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歯学部の学費は高いほうが得なのか|私立17校を3つの指標で検証

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私立歯学部の学費は、6年間の合計で1,793万円から3,190万円まで開きがあります。この金額差を前にして、多くの受験生と保護者が同じ疑問を持ちます。高い学費を払う大学のほうが、結果的に得なのか。それとも損なのか。

この記事では、私立の歯学部17校について、学費6年合計と、ストレート合格率・留年率(留年・休学率)・退学率という3つの指標を突き合わせました。結論から言うと、学費と結果のあいだに相関は確かにあります。ただし、その相関で説明がつくのは大学ごとの違いの4分の1程度までです。実際、学費6年合計がぴったり同じ2,700万円の3校で、ストレート合格率は70.6%・44.2%・36.2%と、およそ2倍の開きがあります。

では、何を見れば志望校選びを大きく外さずに済むのか。記事の後半で、17校の全数値一覧とあわせてお示しします。

本記事の要点(30秒まとめ)

– 学費とストレート合格率の相関は r = +0.502(決定係数 0.252)。方向としては「学費が高い大学ほどストレート合格率が高い」

– ただし決定係数は最大でも25.2%。残りの4分の3は、学費では説明がつかない

– 学費6年合計2,700万円で並ぶ3校のストレート合格率は 70.6% / 44.2% / 36.2%(1.95倍差)

– 学費が最も安い3校(1,793万〜1,800万円)でも、留年・休学率は 41.7% / 38.6% / 21.6%(20.1ポイント差)

– 留年・休学率・退学率と最も強く連動していたのは、学費ではなくストレート合格率(r = −0.700 / −0.629)


目次

  1. 結論:相関はある。ただし学費で説明がつくのは4分の1まで
  2. 同じ学費でも、結果はこれだけ違う(2つの実例)
  3. 検証の前提|なぜ私立17校だけを見るのか
  4. 使う3つの指標の定義と出典
  5. 私立歯学部17校 全数値一覧(学費・ストレート合格率・留年率・退学率)
  6. 学費 × ストレート合格率|r = +0.502
  7. 学費 × 留年・休学率|r = −0.476
  8. 留年1年は1,500万円|定価の安さは、家計の負担の軽さではない
  9. 学費 × 退学率|r = −0.419
  10. 3つの相関を並べる|向きは同じ、強さは足りない
  11. 結論|ストレート合格率は、留年と退学を吸い込んだ数字
  12. ここまでは17校の統計的な傾向にすぎません
  13. まとめ|学費は、高いほうが得なのか

結論:相関はある。ただし学費で説明がつくのは4分の1まで

先に結論をお伝えします。

私立歯学部17校のデータを見るかぎり、学費と「歯科医師になるまでの道のり」のあいだには、確かに相関があります。学費が高い大学ほど、ストレート合格率は高く、留年・休学率は低く、退学率も低い。3つとも同じ向きの関係が出ています。

組み合わせ 相関係数 r 決定係数 r² 意味
学費 × ストレート合格率+0.5020.252学費が高い大学ほどストレート合格率が高い
学費 × 留年・休学率−0.4760.227学費が高い大学ほど留年・休学率が低い
学費 × 退学率−0.4190.175学費が高い大学ほど退学率が低い

ここで注目していただきたいのが、右端の決定係数(r²)です。決定係数は「大学ごとのばらつきのうち、どれくらいがその指標と連動しているか」を表す数値です。いちばん強い「学費 × ストレート合格率」でも0.252、つまり25.2%。残りの約75%は、学費では説明がつきません。

言い換えると、こうなります。

  • 全体の傾向としては「学費が高い大学のほうが結果はよい」と言える
  • しかし、個別の大学を1校ずつ見ると、学費からは予想できない結果が並んでいる

そして受験生が実際に決めるのは「全体の傾向」ではなく「志望校そのもの」です。だからこの記事では、傾向の話で終わらせず、17校の実数値をすべて並べます。

※ 本記事で扱う相関はいずれも「関連の強さ」を示すものであり、因果関係を示すものではありません。学費が高いこと自体がストレート合格率や留年率を決定している、という意味ではありません。


同じ学費でも、結果はこれだけ違う(2つの実例)

