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歯科医師の年収で学費は何年で回収できるか|厚労省データを税引後まで徹底計算【2026年最新】

kameman

「歯学部の学費2,700万円は本当に元が取れるのか」「歯科医師の年収は、税金を引いた手取りベースでもちゃんと割に合うのか」――歯学部受験を検討している受験生のかた、そして保護者のかたなら、一度はこのような疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。

本記事では、厚生労働省・国税庁の公式統計データを使い、しかも税金を引いた手取りまで踏み込んで、淡々と数字で答えていきます。歯学部で学ぶことに投資した資金を回収できるのか、一緒にみていきましょう。

結論を先に提示します。

  • 勤務歯科医師の5年平均年収は944万円(一般正社員545万円との額面差は399万円・手取り差は267万円)
  • 学費2,700万円に機会損失800万円を加えた総コスト3,500万円は、税引後・手取り差267万円で計算すると約13年で回収できる(ストレート卒業の場合)
  • 1年留年すると1,500万円が上乗せになり、回収完了は約19年まで延びる
  • 2年遅れの場合でも約24年で回収・50歳までに回収完了の見通し

歯学部進学は「条件付きの合理性」を持つ選択肢です。ストレート合格できれば、十分回収できる経済合理性のある投資。逆に、留年が続けば回収年数は段階的に延びます。だからこそ、大学選びの段階でストレート合格率を確認することが、経済性の核心になります。以下、データで丁寧に証明していきます。


目次

  1. 歯科医師の年収は本当に高いのか — 厚労省5年データで確認する
  2. 5年平均944万円 vs 一般正社員545万円 — 額面で比べると約1.7倍
  3. 企業規模で変わる年収の構造 — 「大学病院805万円」と「小診療所1,171万円」の意味
  4. 開業医の「平均1,409万円」は正確か — 分布と経営の両面を見る
  5. 税引後で計算するとこうなる — 手取り差267万円という現実
  6. 学費2,700万円 + 機会損失800万円 = 3,500万円を何年で回収するか
  7. 突っ込みどころへの誠実な答え — 男女差・留年リスク・開業コスト
  8. まとめ — 条件付きの合理性「ストレートなら約13年・1年遅れで約19年・2年遅れでも50歳までに完了」
  9. よくある質問(FAQ)

歯科医師の年収は本当に高いのか — 厚労省5年データで確認する

歯科医師の年収を語る上で、最も信頼できる公式データは厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」です。これは10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所を対象とした全国調査で、毎年実施されています。開業医(個人事業主)は含まれない点に注意してください。

勤務歯科医師の年収推移(令和3年〜令和7年)

年度推定年収(男女計)標本数
令和3年(2021)787万円20,150人
令和4年(2022)810万円11,550人
令和5年(2023)924万円18,610人
令和6年(2024)1,136万円(過去最高)13,870人
令和7年(2025)1,063万円(最新値)11,240人
5年平均944万円

出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別」より歯科医師(男女計・企業規模計10人以上)。

注目すべきは、令和6年で過去最高の1,136万円を記録し、最新の令和7年でやや反落して1,063万円となっている点です。一見「下がった」ように見えますが、ここには重要な前提があります。

令和7年データの位置付け — 5年トレンドで安定的に見る

令和7年調査の歯科医師の標本数は11,240人で、前年(令和6年:13,870人)と比べて約19%減少しました。調査方法変更が一因と推定されますが、標本規模としては依然として十分です。本記事では経年トレンドを安定的に示す観点から、5年平均(944万円)を代表値として使用しています。

つまり、令和7年の1,063万円という単年値も最新の最新値として信頼できる数値ですが、年ごとの変動を均した5年平均944万円のほうが、歯科医師の年収水準を語る上ではより安定的です。本記事ではこの5年平均を主軸の代表値として扱います。

なお、令和6年の1,136万円は過去7年で最高値、令和7年の1,063万円も1,000万円を超えていることから、「歯科医師の年収は低い」という主張は、少なくとも公式データでは支持されないことが分かります。


