけが分母に入ります。つまり、これから入学する人が本当に知りたい「入学してから6年で歯科医師になれる割合」は、新卒合格率からは見えません。

そこで当ブログが主軸にしているのがストレート合格率(正式名称:修業年限内合格率)です。

  • 分母: 入学者数
  • 分子: 6年間(修業年限内)で卒業し、国家試験に合格した人数

入学者を分母にするため、留年・休学・退学もすべて反映されます。考え方の詳しい解説は、新卒合格率とストレート合格率の違い(問題提起ハブ記事)をご覧ください。

もう1つのものさし|6年間ストレートで卒業した人の合格率

本記事では、これに加えて「6年間ストレートで卒業できた人だけを分母にした合格率」も使います。ストレート合格率が「入学から国家試験合格まで」の通しの成績なら、こちらは「最後の国家試験の段階だけを切り出した成績」です。

図:2つの合格率は分母がちがいます(日本大学歯学部 令和2年度入学者=第119回を例に)。出典:各大学公表の修学状況をもとに当ブログ作成

日本大学歯学部の令和2年度入学者を例にすると、入学128人、6年で卒業62人、国家試験合格39人です。同じ39人でも、

  • 128人で割れば 30.5%(ストレート合格率)
  • 62人で割れば 62.9%(6年間ストレートで卒業した人の合格率)

となります。分母が変われば見え方も変わります。この2つを併せて見ることで、人が減ったのが「卒業までの6年間」なのか「最後の国家試験」なのかを切り分けられます。本記事の3つの型は、この切り分けから見えてきたものです。

※ 重要な注意点として、「1−ストレート合格率」は「既卒になる確率」ではありません。ここには留年した人・休学した人・退学した人・その年に受験していない人が含まれます。等号では結べない数字です。

※ 本記事のコホート追跡・ストレート合格率は、各大学が文部科学省の様式に沿って公表しているデータに基づき、編入学を除く入学者ベースです。


4校のストレート合格率 3世代比較

それでは大学ごとの数字に入ります。第117回・第118回・第119回の3世代(平成30年度・平成31年度/令和元年度・令和2年度の各入学世代)で並べます。

図:4校のストレート合格率(入学者数が分母)。出典:文部科学省(第117・118回)/各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況(第119回)をもとに当ブログ作成
大学第117回第118回第119回118→119
日本大学 歯学部43.0%45.3%30.5%−14.8pt
日本大学 松戸歯学部51.3%38.6%26.1%−12.5pt
愛知学院大学47.9%63.9%47.1%−16.8pt
奥羽大学51.0%45.5%44.4%−1.0pt

4校とも数字は下がっていますが、下がり方の意味はまったく違います。

  • 日本大学の2校は、下げ幅が14.8ポイントと12.5ポイント。3世代を通して下がり続けています。
  • 愛知学院大学は下げ幅16.8ポイントと4校で最大ですが、第117回の47.9%とほぼ同じ水準に戻っただけです。この大学については「第118回が突出して高かった」と読むのが正確で、「今年だけ大きく落ちた」という読み方は誤りです。
  • 奥羽大学は下げ幅1.0ポイントで、ほとんど動いていません。

参考|4校を合計した数字

参考として、4校を合計した数字も出しておきます。ただし、これは4校を足しただけの数値であり、私立17校の平均としては使えません

指標第117回第118回第119回118→119
ストレート卒業率57.1%54.9%49.1%−5.7pt
ストレート合格率47.7%49.4%35.7%−13.7pt

卒業の段階(−5.7pt)よりも、そのあと国家試験に合格する段階まで含めた数字(−13.7pt)のほうが大きく下がっています。

ここで1つ、よくある誤読を先に潰しておきます。「ストレート卒業率は例年どおりなのに、国家試験だけで落ちた」という説明は、4校全体では成立しません。4校合計の卒業率は前回から5.7ポイント、第117回比では8.0ポイント下がっています。この説明が成立するのは、次に見る日本大学歯学部だけです。

※ ストレート合格率の長期的な推移を確認したい方は、私立歯学部のストレート合格率10年推移をご覧ください(こちらは第118回までの確定データに基づくまとめです)。

出典:文部科学省/各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況


型①|国家試験の段階で減った(日本大学 歯学部・松戸歯学部)