「説明がつかない4分の3」が何を指すのか。いちばんはっきり見えるのが、学費がほぼ同じなのに結果が大きく違う大学のペアです。17校のデータには、そうした例が2組あります。

学費がほぼ同額なのに結果が大きく違う2つの実例

実例①:学費6年合計2,700万円で並ぶ3校

私立17校のうち、学費6年合計が2,700万円ちょうどで並ぶ大学が3校あります(私立17校中、同率8位)。

大学名 学費6年合計 ストレート合格率(第116〜118回の3年平均)
昭和医科大学2,700万円70.6%
北海道医療大学2,700万円44.2%
神奈川歯科大学2,700万円36.2%

同じ金額を6年間払って、入学者のうち6年で歯科医師国家試験に合格できた割合は、70.6%から36.2%まで開いています。70.6% ÷ 36.2% = 1.95倍。およそ2倍の差です。

散布図の上では、この3校は横軸(学費)がまったく同じ位置に並ぶ点です。それでも縦軸の位置は、これだけ離れます。

実例②:学費が最も安い3校(1,793万〜1,800万円)

もう1組は、いちばん安い価格帯にあります。私立で学費が最も安いのは次の3校です。

大学名 学費6年合計 学費順位 留年・休学率(令和7年度)
松本歯科大学1,800万円15位41.7%
明海大学1,793万円16位(同率)38.6%
朝日大学1,793万円16位(同率)21.6%

3校の学費の差はわずか7万円で、ほぼ同水準と言っていい金額です。ところが在籍学生に占める留年・休学者の割合は、41.7%から21.6%まで、20.1ポイントの開きがあります。

学費という入口の数字がほぼ同じでも、入学したあとに起きていることはまったく違う。この2つの実例が、この記事全体の出発点です。


検証の前提|なぜ私立17校だけを見るのか

対象を私立17校に限定した理由

本記事の対象は私立の歯学部17校です。国公立大学を分析対象から外しています。理由は単純で、国公立は学費に差がないからです。

国公立大学の歯学部の学費は、6年間の合計で 349万6,800円。東京科学大学だけが 413万9,760円 で、それ以外はすべて同額です。学費側の数字がほぼ一直線に並んでしまうため、「学費の高さと結果の関係」を見る分析にはなりません。

一方、私立17校は最も安い大学が1,793万円、最も高い大学が3,190万円。この大きな幅があるからこそ、比較に意味が出ます。

すでに公開している学費企画との違い

このチャンネルとブログでは、学費をテーマにしたコンテンツをすでに公開しています。今回の記事は、そのどちらとも切り口が違います。

企画 何をしているか
学費ランキング2027年度版学費の金額そのものを17校で並べる
実質コストランキング学費を卒業できる割合で割り、卒業までの負担を1本の指数にまとめる
本記事学費を、ストレート合格率・留年率・退学率という3つの別々の指標と突き合わせる(合成しない)

実質コストランキングは、学費と卒業率を割り算して1本の数字にまとめたものです。今回はあえて合成せず、3つの指標を別々のレンズとして扱います。合成すると見えなくなる「同じ学費なのに結果が正反対」という個別の事情を、そのまま残したいからです。

学費はすべて「定価」です

本記事で扱う学費は、すべて各大学が公表している定価です。特待生制度に選ばれれば、実際の負担額はこれより下がる大学があります。

特待生制度については別のコンテンツでまとめていますので、あわせてご覧ください。

学費は志望校選びの大きな要素です。ただ、最短で歯科医師になれる可能性が高い大学を選ぶことは、それよりもっと大事だと考えています。この記事は、その考え方をデータで確かめるためのものです。


使う3つの指標の定義と出典

比較に使う指標は3つです。それぞれ分母が違うので、先に定義を確認しておきます。

①ストレート合格率(第116〜118回の3年平均)

定義: 入学者数を分母として、6年間(修業年限内)で歯科医師国家試験に合格した人の割合。

  • 出典: 文部科学省
  • 集計期間: 第116回・第117回・第118回の3年分をまとめた値
  • なぜこの指標を主軸に置くのか: 新卒合格率は「卒業して国家試験を受験できた人」だけを分母にするため、途中で留年した人・退学した人・卒業できなかった人が分母から消えます。これから入学する受験生が知りたいのは「入学した自分が6年で歯科医師になれる確率」ですから、分母は入学者数であるべきです。この考え方は歯科医師国家試験の合格率をどう読むかで詳しく整理しています