5年平均944万円 vs 一般正社員545万円 — 額面で比べると約1.7倍

歯科医師の年収を「低い」「高い」と評価するためには、比較対象が必要です。本記事では、国税庁「民間給与実態統計調査」令和6年版の正社員平均(男女計545万円・パート除く)を比較対象として使います。これは1年を通じて勤務した正規雇用の給与所得者の平均で、最も網羅的な民間給与統計です。

歯科医師 vs 一般正社員 比較表(額面)

比較対象歯科医師一般正社員(男女計)差額倍率
5年平均(R3〜R7)944万円545万円+399万円約1.7倍
R6単年(過去最高)1,136万円545万円+591万円約2.1倍
R7単年(最新値)1,063万円545万円+518万円約1.95倍

出典:歯科医師は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、一般正社員は国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」。

歯科医師の年収には確かに二極化や男女差が存在します。しかしそれを差し引いても、一般正社員のおよそ1.7〜2倍という構造は、5年平均で見ても、最新値で見ても、大きく揺らぐことはありません。

ただし、ここまでの数字はすべて税引前の額面です。所得が高くなるほど累進課税で税負担率が上がるため、額面差は手取り差より大きく出ます。実際に手元に残る手取りで計算したらどうなるか――これは本記事の核心テーマであり、第5章で詳しく扱います。

歯科医師の年収を医師・薬剤師・SE・大手企業会社員等の他業種と比較したい方は、別記事「歯科医師の年収データ — 他業種比較ランキング」をご覧ください。本記事は学費投資のROI(何年で回収できるか)に集中しています。


企業規模で変わる年収の構造 — 「大学病院805万円」と「小診療所1,171万円」の意味

勤務歯科医師の年収を語る際、しばしば「大学病院の歯科医師は年収が低い」という話が引用されます。これは事実ですが、正確な意味を理解する必要があります

令和7年 企業規模別 勤務歯科医師年収

企業規模推定年収平均年齢勤続年数人数全体比
1,000人以上(大学病院・大規模法人)805万円40.3歳5.4年2,850人25%
100〜999人(中規模医療法人)※1,033万円49.6歳13.9年1,270人11%
10〜99人(小診療所・最多帯)1,171万円37.6歳4.9年7,120人63%

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別第1表より歯科医師(男女計)。

大学病院805万円が低い理由

1,000人以上規模(大学病院など)の年収が805万円と低めに見えるのは、ここに大学病院の医員や助教クラスなど、研究や教育を主軸にした給与体系の層が多く含まれるためです。加えて研修医も含まれるため、平均はさらに抑えめに出ます。

一方、勤務歯科医師の63%が在籍する10〜99人規模(小診療所)では、年収1,171万円です。つまり、最も多い勤務先で1,000万円を超えている――これが、勤務歯科医師の代表的な姿です。

「100〜999人 1,928万円(R6)」の解釈に注意 ※

過去には、100〜999人規模で令和6年単年に1,928万円という突出値が出たことがあります。ただし、同じ区分の最新令和7年データでは1,033万円(標本n=127)に戻っており、構造的な代表値ではありません。令和6年の高数値は、医療法人の常勤管理職や、グループ歯科法人の上位職クラスが集中していた可能性があります。本記事では、この1,928万円を「勤務歯科医師の代表値」として扱わず、解釈には注意が必要な単年値として位置づけます。

代表値として使うべきは、最大層である10〜99人規模の1,171万円(R7)、あるいは経年ブレを均した5年平均944万円です。


開業医の「平均1,409万円」は正確か — 分布と経営の両面を見る

ここからは開業医の話に入ります。まず重要な前提として、開業医の「年収」は給与のことではありません

第25回医療経済実態調査(厚生労働省・令和7年実施)では、個人立歯科診療所の収益から費用を引いた損益差額を年収相当として表します。これは事業所単位の事業所得(税引前)であり、給与の手取りとは性質が異なる金額です。

個人立歯科診療所のサンプル構成

第25回調査では、個人立歯科診療所のサンプルは以下のように構成されています:

区分施設数
青色申告者n=183
白色申告者n=213
個人立全回答合計n=396
法人立歯科診療所n=134(別集計)

個人立歯科診療所 損益差額(令和6年度)

区分損益差額
個人立全回答(n=396)平均1,409万円
青色申告者(n=183)平均1,231万円(より実態に近い値)

出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 令和7年実施」。

※ 公式見解書の「331万円差」の解釈について: 第25回医療経済実態調査の見解書には「青色申告者は損益差額の平均値がすべての調査票に記載のある回答者と比較して331万円低い」との記述があります。この「すべての調査票に記載のある回答者」とは白色申告者(n=213)平均1,562万円を指し、331万円の差は 白色申告者1,562万円 − 青色申告者1,231万円 = 331万円 として整合します(全回答平均1,409万円との差ではない点にご注意ください)。

「平均1,409万円」は分布の歪んだ統計

ここで注目すべき事実があります。個人立歯科診療所の損益差額の平均は確かに1,409万円ですが、その分布を見ると、約半数の48.7%が1,000万円未満なんです。最頻値は500〜750万円帯にあります。

区分割合
1,000万円未満(約半数)48.7%(公式値)
うち最頻値帯500〜750万円(公式値)
5,000万円以上(高収益層)3%超(公式概算値)

出典:第25回医療経済実態調査 R6 個人立全396施設の損益差額分布(厚労省公式公表は上記3区分のみ。1,000〜5,000万円未満の中間帯は残り約48%として位置づけ)。

なぜ平均が1,409万円になるかというと、5,000万円以上を稼ぐ高収益診療所が3%超存在し、平均値を大きく引き上げているからです。

つまり、開業すれば誰でも1,409万円稼げるわけではなく、開業医の半数は1,000万円に届いていないという現実があります。本記事で青色申告平均1,231万円を「より実態に近い値」として採用するのも、この歪みを少しでも減らすためです。

経営の両面 — 底堅さと苦境

平均値の歪みはあるものの、歯科診療所の経営自体は底堅いことも事実です。一方で、苦しい現実もあります。両面を正直に見ます。

底堅い面:個人立 損益率の経年推移

年度個人立 損益率
令和元年(2019)29.7%
令和2年(2020)28.1%
令和3年(2021)24.9%
令和4年(2022)24.6%(COVID底)
令和5年(2023)27.6%
令和6年(2024)27.6%

出典:第25回医療経済実態調査。

個人立歯科診療所の損益率は、令和元年から令和6年まで24%台から30%帯を維持しています。コロナ影響を受けた令和3〜4年でも24%台を維持し(最低は令和4年の24.6%)、令和5年以降は27.6%まで回復しています。

苦しい面:医療法人歯科診療所の赤字率と分布の現実

一方で、第25回調査では医療法人歯科診療所の33.6%が赤字となっています(n=134の集計)。個人立にしても、先ほどの分布で見たとおり、約半数が損益差額1,000万円未満です。歯科診療所の経営は、底堅さと苦境の両面があるというのが実態です。

数値の使い分けについて: 第25回医療経済実態調査では、個人立の損益率について複数の集計が公表されています。本記事の冒頭の表(n=396全回答ベース:平均1,409万円)と本経年推移表(同じく全回答ベースのn=396集計)はいずれも厚労省の正式公表値です。本記事ではより実態に近い「青色申告平均」の損益差額1,231万円を、開業医のより堅実な代表値として採用しています。

市場規模 — 7年間で+13.6%成長する3.3兆円市場

国民医療費に占める歯科診療医療費は、平成29年の約2兆9,000億円から令和5年の3兆2,945億円まで、7年間で13.6%増加しています。

年度歯科診療医療費
H29(2017)29,003億円
H30(2018)29,579億円
R元(2019)30,150億円
R2(2020)30,022億円(COVID微減)
R3(2021)31,479億円
R4(2022)32,275億円
R5(2023)32,945億円

