学費・特待生制度
PR

私立歯学部の特待生制度ランキング2027|17校の学費免除額と継続条件を徹底比較

kameman
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

私立歯学部の学費は、6年間で1,793万円から3,190万円。この「定価」の差だけでも1,397万円ありますが、特待生制度を入れると、この順位はまったく別のものに入れ替わります。

最上位の特待生に選ばれた場合、6年間の支払いがもっとも少なくなるのは愛知学院大学歯学部です。本体学費3,060万円が全額免除されます。定価では安い方から13番目だった大学が、一気に1位まで上がります。逆に、定価でもっとも抑えられていた明海大学歯学部と朝日大学歯学部は、そろって11位まで下がります。

ただし、このランキングをそのまま受け取ると危険です。今回、私立17校の学生募集要項・入学試験要項・大学案内・学内規程・事業報告書まで確認したところ、同じ「特待生」という言葉でも、枠の広さも、免除される費目も、2年目以降に続けられる条件も、大学ごとにまるで違いました。 枠は数名から42名まで開き、2年目以降の継続に成績要件が無いと要項に明記されているのは17校でわずか1校でした。

この記事では、2027年度入学者を対象とした最新情報で、17校を横一列に並べます。「どこが安いか」だけでなく、「その安さを6年間維持できるのか」まで踏み込んで整理しました。

【2026年10月12日 訂正】 公開時点では東京歯科大学の特別奨学金の金額を「非公表」としていましたが、大学が9月28日付で作成した2027年度入学試験要項に、2026年度入試の実績(成績上位者10名程度に450万円)が記載されていると確認しました。本文・表・順位を訂正しています(東京歯科大学は17位→16位、日本大学歯学部は16位→17位)。


目次

  1. この記事で分かること
  2. 結論:特待生を入れると学費ランキングは大きく入れ替わる
  3. このランキングの3つの前提
  4. 【定価】私立歯学部17校 6年間学費ランキング2027
  5. 【特待生あり】私立歯学部17校 6年間支払額ランキング2027
  6. 順位はどこまで動くのか|最大12ランク上昇・10ランク下降
  7. 明海大学・朝日大学に特待生制度が「無い」理由
  8. 中身の違い①|枠の広さが数名から42名まで開く
  9. 中身の違い②|免除される費目が大学ごとに違う
  10. 中身の違い③|継続条件は6つの型に分かれる
  11. 募集要項だけでは読み取りきれない部分がある
  12. 継続条件は「進級」より一段高い水準
  13. ストレート合格率42.13%という水準から考える
  14. 特待生から外れる人はいるのか|公表している1校の例
  15. 出願の時点で選ぶことになる制度|愛知学院大学のケース
  16. 学費が下がっても、留年すれば1年で1,500万円
  17. 特待生制度のよくある疑問
  18. まとめ|特待生は「取れた時点」で終わりではない

この記事で分かること

  • 特待生を入れた私立歯学部17校の6年間支払額ランキング(2027年度・支払額が少ない順)
  • 定価のランキングと比べて、どの大学が何ランク動くのか
  • 入試成績による特待生制度が「無い」2校と、その構造的な理由
  • 同じ「特待生」でも枠・免除費目・継続条件がどれだけ違うか
  • 継続条件を数字で公表している3校の基準と、その水準の意味

結論:特待生を入れると学費ランキングは大きく入れ替わる

先に結論から示します。最上位の特待生に選ばれた場合、6年間の支払額が少ない順のトップ3は次のとおりです。

順位大学6年間の支払額定価での位置
1愛知学院大学歯学部本体学費 全額免除安い方から13番目
2北海道医療大学歯学部3,496,800円同8番目
3大阪歯科大学3,814,800円同15番目

3校とも、定価では真ん中から高い側にいた大学です。一方、定価では17校でもっとも抑えられていた明海大学歯学部と朝日大学歯学部は、特待生を入れると11位タイまで下がります。

なぜこうなるのか。答えはシンプルで、この2校には入試成績による特待生制度そのものが無いからです。ただしこれは「制度が足りない大学」という話ではありません。理由は後述します。

そして、もっと重要なのはこの先です。このランキングは「その大学でいちばん上の枠を取れて、6年間その資格を維持できた場合」の順位にすぎません。 枠は数名から42名まで開きがあり、2年目以降に成績の条件が無いと要項に明記されているのは1校だけでした。順位の数字だけを見て志望校を決めると、入学後に前提が崩れる可能性があります。


