歯学部偏差値ランキング2027年版|偏差値が同じでもストレート合格率が約1.8倍ひらく大学がある

kameman

歯学部を志望するとき、最初に見る数字はやはり偏差値でしょう。しかし、歯学部選びにおいて偏差値だけを見て志望校を決めるのは、実はとても危険です。本記事では、河合塾2027年度の偏差値(方式別ランク)と共通テスト得点率、そして歯科医師国家試験のストレート合格率を一枚の表にまとめ、3つの数字を横並びで比較します。

すると、見過ごせない事実が浮かび上がります。たとえば、河合塾の方式別偏差値が同じ37.5の大学どうしでも、6年間で順当に卒業して国家試験に合格する割合(ストレート合格率)は、最大で約1.8倍(52.1%÷29.5%≒1.77倍)もひらいています。さらに、同じ偏差値35帯の中でも、共通テスト得点率には最大19ポイントもの差があります。

つまり「偏差値が同じ=合格しやすさも卒業しやすさも同じ」ではない、ということです。この記事を読み終えるころには、入口の偏差値だけでなく、共通テスト得点率と出口のストレート合格率まで含めて大学を選ぶ、本当の判断基準が手に入ります。

※ 本記事は河合塾・厚生労働省・文部科学省などの公表データに基づく傾向分析です。各大学の教育内容や学生支援の質を評価・序列化するものではありません。最終的な合否や卒業は、個人の学習習慣によって大きく変わります。


目次

  1. 国公立歯学部 偏差値・共通テスト得点率ランキング2027
  2. 私立歯学部 偏差値・共通テスト得点率ランキング2027
  3. 「同じ偏差値35帯」なのに共通テスト得点率に最大19ptの差がある理由
  4. 河合塾の「方式別ランク」と「学部学科ランク」は何が違うのか
  5. 河合塾とBenesseで偏差値が異なる理由
  6. 偏差値だけで大学を選んではいけない本当の理由
  7. 大学選びの新基準:ストレート合格率
  8. 新卒合格率とストレート合格率は別物
  9. まとめ:受験生が最初に見るべき数字

この記事で分かること

  • 国公立12校・私立17校の河合塾2027年度偏差値と共通テスト得点率の最新一覧
  • 偏差値だけでは見えない「共通テスト得点率」と「ストレート合格率」の重要性
  • 同じ偏差値帯でも合格率が大きく開く具体的な大学名と数字
  • 河合塾とBenesse、方式別ランクと学部学科ランクの違いの読み解き方
  • 受験生・保護者が大学選びで最初に見るべき数字の優先順位

国公立歯学部 偏差値・共通テスト得点率ランキング2027

まずは結論からお伝えします。国公立歯学部は全国に12校あり、偏差値帯は河合塾の方式別偏差値で55.0〜60.0、共通テスト得点率は70〜75%に集中しています。私立に比べて校数が少なく、難易度の幅も狭いのが特徴です。

下の表は、河合塾2027年度の方式別偏差値(一般選抜・前期日程ベース)の降順で並べています。

※ 偏差値・共通テスト得点率は河合塾「Kei-Net」2027年度入試難易予想(一般選抜前期)の値です。

大学名所在地河合塾 方式別偏差値(2027)共通テスト得点率(2027前期)ストレート合格率 3回平均(116〜118回)
東京科学大学東京60.075%76.5%
大阪大学大阪60.075%71.1%
東北大学宮城60.073%70.0%
北海道大学北海道57.574%84.1%
九州大学福岡57.573%57.0%
岡山大学岡山57.573%82.7%
広島大学広島57.573%72.3%
鹿児島大学鹿児島57.572%81.8%
新潟大学新潟55.072%80.0%
徳島大学徳島55.072%62.5%
長崎大学長崎55.070%76.0%
九州歯科大学(公立)福岡55.070%73.7%

※ 東京科学大学は、2024年10月に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合して誕生した国立大学です(歯学部は旧・東京医科歯科大学から継承)。