出典:厚生労働省「国民医療費」各年度版。

歯科は、3.3兆円規模の安定市場であり、長期的な底堅さは確認できます。ただし、これは「市場の話」であり、「個別の歯科医院の経営」とは別の話です。両方の視点で見る必要があります。


税引後で計算するとこうなる — 手取り差267万円という現実

ここからが本記事の核心です。

第2章でお見せした勤務歯科医師944万円も、一般正社員545万円も、いずれも税金や社会保険料を引く前の額面でした。より実態通りの数字とするため、本記事は税引後の手取りまで踏み込んで計算します

手取り計算の前提

  • 給与所得者・独身・扶養なし・40歳未満
  • 協会けんぽ東京の令和6年料率
  • 社会保険料(健保4.99%・厚生年金9.15%・雇用0.6%・健保標準報酬月額上限139万/月・厚年同上限65万/月)
  • 所得税(累進課税・復興税2.1%含む)
  • 住民税10%+均等割5,000円

※ 税引後計算は「独身・扶養なし・40歳未満・協会けんぽ加入」を前提とした令和6年度の試算です。扶養家族がいる場合や40歳以上の場合は社会保険料の内訳が異なりますが、手取り差額(=歯科医師と一般正社員の差)への影響は軽微です。

手取り計算の結果

区分額面社保所得税住民税合計負担手取り負担率
歯科医師(5年平均)944万円124万74万59万257万687万円27.2%
一般正社員(NTA R6男女計)545万円80万17万27万125万420万円22.9%

出典:国税庁・全国健康保険協会令和6年度料率に基づく試算。

手取り差は267万円/年

額面差は399万円ですが、歯科医師のほうが所得が高い分、累進課税で税率が上がるため、負担率も大きくなります。結果として、手取りで見た差は267万円。額面差より132万円少ない数字です。

手取り差 = 687万円 − 420万円 = 267万円/年
(額面差399万円より132万円少ない)

ここから先の回収計算は、この手取り差267万円を主軸として進めます。

回収年数:約13年

手取り差267万円を使って、回収年数を計算します。

学費(中央値) 2,700万円
+ 機会損失(大卒2年×400万円) 800万円
= 総コスト 3,500万円

3,500万円 ÷ 267万円/年 ≒ 約13年

学費2,700万円と機会損失800万円を合わせた総コスト3,500万円を、税引後の手取り差267万円で割ると、約13年で回収できる――これが本記事の答えです。

余裕を見て15年あれば十分回収できる水準です。これは「税引後」「中央値学費」「機会損失込み」という、平均的かつ控えめな前提で出した、最も等身大の数字です。


学費2,700万円 + 機会損失800万円 = 3,500万円を何年で回収するか

第5章の現実シナリオを、もう少し詳しく分解します。

Step 1:私立17大学の学費 3シナリオ

シナリオ6年総額該当大学
最安1,793万円明海大学・朝日大学
中央値2,700万円昭和医科大学・北海道医療大学・神奈川歯科大学
最高3,190万円東京歯科大学

出典:各大学公式サイトの2026年度入試要項より。本記事では中央値2,700万円を基準として計算します。

Step 2:機会損失800万円の控えめ計上

学費だけで損得を語ることは公平ではありません。なぜなら、大学4年制の同級生は22歳で就職して、すでに2年分の給与を稼いでいるからです。一方、歯学部生は24歳で歯科医師になって、ようやく稼ぎ始めるため、この2年間の差は機会損失として計上する必要があります。

国税庁の民間給与実態統計から、20代前半正社員の年収を控えめに400万円と置くと、

400万円 × 2年 = 800万円(機会損失)

Step 3:総コスト3,500万円の確定

学費 2,700万円
+ 機会損失 800万円
= 総コスト 3,500万円

Step 4:現実シナリオの回収計算(核心)

第5章で計算した手取り差267万円を使って、総コスト3,500万円を割ります。

3,500万円 ÷ 267万円/年 ≒ 13.1年(約13年)