1つ目の型は、国家試験の段階で人が減った大学です。日本大学 歯学部と日本大学 松戸歯学部の2校が該当します。

図:令和2年度入学者はどこで減ったか(日本大学2校)。出典:各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況/厚生労働省をもとに当ブログ作成
大学入学2年次3年次4年次5年次6年次卒業国家試験合格
日本大学 歯学部128人112人74人72人63人63人62人39人
日本大学 松戸歯学部115人96人82人71人62人62人53人30人

2校合計|卒業は−3人、合格は−33人

2校を合わせると、この世代の姿がはっきりします。

項目第117回第118回第119回118→119
入学者243人242人243人+1人
ストレート卒業135人118人115人−3人
ストレート合格114人102人69人−33人
6年間ストレートで卒業した人の合格率84.4%86.4%60.0%−26.4pt

6年間ストレートで卒業した人数は3人しか減っていないのに、国家試験の合格者は33人減りました。卒業までたどり着いた115人のうち合格は69人、ちょうど10人に6人です。前の世代は10人に8.6人でした。

図:6年間ストレートで卒業した人のうち、何人が合格したか。出典:各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況/文部科学省をもとに当ブログ作成
大学第117回第118回第119回118→119
日本大学 歯学部87.3%96.7%62.9%−33.8pt
日本大学 松戸歯学部81.9%75.9%56.6%−19.3pt

卒業から国家試験の段階で減った人数も、前の世代と比べて増えています。日本大学歯学部が2人から23人へ、松戸歯学部が14人から23人へ、という動きです。

ただし「国家試験だけで落ちた」と単純化はできません

ここで大事な但し書きがあります。この2校が国家試験の段階だけで人を減らしたわけではありません。日本大学歯学部は2年次から3年次にかけて38人を失っており、前の世代の9人から大きく増えています。低学年でも人は減っているのです。

それでも変化が国家試験の段階に集中して見えるのは、6年次まで残った人数が65人から63人へとほぼ同じだったからです。前の世代も入学から2年次で24人が減っており、脱落の起きる場所が違っても、最終的に6年次にたどり着いた人数はほとんど変わりませんでした。その結果、卒業率は動かず、変化が最後の国家試験の段階に集中して現れた、という構造です。

出典:各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況/厚生労働省


型②|低学年の関門で減った(愛知学院大学)

2つ目の型は、低学年の関門で人が減った大学です。愛知学院大学が該当します。

図:愛知学院大学 令和2年度入学者121人の6年間と、段階別の減少人数(前世代との比較)。出典:各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況をもとに当ブログ作成
段階入学2年次3年次4年次5年次6年次卒業国家試験合格
人数121人111人79人79人69人66人66人57人

大きく動いているのは、2年次から3年次に上がる段階です。ここで32人が減っています。前の世代は13人でした。入学から2年次までの減少は10人で前の世代と同じですから、変化はこの1か所に集中しています。

段階第118回コホート第119回コホート
入学→2年次−10人−10人
2年次→3年次−13人−32人
3年次→4年次−4人0人
4年次→5年次−12人−10人
5年次→6年次−1人−3人
6年次→卒業−1人0人
卒業→国家試験−7人−9人

その先を見ると、3年次から4年次は79人から79人で減少ゼロ。6年次から卒業も66人から66人で、こちらもゼロです。6年次に上がった66人は、全員が6年間で卒業しています。したがって、「愛知学院大学は卒業の段階で落ちた」という読み方は誤りです。

国家試験の段階では下がっていない

国家試験の段階も見ておきましょう。

図:愛知学院大学 2つの合格率(第117回・第118回・第119回)。出典:各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況/文部科学省をもとに当ブログ作成
指標第117回第118回第119回
6年間ストレートで卒業した人の合格率81.7%92.4%86.4%
ストレート合格率47.9%63.9%47.1%

6年間ストレートで卒業した人の合格率は、前回から6.0ポイント下がったものの、第117回の81.7%よりは高い水準です。ストレート合格率47.1%も、第117回の47.9%とほぼ同じ水準に戻ったと読むのが正確です。「昨年とほぼ同等」でも「今年だけ落ちた」でもなく、第118回が突出して高かったというのが、この大学の正しい読み方になります。