このランキングの3つの前提

比較の土台を先にはっきりさせておきます。

1つ目:比べているのは「本体学費」だけです。

入学金、授業料、施設維持費や教育充実費といった、大学が定める学納金を6年分足した金額です。諸会費・共済会費・教科書代・実習器材費などの外だし費用は含みません。この点は私立歯学部17校の学費ランキング2027と同じ定義でそろえています。

2つ目:金額はすべて「その大学でもっとも上の特待生に選ばれた場合」の金額です。

枠を取れなかった場合、あるいは途中で外れた場合には当てはまりません。

3つ目:2027年度入学者を対象とした金額でそろえています。

ただし2校だけ例外があります。岩手医科大学歯学部は令和8年度(2026年度)学生募集要項に記載された学納金額をもとにした数値で、令和9年度は本記事執筆時点で未公表です。東京歯科大学は、特別奨学金の450万円が2026年度入試の実績で、2027年度入学試験要項に「2026年度入試実績」として記載されています。定価は2027年度も同額であることを、2026年10月12日に大学の学納金ページで確認しました。

なお、ランキングに収録しているのは入学試験の成績で決まり、大学が金額を公表している制度です。学費が最初から下がる「減免」と、いったん納めてから戻ってくる「給付」の両方を含みます。6年間で手元から出ていく最終的な負担で比べる、という考え方です。

また、並べる向きは「支払額が少ない順」です。学費ランキング記事は「高い方から」の並びですので、混同しないようご注意ください。


【定価】私立歯学部17校 6年間学費ランキング2027

まず、比較のもとになる定価の並びです。支払額が少ない順に並べています。

順位大学6年間合計(本体学費)
1明海大学歯学部17,930,000円
1朝日大学歯学部17,930,000円
3松本歯科大学18,000,000円
4日本歯科大学新潟生命歯学部21,000,000円
5奥羽大学歯学部25,500,000円
6鶴見大学歯学部26,250,000円
7福岡歯科大学26,300,000円
8昭和医科大学歯学部27,000,000円
8神奈川歯科大学27,000,000円
8北海道医療大学歯学部27,000,000円
11岩手医科大学歯学部27,600,000円
12日本大学松戸歯学部29,400,000円
13愛知学院大学歯学部30,600,000円
14日本歯科大学生命歯学部31,380,000円
15大阪歯科大学31,500,000円
16日本大学歯学部31,600,000円
17東京歯科大学31,900,000円

※ 順位は同額をタイとして数えています(1位が2校なら次は3位)。同順位内の並び順は便宜的なものです。

※ 岩手医科大学は2026年度の金額です。東京歯科大学の定価は2027年度も同額です(2026年10月12日に大学の学納金ページで確認)。

※ 出典:各大学公式サイトの学費案内・学生募集要項

真ん中の27,000,000円に3校が並んでいるのが特徴です。ここが動くかどうかで、順位は一気に変わります。


【特待生あり】私立歯学部17校 6年間支払額ランキング2027

こちらが本記事の中心です。各大学でもっとも上の特待生に選ばれ、6年間その資格を維持できた場合の支払額です。

順位大学6年間の支払額免除・給付額枠
1愛知学院大学歯学部本体学費 全額免除30,600,000円4名
2北海道医療大学歯学部3,496,800円23,503,200円非公表
3大阪歯科大学3,814,800円27,685,200円20名程度
4岩手医科大学歯学部4,200,000円23,400,000円5名以内
5奥羽大学歯学部4,500,000円 ※算出値21,000,000円16名
6松本歯科大学4,700,000円13,300,000円若干名
7福岡歯科大学13,800,000円12,500,000円約20名
8日本歯科大学新潟生命歯学部15,690,000円5,310,000円約15名
8日本歯科大学生命歯学部15,690,000円15,690,000円若干名
10日本大学松戸歯学部17,200,000円12,200,000円 ※給付一般選抜3名
11明海大学歯学部17,930,000円―制度なし
11朝日大学歯学部17,930,000円―制度なし
13鶴見大学歯学部22,750,000円3,500,000円3名
14神奈川歯科大学23,050,000円3,950,000円各日程1名
15昭和医科大学歯学部24,000,000円3,000,000円42名
16東京歯科大学27,400,000円4,500,000円 ※1年次のみ10名程度
17日本大学歯学部28,800,000円2,800,000円非公表