約13年で回収完了――これが本記事の現実的な結論です。

Step 5:留年シナリオを含めた段階提示

ここまでの約13年は、ストレート合格・ストレート卒業を前提とした計算です。歯学部はストレート卒業率が大学によって大きく異なるため、留年や浪人で1〜2年遅れた場合の回収年数も合わせて整理しておきます。就業開始の年齢も遅れる前提で計算します。

シナリオ就業開始回収年数完了年齢65歳までの残期間
ストレート卒業24歳約13年(13.1年)約37歳約28年
1年遅れ(1留年または1浪)25歳約19年(13.1+5.6)約44歳約21年
2年遅れ(複数留年・多浪等)26歳約24年(13.1+11.2)約50歳約15年

留年1年あたり1,500万円(学費500+生活費200+機会損失800)が上乗せになり、回収年数は約5.6年延びます(1,500÷267≒5.6)。1年遅れまでならおおむね20年以内・2年遅れでも50歳までに回収完了の見通しです。

歯科医師の現役期間を65歳までと考えると、ストレート卒業なら24歳就業開始で残り約28年が純益期間として残ります。1年留年でも21年、2年遅れでも15年の純益期間が残ります。

学費シナリオ別 回収年数(参考)

学費が中央値より高い・低い場合の回収年数も参考までに示します。すべて税引後の手取り差267万円ベース・機会損失800万円込みの数字です。

学費シナリオ学費総コスト回収年数
最安1,793万円2,593万円約9.7年
中央値2,700万円3,500万円約13年
最高3,190万円3,990万円約15年

つまり、ストレート卒業を前提にすれば、最高学費の大学(3,190万円)でも、税引後で計算して約15年で回収できる――というのが現実の数字です。

重要: この回収年数はすべてストレート合格・ストレート卒業を前提にしています。留年すると1年あたり1,500万円が上乗せになります(次章参照)。だからこそ、大学選びの段階でストレート合格率を必ず確認してください。詳しくは 修学状況まとめ記事 をご覧ください。


突っ込みどころへの誠実な答え — 男女差・留年リスク・開業コスト

ここからは、想定される突っ込みポイントに先回りでお答えします。

突っ込み① 「男女差が大きすぎるのでは?」

A:令和6年は確かに大きく、令和7年で急縮小していますが、1年での急変は継続注視が必要です。

年度男性女性男女差
R6(2024)1,301万円716万円585万円
R7(2025)1,119万円999万円120万円

R7では男女差が120万円まで急減しています。R7の標本数は11,240人と十分な規模(男性5,970人・女性5,270人)ですが、1年で差が79%縮小するという急変は、構造的な変化なのか単年の動きなのか、引き続き継続注視が必要です。

なお、R6の女性歯科医師の年収716万円でも、一般正社員の正社員女性430万円と比べれば約1.7倍です。女性歯科医師の年収も、十分に経済合理性を持つ水準にあります。

突っ込み② 「留年したら台無しでは?」

A:その通りです。だから大学選びでストレート合格率の確認が経済性の核心になります。

本記事の約13年回収は、ストレート合格・ストレート卒業を前提にしています。もし1年留年すると、

学費 +500万円(1年分)
生活費 +200万円
機会損失 +800万円(社会人化が1年遅れる損失)
─────────────
合計 +1,500万円/年

の追加損失が発生します。これを手取り差267万円で割ると、回収年数は約5.6年延びることになります(1,500÷267≒5.6)。

だからこそ、本チャンネルが繰り返しお伝えしているように、大学選びで何より重要なのが、ストレート合格率の確認です。学費の安さよりも、ストレートで卒業できる確率の高さを優先してください。

参考記事:4年次脱落率記事 — CBT脱落リスクと経済損失

突っ込み③ 「開業時の設備投資は?」

A:本試算は勤務医ベースなので、開業コストは含めていません。

本記事の約13年回収は、歯科医師として勤務医を続けることを前提にした試算です。もし将来、独立して開業する場合は、別途5,000万〜1億円の設備投資が必要になります。