最上位は東京科学大学(2024年10月に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合して誕生)で、方式別偏差値60.0・共通テスト得点率75%です。これに大阪大学・東北大学が並びます。一方で最も入りやすい層でも方式別偏差値55.0・共通テスト得点率70%は必要で、国公立を狙うなら共通テストで7割以上を安定して取れる学力が前提になります。

 国公立は偏差値の幅が狭い——共テ得点率と「配点比率」を併せて見る

国公立歯学部は、河合塾の方式別偏差値が55.0〜60.0の3段階に固まっており、偏差値だけでは各校の難易度差がつかみにくいのが実情です。そこで、70〜75%まで細かく分かれる共通テスト得点率を併せて見ると、各校の位置がつかみやすくなります。

ただし、国公立の合否は共通テストだけで決まるわけではありません。前期日程は共通テストと個別学力検査(2次試験)の両方が課され、その配点比率は大学で大きく異なります。たとえば東京科学大学は個別試験の配点が共通テストの約2倍と2次重視、長崎大学は共通テスト:2次がおよそ7:3と共通テスト重視、徳島大学はほぼ半々です。最上位の東京科学大学のように2次重視の大学では、むしろ個別試験(偏差値が示す力)が合否を左右します。

志望校選びでは、共通テスト得点率(おおむね7割以上、上位校は7割台半ば=75%前後)を目安にしつつ、必ず各大学の配点比率を確認し、共通テストと2次の両方で戦略を立てることが大切です。


私立歯学部 偏差値・共通テスト得点率ランキング2027

次に私立歯学部17校です。私立は校数が多く、難易度の幅が国公立よりずっと広いのが特徴です。河合塾の方式別偏差値は最上位の55.0からボーダーフリー(BF)まで分布し、共通テスト得点率も41〜77%と大きく開いています。

下の表も、河合塾2027年度の方式別偏差値(代表的な一般方式のボーダー)の降順で並べています。

※ 河合塾の方式別偏差値・共通テスト得点率は2027年度の値です(執筆時点でBenesseの2027年度版が未公開のため)。年度が異なる点にご注意ください。

大学名所在地河合塾 方式別偏差値(2027)共通テスト得点率(2027)Benesse(2026参考)ストレート合格率 3回平均(116〜118回)
昭和医科大学歯学部神奈川55.077%5970.6%
東京歯科大学東京55.070%5971.9%
日本大学歯学部東京50.076%5544.3%
大阪歯科大学大阪50.077%5347.1%
日本歯科大学生命歯学部(東京)東京45.070%5551.4%
朝日大学歯学部岐阜45.068%4742.1%
日本歯科大学新潟生命歯学部新潟42.568%4832.9%
明海大学歯学部埼玉42.566%4938.3%
岩手医科大学歯学部岩手40.048%4734.1%
愛知学院大学歯学部愛知37.549%4952.1%
鶴見大学歯学部神奈川37.547%4729.5%
北海道医療大学歯学部北海道37.542%4744.3%
日本大学松戸歯学部千葉35.043%5142.3%
神奈川歯科大学神奈川35.055%4736.2%
松本歯科大学長野35.041%4730.1%
福岡歯科大学福岡35.060%4742.3%
奥羽大学歯学部福島BF4748.5%

表の注釈

  • ストレート合格率は第116〜118回の3回平均で、各大学の入学者数を分母とした修業年限内合格率です。
  • 私立15大学平均(東京歯科大学・昭和医科大学を除く)は後述のH2-7で主軸として扱います。私立内の順位は、東京歯科・昭和医科を含む私立17大学中で表記します。
  • 方式別偏差値は代表的な一般方式のボーダーラインです(大学により全学部日程・共通テスト併用などで数値が異なります)。
  • 複数方式がある大学は、一般選抜の代表的な方式または共通テスト利用方式の代表値を掲載しています。方式により数値が異なる場合があります(例:大阪歯科大学は河合塾Kei-Net上、共通テスト得点率74〜80%・偏差値50.0〜52.5の幅があります)。