※ 順位は同額をタイとして数えています(8位が2校なら次は10位)。同順位内の並び順は便宜的なものです。

※ 東京歯科大学の給付額は2026年度入試の実績です(2027年度入学試験要項に記載)。2027年度の給付額を大学が約束した値ではありません。

※ 出典:各大学公式サイトの学費案内・学生募集要項・入学試験要項・大学案内

表を読むときの注意点(重要)

1位・愛知学院大学歯学部:免除額30,600,000円の対象は「入学金・歯学教育充実費・授業料」の3費目です。学納金一覧の6年総合計は31,141,000円で、このほかに歯学部共済会費70万円、教科書・実習用消耗品代が約160万円、共用試験受験料などが別途必要です。「6年間0円」ではありません。

5位・奥羽大学歯学部の4,500,000円は当方の算出値で、大学が公表している金額ではありません。 2027年度から新設された施設維持費400,000円・教育充実費400,000円(いずれも2〜6年次)を、免除の対象外として計算しています。大学はこの2費目が免除の対象かどうかを公表していません。詳しくは後述します。

8位タイの日本歯科大学2学部:支払額はどちらも15,690,000円ですが、定価が違うため減免の割合は倍近く開きます。 生命歯学部は31,380,000円に対する15,690,000円で50.0%(半額)、新潟生命歯学部は21,000,000円に対する5,310,000円で25.29%です。同じ金額だからといって、同じ手厚さではありません。

10位・日本大学松戸歯学部:2027年度から新規導入された「松戸歯学部鈴木奨学金 第3種・第4種」にもとづく金額です。1年次・2年次の学費相当額12,200,000円が給付され、大学は「6年間の学費2,940万円が1,720万円に」と明示しています。ここで重要なのは、これが減免ではなく給付だという点です。入学手続時にはいったん定価どおり全額を納付する必要があり、給付は7月の予定です。手元の資金計画では、この時間差を必ず織り込んでください。なお同校には別制度として「教育充実料の減免」(1年次の教育充実料2,000,000円・一般選抜6名)もありますが、免除額が小さいためランキング行には採っていません。

16位・東京歯科大学:2027年度入学試験要項に、2026年度入試の実績として、成績上位者(全体で10名程度)に450万円(授業料、施設維持費相当額)を支給したと記載されています。対象は一般選抜(Ⅰ期・Ⅱ期)と共通テスト利用選抜(Ⅰ期・Ⅱ期)の受験者です。この450万円は1年次の分で、2〜6年次は前年度の成績上位者5名に100万〜30万円を支給する別枠(2025年度実績)です。そのため6年間の支払額は、定価31,900,000円から1年次の4,500,000円を引いた27,400,000円としています。2026年度入試の実績であり、2027年度の給付額を大学が約束した金額ではありません。 上位10名程度の枠ですので、受験すれば必ず受けられる金額でもありません。

17位・日本大学歯学部:免除の対象は教育充実料で、大学の説明は「教育充実料の範囲内で」という上限の表現です。表の2,800,000円は上限額として読んでください。


順位はどこまで動くのか|最大12ランク上昇・10ランク下降

定価の順位と、特待生を入れたあとの順位を並べると、動きがはっきりします。

大学定価順位特待後順位変動
愛知学院大学歯学部131↑12
大阪歯科大学153↑12
岩手医科大学歯学部114↑7
北海道医療大学歯学部82↑6
日本歯科大学生命歯学部148↑6
日本大学松戸歯学部1210↑2
東京歯科大学1716↑1
奥羽大学歯学部55→
福岡歯科大学77→
日本大学歯学部1617↓1
松本歯科大学36↓3
日本歯科大学新潟生命歯学部48↓4
神奈川歯科大学814↓6
鶴見大学歯学部613↓7
昭和医科大学歯学部815↓7
明海大学歯学部111↓10
朝日大学歯学部111↓10

もっとも大きく上がったのは愛知学院大学と大阪歯科大学で、どちらも12ランクの上昇。岩手医科大学が7ランク、北海道医療大学が6ランク上がっています。この4校はいずれも、定価では真ん中から高い側にいた大学です。

逆にもっとも大きく下がったのは、明海大学と朝日大学のそれぞれ10ランク。鶴見大学と昭和医科大学も7ランク下がりました。

そして、順位が動かなかった大学も2校あります。奥羽大学と福岡歯科大学です。東京歯科大学は1ランク上がり、日本大学歯学部は1ランク下がっています。

この表はあくまで「支払額の並び順」であり、教育の質やストレート合格率の順位ではありません。 出口の指標については私立歯学部のストレート合格率ランキング、入口の指標については歯学部偏差値ランキング2027年版をあわせてご覧ください。