ただし、勤務医のままでも、現実シナリオで約13年で総コスト3,500万円を回収できる計算になっているため、開業コストは追加投資の話として、別途検討する性格のものです。在学中の生活費については、留年シナリオ(突っ込み②)で1年あたり生活費200万円としてすでに計上しているため、ストレート卒業を前提とした本記事の主軸計算では、独立した項目としては扱っていません。

突っ込み④ 「R7の1,063万円は下がっているのでは」

A:標本数は11,240人と十分大きく、R7単年値も信頼できます。本記事では経年トレンドの観察を目的に5年平均を代表値として使っています。

令和7年の歯科医師の標本数は11,240人で、令和6年の13,870人から約19%減少しました(調査方法変更が一因と推定)が、規模的には依然として十分です。本記事では5年間の動向を安定的に示すため、5年平均944万円を主軸の代表値として使っています。R7単年1,063万円も「1,000万円を超える最新値」として信頼できる数字です。

突っ込み⑤ 「経営の話は楽観的すぎないか」

A:本記事では底堅さと苦境の両面を提示しました。

第4章で、個人立の損益率24〜30%帯維持という「底堅さ」と、医療法人の33.6%が赤字・個人立の約半数が1,000万円未満という「分布の現実」の両面を提示しました。「経営は底堅い」一辺倒の見方も、「歯科医師は苦境」一辺倒の見方も、どちらも片面的です。両面を踏まえた上で、自分のキャリアプランを判断する必要があります。

突っ込み⑥ 「青色申告平均1,231万円も歪みがあるのでは」

A:青色申告者は記帳が義務化されており、より正確な収支を反映する傾向があります。

第25回調査では青色申告者183件の平均が1,231万円、白色申告者を含めた全396件の平均が1,409万円です。青色申告者は記帳と申告の正確性が高いため、より実態に近い数字として採用しました。ただし、これも「平均」であり、約半数が1,000万円未満という分布の現実は、青色申告者でも同様です。


まとめ — 条件付きの合理性「ストレートなら約13年・1年遅れで約19年・2年遅れでも50歳までに完了」

本記事の要点を3つにまとめます。

① 勤務歯科医師の年収は5年平均944万円・手取り差267万円/年

R3〜R7の5年平均で944万円。一般正社員(NTA R6男女計545万円)との額面差は399万円ですが、所得税・住民税・社会保険料を引いた手取り差は267万円。「歯科医師は稼げない」という主張は、公式統計データでは支持されません。一方で「額面で約2倍」という楽観論も、税引後では「約1.6倍の手取り差」というのがより誠実な数字です。

② 税引後・機会損失込みの現実シナリオで約13年で回収(ストレート卒業の場合)

学費2,700万円(私立17大学中央値)に機会損失800万円(大卒2年早スタート分)を加えた総コスト3,500万円を、手取り差267万円で計算すると、3,500万÷267万≒13.1年(約13年)で回収できます。歯科医師の現役期間41年のうち、最初の13年で回収できれば、残りの約28年は純益期間です。

③ 1年遅れで約19年・2年遅れでも50歳までに完了・条件はストレート合格率の高い大学を選ぶこと

ストレート卒業なら24歳就業開始で約13年、1年遅れ(1留年または1浪)なら25歳就業開始で約19年、2年遅れでも26歳就業開始で約24年・いずれも50歳までに回収完了の見通しです。ただし、回収年数の前提を握るのは大学選びです。留年が1年増えるごとに1,500万円が上乗せになり、回収年数は約5.6年ずつ延びます(1,500÷267)。だからこそ、大学選びの段階でストレート合格率を必ず確認してください。学費の安さよりも、ストレートで卒業できる確率の高さを優先することが、経済合理性を最大化する条件です。


受験生のみなさんへ: 低学年からしっかり学習習慣を身につけ、着実に進級して、ストレートで卒業すれば、歯科医師という選択は税引後で計算しても十分に経済合理性のある投資です。歯学部受験は決して楽な道ではありませんが、その先にある報酬は、データで裏付けられています。

保護者のみなさんへ: 3,500万円という総教育投資が、お子さんの年収でストレート卒業なら約13年・1年留年でも約19年で回収できる構造、そしてその後の長い純益期間が続く構造をご理解いただけたかと思います。投資判断としても、ストレート合格率の高い大学を選べば合理性のある選択肢です。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 税引後で計算すると、回収年数は何年延びますか?