なお、2年次から3年次にかけて減少が増えた理由は、公表資料からは分かりません。いわゆる絞り込みの運用によるものかどうかも判断できないため、本記事では意図の推測は行いません。公表データから言えるのは、この段階で人数が減ったという事実だけです。

出典:各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況/文部科学省


型③|ほとんど変化がなかった(奥羽大学)

3つ目の型は、ほとんど変化がなかった大学です。奥羽大学が該当します。

段階入学2年次3年次4年次5年次6年次卒業国家試験合格
人数45人40人32人25人20人20人20人20人
指標第117回第118回第119回
ストレート卒業31人20人20人
ストレート合格26人20人20人
6年間ストレートで卒業した人の合格率83.9%100.0%100.0%
ストレート合格率51.0%45.5%44.4%

6年間ストレートで卒業した人数は20人、そのうち国家試験に合格したのも20人。2年連続で、6年間ストレートで卒業した人が全員合格しています。ストレート合格率も45.5%→44.4%と、下げ幅は1.0ポイントにとどまりました。全国で合格者が379人減った回に、この大学の数字はほとんど動いていません。

ただし1点、注意が必要です。奥羽大学の令和2年度入学者は45人と小規模で、1人の増減でストレート合格率が2.2ポイント動きます。歩留まり100.0%も母数は20人です。他校と単純に横並べするのではなく、「変化なし」という型の代表例として受け止めてください。

出典:各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況/文部科学省


合格者減だけでは説明がつかない差

ここまでを整理します。

図:同じ環境なのに、変化の大きさが違う。出典:厚生労働省/各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況をもとに当ブログ作成

全国の環境が厳しくなったのは事実です。合格者は379人減り、新卒合格率も84.0%から80.2%へ3.8ポイント下がりました。しかし、その影響の受け方は大学によってまったく違いました。

  • 日本大学歯学部:6年間ストレートで卒業した人の合格率が−33.8ポイント
  • 愛知学院大学:同じ指標が第117回81.7%→第119回86.4%と上昇
  • 奥羽大学:同じ指標が2年連続100.0%

同じ年の同じ試験を受けているのに、この差です。したがって「第119回は国家試験の壁が高くなった」という説明を、すべての大学に当てはめることはできません。共通要因である合格者減だけでは、4校の差は説明がつかないのです。

では何が違ったのか。公表されている数字からは、そこまでは分かりません。分かるのは、同じ環境に対して大学ごとにこれだけ違う結果が出た、という事実だけです。原因の推測は本記事では行いません。

受験生・保護者の方へ

ここで、大切なことを1つ。本記事で見てきたのは、あくまで大学ごとの統計的な傾向にすぎません。同じ大学に入っても、結果は一人ひとり違います。数字が良かった大学に入れば安心というものでも、数字が動いた大学に入れば不利というものでもありません。名前を挙げた4校の在学生や志願者の方を貶める意図はまったくありません。

最後にものを言うのは、自分自身の日々の学習習慣です。特に低学年の基礎科目でつまずかないこと。今回見た4校のうち2校では、2年次から3年次に上がる段階で大きく人数が減っていました。入学直後からの積み重ねが、6年後の結果を左右します。

お子さんの進路を検討されている保護者の方にとっても、合格発表がゴールではなく、入学後の6年間こそが本番だという点は押さえておきたいところです。

出典:厚生労働省/各大学公表の令和8年5月1日現在 修学状況


既卒合格率27.8%|第109回以降の11回で最低

もう1つ、全国のデータで見ておきたいものがあります。既卒の合格率です。

図:既卒合格率の推移(第109回〜第119回)。出典:厚生労働省の集計をもとに当ブログ作成
受験回既卒合格率
第109回47.4%
第110回46.6%
第111回43.5%
第112回38.3%
第113回43.1%
第114回36.9%
第115回35.6%
第116回42.2%
第117回39.8%
第118回44.9%
第119回27.8%

第109回の47.4%から上下しながら推移し、第118回は44.9%まで持ち直していました。そして第119回が27.8%です。この11回の中で最も低い数字で、これまでの最低だった第115回の35.6%をさらに下回りました。

ただし、これは第119回を受けた既卒受験者の結果であって、来年以降がどうなるかを示すものではありません。分かるのは、今回の既卒受験者にとって非常に厳しい結果だった、ということです。