明海大学・朝日大学に特待生制度が「無い」理由

順位が10ランク下がった2校について、誤解のないように補足します。

明海大学歯学部と朝日大学歯学部には、入学試験の成績によって学費が減免される制度がありません。これは「調べたが情報が見つからなかった」ということではなく、公表資料を全文検索した結果として制度そのものが存在しないことを確認しています。

明海大学については、2027年度入学者選抜試験要項に掲げられた奨学制度の対象学部に歯学部が含まれていません。歯学部にあるのは、経済的理由による無利子貸与の「歯学部教育後援会奨学金」です。朝日大学については、学部別の奨学金資料のうち歯学部版だけが「その他の奨学金等」のみで構成されており、他学部にある大学独自の奨学金制度のページが最初から含まれていません。歯学部が対象なのは上限1,752万円の奨学融資(ローン)と、その借入利息の一部を給付する制度です。

ただし、これは「制度が足りない大学」という話ではありません。

この2校は、6年間の定価がいずれも17,930,000円で、17校の中でもっとも抑えられている水準です。つまり、もともと下げる余地が小さいという構造です。定価の段階で全員に対して抑えている大学と、定価は高いけれど選ばれた一部の学生を大きく下げる大学。この2つは方針が違うだけで、優劣の話ではありません。

なお、明海大学が2024年度から実施している「歯学部 入学初年度の授業料を50%減額」は、成績優秀者向けの特待ではなく入学者全員に適用される学費改定です。上の定価17,930,000円にすでに反映されています。


中身の違い①|枠の広さが数名から42名まで開く

ここからが本題です。同じ「特待生」という言葉でも、中身は大学ごとにまるで違います。まずは枠の広さから見ていきます。

大学制度名最上位の枠6年間の免除・給付額
愛知学院大学歯学部新入生特待生4名30,600,000円
神奈川歯科大学KDU入学サポート制度(最上位)各日程1名3,950,000円
岩手医科大学歯学部歯学部特待生A5名以内23,400,000円
奥羽大学歯学部特待生選抜(全額)16名21,000,000円
大阪歯科大学入学者選抜成績優秀者特待生20名程度27,685,200円
昭和医科大学歯学部特待制度42名3,000,000円

1位の愛知学院大学の新入生特待生は4名。14位の神奈川歯科大学で初年度の学生納付金が全額免除になるいちばん上の枠は各日程1名です。一方、15位の昭和医科大学は42名。同じ「特待生を取れれば」という話でも、採用される人数が10倍以上違います。

ここには分かりやすい傾向があります。枠が広い制度ほど、1人あたりの免除額は小さくなるということです。昭和医科大学の42名は初年度の授業料300万円が対象で、入学金1,500,000円は免除されません。神奈川歯科大学も、制度全体ではA日程・B日程に各15名の枠がありますが、最上位以外は減免額が小さくなります。鶴見大学も上位10名の2階層構成で、最上位(上位3位まで)が初年度学納金の全額免除です。

採用人数は年度によって変わる

もう一点、見落としやすいのが制度の変更の速さです。大阪歯科大学の特待生は、2025年度は3名でした。それが2026年度に15名程度、2027年度は20名程度まで広がっています。大学自身が「対象人数を昨年度の15名から20名へ拡大しました」「5名増!!」と広報しています。

一方、奥羽大学は2026年度入試から30名が16名へ縮小しています。特待生制度は定価の学費と違って、年度ごとに変更されることが珍しくありません。 出願前には必ず最新の学生募集要項でご確認ください。


中身の違い②|免除される費目が大学ごとに違う

金額の大きさ以上に見落とされやすいのが、「何が免除されるのか」です。ここは大学によって正反対と言えるくらい違いました。

スコープ大学
授業料のみ奥羽大学(明示なし・状況証拠から判断)/松本歯科大学
授業料+付帯費目(入学金は対象外)岩手医科大学(授業料・施設整備費・教育充実費)/大阪歯科大学(学納金から入学金を除く)
入学金を含む日本歯科大学(生命・新潟)/鶴見大学(最上位)/神奈川歯科大学(最上位)/愛知学院大学/日本大学松戸歯学部/福岡歯科大学
教育充実料のみ日本大学歯学部(大学の表現は「教育充実料の範囲内で」=上限額)
初年度の授業料のみ昭和医科大学(入学金1,500,000円は免除の対象外)
授業料・施設維持費相当額(1年次のみ)東京歯科大学(4,500,000円。大学の表現は「授業料、施設維持費相当額」)