②留年・休学率(令和7年度・単年)

定義: 在籍学生総数に占める、留年または休学している学生の割合。

  • 出典: 文部科学省
  • 集計期間: 令和7年度の単年値(最新の数字であるため、平均化せずそのまま使用)

③退学率(令和4〜6年度の3か年平均)

定義: 在籍者数に占める、退学者数の割合。

  • 出典: 文部科学省
  • 集計期間: 令和4年度・令和5年度・令和6年度の3か年平均(公表形式そのまま)

学費6年合計

  • 出典: 各大学公式サイト
  • 年度: 各大学が公表している最新の学費です

私立歯学部17校 全数値一覧(学費・ストレート合格率・留年率・退学率)

ここが本記事のいちばんの中身です。私立17校の4指標を、学費が高い順に並べます。動画では散布図と上位3校しかお見せしていないので、全数値を確認したい方はこの表をご覧ください。

表の見方(重要)

  • 学費順位:金額が高い順(1位=最も高い)
  • スト順位:ストレート合格率が高い順(1位=最も高い=最も良い)
  • 留年順位・退学順位:率が高い順(1位=最も割合が大きい)。1位が優秀という意味ではありません
  • 同額・同値は同順位とし、その次の順位を飛ばしています
大学名 学費6年合計 学費順位 ストレート合格率 スト順位 留年・休学率 留年順位(高い順) 退学率 退学順位(高い順)
東京歯科大学3,190万円171.9%115.9%151.5%16
日本大学3,160万円244.3%730.8%63.2%11
大阪歯科大学3,150万円347.1%614.5%162.4%14
日本歯科大学3,138万円451.4%428.0%94.1%8
愛知学院大学3,060万円552.4%326.1%122.2%15
日本大学(松戸)2,940万円642.2%1027.1%113.0%12
岩手医科大学2,760万円734.1%1432.1%44.7%6
北海道医療大学2,700万円844.2%829.5%85.3%4
昭和医科大学2,700万円870.6%214.4%171.1%17
神奈川歯科大学2,700万円836.2%1330.6%73.0%12
福岡歯科大学2,630万円1142.4%924.6%133.8%9
鶴見大学2,625万円1229.8%1731.2%510.3%1
奥羽大学2,550万円1348.6%534.9%38.3%2
日本歯科大学(新潟)2,100万円1432.8%1527.7%104.8%5
松本歯科大学1,800万円1530.4%1641.7%18.2%3
明海大学1,793万円1638.3%1238.6%24.5%7
朝日大学1,793万円1642.1%1121.6%143.6%10

ストレート合格率は第116〜118回の3年平均、留年・休学率は令和7年度、退学率は令和4〜6年度の3か年平均です。順位はいずれも私立17校の中での順位です。

この表を上から下へ眺めると、確かに「上のほうはストレート合格率が高め、下のほうは留年・休学率が高め」という傾向は読み取れます。ただし、その並びに素直に従っていない大学もいくつも見つかります。学費13位の奥羽大学がストレート合格率5位に入っている一方で、学費12位の鶴見大学はストレート合格率17位・退学率1位(最も高い)です。この2校の学費差は75万円しかありません。

大学別の在籍状況をもっと細かく見たい方は、歯学部29大学 修学状況まとめに各校の学年別データを整理しています。


学費 × ストレート合格率|r = +0.502

ここから、3つのレンズを1つずつ見ていきます。まずはストレート合格率です。

学費6年合計とストレート合格率の散布図(私立17校)

横軸に学費6年合計、縦軸にストレート合格率を取って17校をプロットしたものです。

  • 相関係数 r = +0.502
  • 決定係数 r² = 0.252(25.2%)