A. 額面差で計算した場合の約8.8年(中央値学費)から、税引後(手取り差267万円)で計算すると約13年に延びます。延長分は約4〜5年です。本記事ではこの税引後の約13年を「現実シナリオ」として主軸に据えています。

Q2. 開業しないと元が取れないのでしょうか?

A. 勤務医のままでも、5年平均944万円・手取り差267万円で、現実シナリオ約13年で総コストを回収できます。開業は追加投資(設備5,000万〜1億円)の話として、別途検討する性格のものです。

Q3. 女性歯科医師でも経済合理性は成立しますか?

A. 成立します。R6で女性歯科医師は716万円ですが、一般正社員の正社員女性430万円の約1.7倍です。R7では女性999万円まで上昇しています。R7の標本数は11,240人と十分な規模ですが、男女差が1年で585万円から120万円へ約79%縮小したという急変については、構造的な変化なのか単年の動きなのか、引き続き継続注視が必要です。

Q4. 留年したら回収はどれくらい遅れますか?

A. 1年留年あたり約5.6年遅れます(追加損失1,500万円÷手取り差267万円/年)。だから大学選びでストレート合格率の確認が経済性の核心です。

Q5. 令和7年の1,063万円は令和6年より下がっていますが、年収は減少傾向ですか?

A. 令和7年の標本数は11,240人で、令和6年の13,870人から約19%減少しましたが、統計として十分な規模です。R7単年1,063万円も信頼できる最新データですが、本記事では年ごとの変動を均して経年トレンドを安定的に示すため、5年平均944万円を主軸の代表値として使っています。

Q6. 開業医の年収は本当に1,409万円なのですか?

A. 「平均1,409万円」は一部の高収益診療所が引き上げた歪んだ数字です。実態は、約半数(48.7%)が1,000万円未満で、最頻値は500〜750万円帯にあります(厚労省公式公表値)。本記事では青色申告平均1,231万円を「より実態に近い値」として採用しています。なお、この平均1,409万円のサンプルは、青色申告n=183と白色申告n=213を合わせた全回答n=396の集計です(法人立は別集計でn=134)。

Q7. 「経営は底堅い」と「歯科医師は苦境」、どちらが正しいのですか?

A. 両方とも一面ずつ正しいです。個人立の損益率は令和元年から令和6年まで24〜30%帯を維持しており、市場規模も7年で+13.6%成長しています(底堅さ)。一方、医療法人の33.6%は赤字、個人立も約半数が損益差額1,000万円未満です(分布の現実)。両面を踏まえた上で判断する必要があります。

Q8. 機会損失800万円の根拠は何ですか?

A. 大卒22歳就職と歯学部卒24歳就業開始の2年差です。歯学部生は22〜24歳の2年間は学生で収入がありませんが、大卒同期は年収400万円程度(20代前半正社員平均)を稼いでいます。この差額を機会損失として、400万円 × 2年 = 800万円で計算しています。


データ出典一覧

  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別給与額
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種別第1表
  • 厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 令和7年実施」
  • 国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査結果報告」
  • 厚生労働省「令和5年度国民医療費」
  • 各大学公式サイト掲載の2026年度学費
  • 税引後計算:国税庁所得税法・全国健康保険協会東京支部R6料率に基づく試算

※本記事の数値は2026年5月時点のもの。最新情報は各機関公式サイトで確認してください。

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歯学部受験情報館を運営しているシカラボです。 教育機関で10年以上、歯学部に関するデータを扱ってきました。 入学者ベースのストレート合格率・留年率・退学率など、見落とされやすい指標を、 厚生労働省・文部科学省・各大学公式サイトの一次資料から継続的に分析しています。
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