とくに岩手医科大学と奥羽大学が正反対になっています。

岩手医科大学は、減免の対象が「授業料、施設整備費および教育充実費」と明示されていて、費目ごとの金額表まで公表されています。特待生Aなら、施設整備費も教育充実費も0円です。

一方、奥羽大学で免除の対象として書かれているのは「授業料」です。学則にも「特待生として授業料の全部又は一部を免除する」とあります。

奥羽大学で起きている「2つの総額」

その奥羽大学では、2027年度から施設維持費400,000円と教育充実費400,000円が新しく加わりました(いずれも2〜6年次)。ここで、同じ冊子の中に2つの総額が併存する状態になっています。

誌面語歯学部6年含むもの
学費のページ学費合計25,500,000円入学金・授業料・施設維持費・教育充実費
特待生の説明学納金21,500,000円入学金・授業料のみ

差額の4,000,000円は、400,000円×5年+400,000円×5年と完全に一致します。つまり、大学が特待生の説明で使っている2,150万円には、2027年度から新設された2つの費目が入っていません。

大学はこの2費目が免除の対象かどうかを公表していません。本記事で奥羽大学を4,500,000円としているのは、免除の対象が「授業料」であることをもとにした算出値です。大学の公表値ではない点にご注意ください。この点は出願前に必ず大学へ直接ご確認いただくことをおすすめします。

福岡歯科大学は内訳が公表されている

免除額の内訳を明確に公表している例もあります。福岡歯科大学の専願S特待生は「学納金(6年間)1,380万円(1,250万円免除)」で、内訳は入学金50万円・授業料毎年200万円免除と公表されています。施設維持費・教育充実資金は対象外です。総額だけでなく内訳まで示している大学は、資金計画が立てやすいという意味で貴重です。


中身の違い③|継続条件は6つの型に分かれる

そして3つ目。取ったあと、その免除が2年目以降も続くのかどうかです。ここが本記事でもっともお伝えしたい部分です。

17校の学生募集要項に加えて、大学が公開している学内規程まで含めて整理したところ、6つの型と「公表していない大学」に分かれました。

類型校数大学
① 成績要件なしと要項に明記1校北海道医療大学
② 成績条件あり・基準が明示3校奥羽大学/福岡歯科大学/岩手医科大学
③ 成績条件あり・基準が非公表3校大阪歯科大学/愛知学院大学/日本大学松戸歯学部
④ 原級留置・年限超過で失格2校松本歯科大学/日本歯科大学生命歯学部
⑤ 継続の概念なし(初年度のみの制度)5校昭和医科大学/鶴見大学/神奈川歯科大学/日本大学歯学部/東京歯科大学
⑥ 毎年度 再選考1校東京歯科大学(⑤にも該当。事業報告書の期間欄が「1年」で、毎年度あらためて選考される。新入生向けの450万円は1年次の分のみ)
記載なし(公表されていない)1校日本歯科大学新潟生命歯学部
制度なし2校明海大学歯学部/朝日大学歯学部

①に該当するのは北海道医療大学の1校だけです。要項の一覧表の「2年次以降の継続要件(成績要件等)」欄が「成績要件なし」となっており、本文も「最短修業年限期間中は、学業成績にかかわらず学生納付金の免除が継続します」と書かれています。

ただし、「完全無条件」ではありません。 免除の期間は最短修業年限の期間中で、歯学部は最大6年間です。留年して7年目に入ると対象外になり、定価の負担に戻ります。 成績の要件が無いのは事実ですが、期間の上限があることは必ずセットで理解しておく必要があります。

⑤の5校(昭和医科大学・鶴見大学・神奈川歯科大学・日本大学歯学部・東京歯科大学)は、入試の特待そのものが初年度のみを対象とする制度です。「6年間続ける」という考え方がもともとありません。これは制度の良し悪しではなく、性質の違いです。これらの大学に在学生向けの別制度が存在する場合もありますが、入試特待の継続ではなく、毎年ゼロベースで選考される別の仕組みです。東京歯科大学の場合、新入生向けの450万円は1年次の分だけで、2〜6年次は前年度の成績上位者5名に100万〜30万円を支給する別枠(在学生向け)です。なお、東京歯科大学は⑤と⑥の両方に該当するため、上の表の校数を足すと17校より1校多くなります。