学費が高い大学ほど、ストレート合格率も高いという方向の関係があります。統計的には「中程度の正の相関」と呼べる水準です。

ただし決定係数は0.252。ストレート合格率のばらつきのうち、学費と連動しているのは4分の1程度で、残りの4分の3は、学費では説明がつきません。

この「傾向はある。でも学費だけで結果を語れるほど強くはない」という構図は、このあとの2つのレンズでも繰り返し出てきます。

相関があることは、原因と結果があることではありません

ここで一度、はっきり確認しておきます。相関があるということは、原因と結果の関係があるということではありません。

たとえば「学費を上げたからストレート合格率が上がった」という説明は、常識的に考えて成り立ちません。むしろ向きは逆かもしれない、という見方もできます。歯科医師国家試験の合格率が高い大学は、それだけで人気が出ます。人気が出れば、学費が高くても志願者が集まる。この+0.502という数字は、そういう関係を少しだけ映しているのかもしれません。

いずれにしても、学費の額そのものが結果を作っている、という読み方はしないでください。


学費 × 留年・休学率|r = −0.476

2つめのレンズは留年率、正確には留年・休学率です。在籍している学生の総数に対して、留年または休学している学生がどれくらいいるかを示す割合で、令和7年度の値を使います。

学費6年合計と留年・休学率の散布図(私立17校)
  • 相関係数 r = −0.476
  • 決定係数 r² = 0.227(22.7%)

マイナスの符号は「学費が高い大学ほど、留年・休学率が低い傾向にある」という意味です。方向としてはストレート合格率と同じことを言っています。ただし決定係数は0.227で、やはり説明がつくのは4分の1に届きません。

留年・休学率ランキング(率が高い順)

留年・休学率そのものも見ておきます。以下のランキングは「割合が高い順」です。1位が優秀という意味ではなく、留年または休学している学生の割合が最も大きい、という意味です。

順位(率が高い順) 大学名 留年・休学率
1位松本歯科大学41.7%
2位明海大学38.6%
3位奥羽大学34.9%

逆に、率が低いほうの3校は次のとおりです。

大学名 留年・休学率
昭和医科大学14.4%
大阪歯科大学14.5%
東京歯科大学15.9%

率が最も高い松本歯科大学の41.7%は、在籍している学生の4割を超えているということです。低いほうの昭和医科大学14.4%と比べると、学内の景色はかなり違うと考えられます。

学費が最も安い3校の20.1ポイント差

H2-2でお示しした実例②を、ここで改めて確認します。学費が最も安い3校は、松本歯科大学が1,800万円、明海大学と朝日大学がどちらも1,793万円。差はわずか7万円です。

それでも留年・休学率は 41.7% / 38.6% / 21.6%。最も高い松本歯科大学と最も低い朝日大学で、20.1ポイントの開きがあります。

同じくらいの学費を払っていても、入学後に起きていることはこれだけ違います。「安いから留年が多い」わけでも、「安いから留年が少ない」わけでもありません。

留年の起き方を学年別に細かく見たい方は、卒業の壁 徹底比較もあわせてご覧ください。


留年1年は1,500万円|定価の安さは、家計の負担の軽さではない

留年率の話を「率」のままで終わらせると、実感が湧きにくいと思います。金額に置き換えます。

本ブログとチャンネルでは、留年1年の損失を1,500万円と置いています。内訳は次のとおりです。

項目 金額 内容
学費500万円追加でかかる1年分の学費
生活費200万円追加でかかる1年分の生活費
機会損失800万円歯科医師として働く期間が1年短くなることによる損失
合計1,500万円留年1年あたり

機会損失を800万円としているのは、「初年度の年収」ではなく「キャリア終盤の1年分の年収」で数えているからです。歯科医師になる時期が1年遅れれば、その分だけキャリアの最後の1年が消えます。最後の1年は、いちばん年収が高い年です。

※ この1,500万円は全大学共通の固定値であり、本記事で扱う大学別の学費6年合計とは別の計算枠組みです。大学ごとの実際の学費額と混ぜて計算しないでください。

保護者の方へ|「定価が安い大学」の落とし穴

保護者の方に向けて、同じことを言い換えます。

お子さんが1年留年すると、6年で終わるはずだった学費に、もう1年分が積み上がります。生活費も1年分増えます。そして働き始めるのが1年遅れます。

つまり、留年率が高いということは、定価が安くても、追加の学費を払っている家庭が多いということです。パンフレットに書かれた6年合計額は、あくまで「6年で卒業できた場合の金額」でしかありません。学費の安さだけでは、家計の実際の負担は測れないのです。