だからこそ、大学選びの段階で6年間で国家試験の合格まで到達できるかどうかを見ておくことに意味があります。ストレート合格率は、まさにその到達率を示す指標です。

※ 前述のとおり、「1−ストレート合格率」を「既卒になる確率」と等号で結ぶことはできません。

出典:厚生労働省


補足|神奈川歯科大学を本編から外した理由

最後に、令和8年5月1日基準を公表していながら本編から外した神奈川歯科大学について、理由を説明しておきます。

受験回入学者ストレート卒業ストレート卒業率国家試験合格ストレート合格率
第117回116人50人43.1%41人35.3%
第118回118人55人46.6%48人40.7%
第119回108人72人66.7%58人53.7%

公表値をそのまま計算すると、ストレート合格率は35.3%→40.7%→53.7%と大きく上昇した形になります。

ところが、同じ資料の中で、6年次にストレート進級した人数は53人と示されています。進級が53人で、卒業が72人。進級した人数より卒業した人数のほうが多く、そのままでは成り立ちません。2026年8月8日に原典資料を再取得して確認しましたが、修正は入っていませんでした。

53人と72人のどちらが誤りなのかは、公表資料からは判定できません。そのため本記事では、同じ物差しで並べられないと判断し、本編の4校からは外しています。これは大学の運営に対する批判ではなく、データの扱い方についての注記です。

なお、この72人という数字は、5校合計の卒業率を押し上げる方向に働きます。仮に卒業者を53人と置いて5校合計を再計算すると、第119回の卒業率は52.80%から49.13%へと下がります(ただしこれは仮定計算であり、正しい値ではありません)。「ストレート卒業率は変わっていない」という主張は、この矛盾を含む1つの数字に依存しているという点だけ、押さえておいてください。

出典:神奈川歯科大学 公式サイトの修学状況(令和8年5月1日現在・2026年8月8日確認)


まとめ|3つのポイント

本記事のポイントを3つにまとめます。

  1. 同じ379人減が、3つの形に分かれた: 国家試験の段階で減った日本大学2校(卒業−3人に対し合格−33人、卒業した人の合格率86.4%→60.0%)、低学年の関門で減った愛知学院大学(2年次→3年次で−32人、ただし6年次に上がった66人は全員卒業)、ほとんど変化のなかった奥羽大学(卒業した人の合格率が2年連続100.0%・母数20人)
  2. 合格者減だけでは大学差は説明できない: 日本大学歯学部が−33.8ポイントだった一方、愛知学院大学は第117回より上昇、奥羽大学は2年連続100.0%。「国家試験の壁が高くなった」を全校に当てはめることはできず、その理由も公表データからは分からない
  3. これは私立17校のうち4校の話: 令和8年5月1日基準を公表しているのは5校のみ(うち1校は公表値に矛盾)。残り12校の推計は行わない。全17校の確定値は文部科学省が公表しており、前年度版は12月に公表されたため、そのタイミングで答え合わせができる見込み

第119回は、既卒合格率が第109回以降の11回で最低(27.8%)になるなど、確かに厳しい回でした。それでも、4校の数字が示しているのは「環境がすべてを決めるわけではない」ということです。同じ年に、卒業した人が全員合格した大学もありました。

そして、どの大学を選ぶにしても、6年間を左右するのは入学直後からの学習習慣です。今回のデータでも、人数が大きく減っていたのは2年次から3年次に上がる低学年の関門でした。低学年のうちからしっかり学習習慣を身につけ、着実に進級していけば、6年間でストレートに国家試験合格まで到達することは十分に可能です。数字は不安を煽るためではなく、どこに力を入れるべきかを知るために使ってください。

例年12月頃に公表される文部科学省の確定版が出たら、当ブログで改めて全17校の答え合わせを行う予定です。

データ出典: 厚生労働省 歯科医師国家試験の結果および学校別合格者状況/文部科学省「歯学部の修学状況等の調査」/各大学公式サイトの修学状況(令和8年5月1日現在・2026年8月8日取得)

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歯学部受験情報館を運営しているシカラボです。 教育機関で10年以上、歯学部に関するデータを扱ってきました。 入学者ベースのストレート合格率・留年率・退学率など、見落とされやすい指標を、 厚生労働省・文部科学省・各大学公式サイトの一次資料から継続的に分析しています。
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