④の日本歯科大学生命歯学部は、懲戒と7年目以降の在学によって資格を失う設計です。裏を返すと、6年目までは留年しても半額の減免が継続するということになります。


募集要項だけでは読み取りきれない部分がある

継続条件を調べていて、もっとも注意が必要だと感じたのがこの点です。

募集要項の側は「留年、休学、学則に違反するなど不適格と判断されない限り継続されます」といった包括的な書き方にとどまっている大学があります。 この文面だけを読むと、成績の条件は無いように見えます。

ところが、その大学が公開している学内規程を確認すると、「成績不良である場合は免除を取り消す」と定められていました。 しかも判定は年2回(前学期の成績発表時と年度末)行われ、資格継続の不認可以降は資格が与えられないという規定もあります。休学した場合、復学しても資格が戻らない設計です。

ただし、その「成績不良」がどのくらいの水準なのかは公表されていません。 全公表文書を検索しましたが、数値基準の定義は見つかりませんでした。

これは特定の大学を非難する話ではありません。学内規程を公開していること自体は、むしろ透明性が高い対応です。ここでお伝えしたいのは、募集要項の1ページだけを見て「条件が緩い」と判断するのは危険ということです。志望校が決まっている方は、要項に加えて、大学が公開している規程類や、オープンキャンパス・個別相談の場での確認をおすすめします。


継続条件は「進級」より一段高い水準

では、継続条件を数字で公表している大学は、どのくらいの水準を求めているのでしょうか。3校が具体的な基準を示しています。

大学継続の基準
奥羽大学歯学部進級試験の成績が80点以上(半額免除は75点以上)
福岡歯科大学前年度の学業成績の平均点80点以上で進級すること
岩手医科大学歯学部進級時の成績が上位3分の1以内

ここで大事なのは、いずれも「進級できたかどうか」とは別の基準だという点です。

進級の判定の仕組みは大学ごとに違うため、点数を横並びにしても比較になりません。ただ、3校とも、進級したかどうかとは別に、成績そのものを問う基準が置かれていることははっきりしています。「進級できれば維持できる」ではなく、進級よりもう一段高いところを、毎年出し続ける必要があるということです。

そして、岩手医科大学だけは点数ではなく順位です。上位3分の1以内。これは、自分の点数が去年と変わらなくても、まわりが伸びれば外れることがあるという意味になります。これは制度の性質の話であって、大学を批判するものではありません。


ストレート合格率42.13%という水準から考える

ここまで読むと、継続条件がかなり厳しく感じられるかもしれません。そこで、全体の水準を一度確認しておきます。

私立歯学部のストレート合格率、つまり入学した人数を分母にして、6年間で卒業し歯科医師国家試験に合格した人の割合は、第118回で42.13%でした。東京歯科大学と昭和医科大学を除いた、私立15大学の平均値です(出典:厚生労働省「歯科医師国家試験の合格発表」および各大学公表資料)。

入学した人のうち、6年で歯科医師になれるのがおよそ4割。それが上位2校を除いた私立15大学の水準です。詳しい内訳は私立歯学部のストレート合格率ランキングと歯学部29大学の修学状況まとめで解説しています。

この数字を踏まえると、特待生の継続条件の見え方が少し変わります。特待生を6年間続けるには、たしかに通常の進級に必要な水準より高い成績を求められる傾向があります。ただ、6年で卒業して国家試験に合格することを目指すなら、そもそもそのくらいの成績は残しておきたいところです。

条件そのものは厳しいものですが、学費のためだけの基準ではなく、勉強を続けるための目標のひとつと捉えることもできます。毎年の成績を意識せざるを得ない仕組みが、結果的に6年間のペースメーカーになる可能性もあります。


特待生から外れる人はいるのか|公表している1校の例

条件があるのは分かった。では、実際に外れる人はいるのか。ここが受験生・保護者のいちばん知りたいところだと思います。

ところが、学年別の特待生の人数を毎年続けて公表している大学は、ほとんどありません。 ここでは、公表している1校を例として見てみます(大学名は伏せます)。

この大学は「特待生の資格は所定の基準により最大6年間継続できるが、これまでに大多数の学生が継続している」と説明しています。そこで、公表されている学年別の特待生の人数を、入学した年度ごとに追いかけ、学年が上がるところで合計してみました。

学年の移行前後減少率
1年 → 2年91名87名−4.4%
2年 → 3年96名84名−12.5%
3年 → 4年89名70名−21.3%
4年 → 5年83名75名−9.6%
5年 → 6年80名80名±0

※ 大学が公表している学年別の授与人数を、入学年度でたどって移行ごとに合計したものです。大学が「継続率」として公表している数値ではありません。各移行で母数が違うのは、追えるコホートの本数が移行ごとに異なるためです(追える入学年度9つぶん)。