裏を返せば、ストレート合格には価値がある

この話は、悲観的な意味だけではありません。裏を返せば、6年間をストレートで進んで、国家試験にも合格するということは、それだけで大きな価値があるということです。

追加の学費も、増えた生活費も、遅れたはずの収入も、まるごと守ることになります。ストレート合格率という指標を本ブログが重視しているのは、この金額の重みがあるからです。


学費 × 退学率|r = −0.419

3つめのレンズは退学率です。令和4年度・令和5年度・令和6年度の3か年平均を使います。

学費6年合計と退学率の散布図(私立17校)
  • 相関係数 r = −0.419
  • 決定係数 r² = 0.175(17.5%)

学費が高い大学ほど退学率は低い傾向にありますが、3つのレンズの中ではいちばん関係が弱い組み合わせです。説明がつくのは6分の1程度。残りの8割以上は、学費では説明がつきません。

退学率ランキング(率が高い順)

こちらも「率が高い順」のランキングです。1位が優秀という意味ではありません。

順位(率が高い順) 大学名 退学率
1位鶴見大学10.3%
2位奥羽大学8.3%
3位松本歯科大学8.2%

逆に、率が低いほうの3校は次のとおりです。

大学名 退学率
昭和医科大学1.1%
東京歯科大学1.5%
愛知学院大学2.2%

率が最も高い鶴見大学の10.3%と、最も低い昭和医科大学の1.1%では、9.2ポイントの開きがあります。

留年と退学は、経済的にまったく性質が違う

退学率を留年率と別に見ていただきたい理由があります。この2つは、経済的にまったく性質が違うからです。

留年・休学 退学
起きること投資額が膨らむ投資が実らない
ゴール変わらない(歯科医師になれる)歯科医師免許は手に入らない
払ったお金卒業できれば回収に向かう入学金・授業料は戻らない

留年は、投資額が膨らむ話です。ゴールは同じでも、そこに届くまでに払うお金と時間が増える。それでも卒業して歯科医師になれれば、投資は回収に向かいます。

退学は、投資が実らない話です。入学金も、それまでに払った授業料も戻りません。歯科医師の免許という、いちばん大きなリターンも手に入りません。

だから退学率は、留年率とは別に、必ず見ておいてほしい数字です。

入学した100人が6年間でどのように減っていくのかを追ったコホート生存曲線の記事も、あわせて参考になるはずです。


3つの相関を並べる|向きは同じ、強さは足りない

3つのレンズを並べます。

レンズ 相関係数 r 決定係数 r²
学費 × ストレート合格率+0.50225.2%
学費 × 留年・休学率−0.47622.7%
学費 × 退学率−0.41917.5%

符号は違いますが、意味している向きは3つとも同じです。学費が高い大学ほど、ストレート合格率は高く、留年・休学率は低く、退学率も低い。この傾向は、3つとも確かに出ています。

ここまでを読むと、「では学費は高いほうが得だ」という結論になりそうです。

でも、決定係数を思い出してください。いちばん強い「学費 × ストレート合格率」でも25.2%。留年・休学率で22.7%、退学率で17.5%。どれも、大学ごとの違いの4分の1程度しか説明できていません。