この大学の場合、3年から4年に進級する段階で、特待生の資格を失う学生がもっとも多くなっています。

ただし、これは1校の例にすぎません。 どの学年で外れやすいかは大学によって違うはずですし、1年次や2年次から外れる大学もあるでしょう。ほかの大学は公表していないので分かりません。

この例から言えるのは、学年ごとの傾向ではなく、「特待生は外れることがある」という事実そのものです。取った時点で終わりではなく、入ってからも走り続ける必要がある。ただ、繰り返しになりますが、6年で卒業して国家試験に合格することを目指すなら、そもそもそのくらいの成績は残しておきたいところです。


出願の時点で選ぶことになる制度|愛知学院大学のケース

もう一つ、取る前の段階で知っておきたい構造があります。1位の愛知学院大学歯学部です。

同学部には特待生・奨学生の制度が4つあり、そのうちの1つに申し込むと、いちばん大きい免除の制度からは外れます。

制度枠6年間の免除額申込み
歯学部専願特待生20名15,600,000円出願時に申込用紙の提出が必要
新入生特待生4名30,600,000円申込不要

要項の脚注に「歯学部専願特待生に申し込んだ場合、新入生特待生およびくすのき奨学生には選抜されません」と書かれています。しかも申込用紙は出願時に提出する必要があり、2026年度要項には「以後の提出は一切認めません」とあります。結果を見てから選び直すことはできません。

興味深いのは、大学自身がこの構造を「選抜イメージ」として公開している点です。

成績順位専願の申込み選ばれる制度6年間の免除額
1位なし新入生特待生30,600,000円
2位あり歯学部専願特待生15,600,000円
3位なし新入生特待生30,600,000円
4位あり歯学部専願特待生15,600,000円

成績で上に来ても、専願に申し込んでいれば1,560万円のほうになる。それを大学が図にして見せています。そのうえで大学は「学納金免除を重視する場合は、選抜人数が多い歯学部専願特待生への申込みをご検討ください」と推奨しています。

つまりこれは隠された落とし穴ではなく、大学が設計して説明しているトレードオフです。20名の枠で1,560万円を狙うのか、4名の枠で3,060万円を狙うのか。出願の時点でどちらかを選ぶことになります。出願前に、ご家庭で一度話し合っておきたいポイントです。


学費が下がっても、留年すれば1年で1,500万円

最後に、いちばん大事なことをお伝えします。

特待生制度の有無や大きさは、教育の質やストレート合格率とは別の軸です。 ここまでの比較は、あくまで各大学の公表資料をもとにした制度の統計的な評価にすぎません。実際に6年間で卒業できるかどうかを決めるのは、最終的には個人の学習習慣です。制度が手厚い大学に入れば安泰、という話ではまったくありません。

そのうえで、当チャンネルが繰り返しお伝えしている数字があります。留年1年の経済的損失は約1,500万円です。

内訳金額
学費(1年分)500万円
生活費(1年分)200万円
機会損失(キャリア終盤の年収1年分)800万円
合計1,500万円

※ この1,500万円は当サイト独自の試算です。学費は大学間のぶれをなくすため、全大学共通の固定値を用いています。

そして特待生の場合は、ここに「残りの年数ぶんの免除が消える」という損失も重なります。 3年次で資格を失えば、4年次から6年次までの3年分の免除がなくなる。制度によっては、留年した時点で以後の資格が与えられないものもあります。

特待生を維持できるかどうかは、成績の話であると同時に、そのままお金の話でもあります。6年間の総額が下がっても、続けられなければその前提が崩れる。 学費を出す側から見ても、ここは見落とせない視点だと思います。


特待生制度のよくある疑問

Q. 特待生の選考は、出願すれば自動的に受けられますか?

大学によります。多くは入学試験の成績で自動的に選考されますが、申請が必要な大学もあります。 福岡歯科大学の専願S特待生は、Web出願で特待生の選考を「希望する」と選択したうえで、さらに試験当日に承諾書を提出する必要があります。愛知学院大学の歯学部専願特待生も、出願時の申込用紙の提出が必須です。

Q. どの入試方式でも特待生になれますか?

対象の入試区分が限られている大学があります。 岩手医科大学歯学部の特待生は共通テスト利用選抜または医学部入学試験利用選抜の合格者が対象で、一般選抜は対象外と明記されています。大阪歯科大学は2027年度に「全学部日程[理科2科目型]」を新設し、特待生の対象は理科2科目型のみです(理科1科目型は対象外)。福岡歯科大学の共通テスト利用による特待生選考は、英語・数学・理科の3科目指定です。志望校が決まったら、まず「どの入試方式が特待の対象か」を確認してください。

Q. 免除された金額に、返還義務が生じることはありますか?

大学によります。岩手医科大学歯学部の特待生・同窓生減免には、卒業後5年間、本学で研修することを確約するという条件があり、退学時には減免額の返還義務が定められています。一方、大阪歯科大学については公表資料の範囲で返還義務の規定は見当たりませんでした。金額が大きい制度ほど、条件も併せて確認する必要があります。

Q. 入学後の成績次第で、あとから特待生になれますか?

在学生向けの特待生・奨学制度を持つ大学は多くあります。ただし入試特待とは別の制度であり、選考の基準も金額も異なります。「入学後に頑張れば取れる」と考える場合も、その大学の在学生向け制度の要件を個別に確認してください。

Q. 表の金額に、諸会費や教科書代は入っていますか?

入っていません。本記事の金額は本体学費(入学金+授業料+施設維持費・教育充実費等の学納金)の6年間合計です。共済会費・教科書代・実習器材費などは別途必要で、大学によっては6年間で200万円を超えます。実際の総支出はこの表の金額より大きくなります。


まとめ|特待生は「取れた時点」で終わりではない

長くなりましたので、要点を3つに絞ります。

  1. 特待生を入れると、学費の順位は大きく入れ替わります。 定価では安い方から13番目だった愛知学院大学歯学部が1位になり、定価でもっとも抑えられていた明海大学・朝日大学はそろって11位になります。動きの最大幅は12ランクの上昇と10ランクの下降でした。
  2. ただしその順位は「いちばん上の枠を取れて、6年間維持できた場合」の順位です。 枠は数名から42名まで開きがあり、大阪歯科大学のように2年で人数が大きく変わる制度もあります。
  3. 同じ「特待生」でも、免除される費目も継続条件も違います。 2年目以降に成績の条件が無いと要項に明記されているのは1校だけ(それも期間は最大6年間)で、初年度だけの制度が5校ありました。

特待生制度は、私立歯学部を目指すご家庭にとって非常に大きな意味を持ちます。3,000万円規模の免除は、進路の選択肢そのものを変える力があります。だからこそ、金額の大きさだけでなく「6年間その条件を満たし続けられるか」まで含めて検討する価値があります。

そして、継続条件として求められる水準は、6年間で卒業して歯科医師国家試験に合格することを目指すなら、そもそも残しておきたい成績でもあります。条件そのものは厳しいものですが、学費のためだけの基準ではなく、勉強を続けるための目標のひとつと考えることもできます。 低学年のうちから学習習慣を身につけておくことは、特待生の維持という面でも、その先を考えるうえでも、無駄にはならないはずです。

次回:17校を1校ずつ詳しく取り上げます

本記事は「17校を横に並べて比べる」ことに徹しました。制度の名前、免除される費目、人数、継続条件は大学ごとに違うため、志望校が決まっている方向けに、17校を1校ずつ縦に掘り下げた大学別ガイド記事を用意しました。

動画版もあります

本記事の内容は、YouTubeの動画版でも解説しています。表やグラフを見ながら理解したい方はこちらもどうぞ。

あわせて読みたい


本記事の金額・制度内容は、各大学が公式サイト・学生募集要項・入学試験要項・大学案内等で公表している情報をもとに、2026年9月時点で整理したものです(東京歯科大学の特別奨学金のみ、2027年度入学試験要項の記載にもとづき2026年10月12日に訂正)。特待生制度は年度によって変更されることが多いため、出願前には必ず各大学の最新の学生募集要項でご確認ください。

出典:各大学公式サイト(学費案内・学生募集要項・入学試験要項・大学案内・学内規程・事業報告書・自己点検評価報告書)/厚生労働省「歯科医師国家試験の合格発表」/文部科学省「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」関連資料

スポンサーリンク
ABOUT ME
シカラボ(shika-lab)
シカラボ(shika-lab)
公式データで歯学部を分析
歯学部受験情報館を運営しているシカラボです。 教育機関で10年以上、歯学部に関するデータを扱ってきました。 入学者ベースのストレート合格率・留年率・退学率など、見落とされやすい指標を、 厚生労働省・文部科学省・各大学公式サイトの一次資料から継続的に分析しています。
記事URLをコピーしました