そして実例①・実例②が示すとおり、学費が同額でも結果が正反対になる大学が実際に存在します。

では、留年や退学のしやすさを、もっとよく映している数字はないのか。あります。


結論|ストレート合格率は、留年と退学を吸い込んだ数字

答えはストレート合格率です。学費ではなく、ストレート合格率を軸に17校を見ると、関係の強さが変わります。

組み合わせ 相関係数 r 決定係数 r²
ストレート合格率 × 留年・休学率−0.70049.0%
ストレート合格率 × 退学率−0.62939.6%

ストレート合格率が高い大学ほど、留年・休学する学生の割合も、退学する学生の割合も、はっきり低い。この関係は、学費との関係より明確に強く出ています。

学費と連動している割合/ストレート合格率と連動している割合の比較

数字を並べると、こうなります。

  • 学費と連動していた割合:17.5% 〜 25.2%
  • ストレート合格率と連動している割合:39.6% 〜 49.0%

なぜストレート合格率だけが強いのか

理由は、この指標の作りにあります。ストレート合格率は、留年のしやすさと退学のしやすさを、すでに吸い込んだあとの結果の数字だからです。

「入学した人のうち、何人が6年で歯科医師になれたか」。この1つの数字の中には、

  • 途中で留年した人
  • 途中で退学した人
  • 6年で卒業したものの、国家試験に届かなかった人

が、すべて含まれています。分母が入学者数である以上、途中で抜けていった人が消えることはありません。だからストレート合格率は、大学の「入学から歯科医師になるまで」を1本で表すまとめの数字として機能します。

志望校を比べるときに1つだけ数字を見るなら、ストレート合格率です。これを見ておけば、大きく外しにくくなります。

各大学のストレート合格率が10年間でどう動いてきたかは、ストレート合格率10年推移にまとめています。単年の数字だけで判断せず、推移とあわせて確認してください。


ここまでは17校の統計的な傾向にすぎません

ここまで、大学名を挙げて数字を並べてきました。最後に、必ずお伝えしておきたいことがあります。

ここまでの話は、あくまで私立17校の統計的なまとめにすぎません。 大学ごとの平均を並べただけであって、あなた個人の結果を予測するものではありません。

  • ストレート合格率が高い大学でも、留年する学生はいます。
  • ストレート合格率が低い大学でも、ストレートで合格して歯科医師になっている学生は、たくさんいます。

留年率が40%を超える大学にも、6年間まっすぐ進んで国家試験に一発合格している学生は毎年います。逆に、ストレート合格率が7割を超える大学でも、つまずく学生はいます。平均値は、その大学に通う一人ひとりの結果ではありません。

最終的に歯科医師になれるかどうかを決めるのは、入学したあとに、その人が学び続けられるかどうかです。

低学年のうちから学習習慣をつくり、着実に進級していけば、どの大学からでもストレートで合格することは十分にできます。この記事の数値は、志望校を選ぶときの参考材料であって、入学後の結果を決めるものではありません。


まとめ|学費は、高いほうが得なのか

最後に3点でまとめます。

①学費だけで志望校を決めない

学費とストレート合格率・留年率・退学率のあいだには、確かに相関があります(+0.502 / −0.476 / −0.419)。ただし説明がつくのは、いちばん強い組み合わせでも25.2%まで。残りの4分の3は学費では説明がつきません。

②同じ学費でも、結果は大きく違う

学費6年合計2,700万円の3校で、ストレート合格率は70.6%と36.2%(1.95倍差)。学費が最も安い3校(1,793万〜1,800万円)で、留年・休学率は41.7%と21.6%(20.1ポイント差)。金額のラベルは、その大学で起きていることを教えてくれません。

③迷ったらストレート合格率を見る

留年のしやすさとも(−0.700)、退学のしやすさとも(−0.629)、最も強く連動していたのはストレート合格率でした。留年と退学の両方を吸い込んだ、まとめの数字だからです。

「学費は高いほうが得なのか」という問いに対する本記事の答えは、「高い学費は結果の良さと連動しているが、それは4分の1程度の話でしかない。だから金額ではなく、志望校そのもののストレート合格率を見てください」です。

そして繰り返しになりますが、最後に結果を決めるのは大学の平均値ではなく、入学したあとのあなた自身です。低学年のうちからしっかり学習習慣を身につけ、着実に進級していけば、ストレートで合格して歯科医師になることは十分に可能です。 志望校選びの段階では、その可能性が少しでも高くなる環境を選ぶ。この記事が、その判断材料になればうれしいです。


出典

  • ストレート合格率・留年・休学率・退学率:文部科学省
  • 学費6年合計:各大学公式サイト(2027年度。東京歯科大学・岩手医科大学のみ2026年度)

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歯学部受験情報館を運営しているシカラボです。 教育機関で10年以上、歯学部に関するデータを扱ってきました。 入学者ベースのストレート合格率・留年率・退学率など、見落とされやすい指標を、 厚生労働省・文部科学省・各大学公式サイトの一次資料から継続的に分析しています。
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