私立の最上位は昭和医科大学と東京歯科大学で、ともに方式別偏差値55.0です。共通テスト得点率は昭和医科77%・東京歯科70%と差があります。この2校は私立歯学部の中で別格の難易度で、ストレート合格率も70%台と国公立上位校に匹敵します。

一方、方式別偏差値35.0帯やBFの大学は、入試の難易度だけ見れば入りやすい層に位置します。しかし、入りやすさと卒業・国家試験合格のしやすさは別問題です。この点は本記事で詳しく掘り下げます。

方式別偏差値「BF」とは何か(奥羽大学)

表の中で奥羽大学歯学部だけが「BF(ボーダーフリー)」と表記されています。BFとは、河合塾の模試データ上、合格者と不合格者の偏差値分布が重ならず、合格可能性50%のボーダーラインを統計的に設定できない状態を指します。

ここで誤解してはいけないのは、BF=「誰でも受かる」「学力が不要」という意味ではない、という点です。あくまで模試データ上でボーダーが引けないというだけで、入学後に求められる学習量は他校と変わりません。


「同じ偏差値35帯」なのに共通テスト得点率に最大19ptの差がある理由

ここからが本記事の目玉です。河合塾の方式別偏差値が同じ35.0の大学を4校並べてみると、共通テスト得点率には驚くほどの差があります。

大学名河合塾 方式別偏差値(2027)共通テスト得点率(2027)
福岡歯科大学35.060%
神奈川歯科大学35.055%
日本大学松戸歯学部35.043%
松本歯科大学35.041%

同じ方式別偏差値35.0でありながら、共通テスト得点率は福岡歯科60%に対し松本歯科41%。その差は19ポイントにもなります。偏差値という1つの数字だけを見ていたら、この4校は「同じ難易度」に見えてしまいます。

偏差値と共通テスト得点率は「別々の入試方式」のものさし

なぜこんな差が生まれるのか。理由は、偏差値と共通テスト得点率が、そもそも別々の入試方式のボーダーラインを、別々のものさしで示した数字だからです。河合塾は、入試方式に応じてボーダーラインを次のように使い分けています。

  • 偏差値(方式別ランク)=一般選抜(大学独自の個別試験)のボーダー。その方式で合格可能性50%となる、河合塾全統模試の偏差値です。
  • 共通テスト得点率=共通テスト利用方式のボーダー。その方式で合格可能性50%となる、共通テストの得点率です。

同じ大学でも、一般選抜と共通テスト利用はまったく別の入試方式です。受験する人の層も、定員も、倍率も違います。偏差値35.0という数字は「一般選抜(個別試験)の難易度」、共通テスト得点率60%という数字は「共通テスト利用方式の難易度」を表しており、最初から別の方式の話をしているのです。

では、なぜ同じ偏差値でも共通テスト得点率がここまで違うのか。共通テスト利用方式は、その大学を第一志望にする受験生だけでなく、より上位の大学(難関私立や国公立)を本命にする受験生が「滑り止め」として全国から出願してきます。共通テストの得点だけで合否が決まる手軽さもあり、併願先として人気の大学ほど、合格者の共通テスト得点率=ボーダーが高めに出やすくなります。同じ偏差値35.0でも福岡歯科60%・松本歯科41%と差がつくのは、こうした共通テスト利用方式ごとの受験者層・倍率・定員の違いによるところが大きいと考えられます。

一般選抜の偏差値と共通テスト利用の得点率は、単純に換算できる関係ではありません。だからこそ、自分が実際に出願する方式に合わせて、偏差値と共通テスト得点率の両方を確認することが大切です。

共通テスト利用は60%前後が一つの目安

共通テスト利用方式で比較的余裕を持って出願戦略を立てるなら、得点率60%前後が一つの目安になります。ただし、私立歯学部全体では共通テスト得点率が41〜77%と幅広く、大学・方式によってボーダーは大きく異なるため、最終的には各方式の最新値を必ず確認してください。今回の35.0帯では福岡歯科が60%でこのラインに乗っています。一方で41〜43%の大学は、共通テストで5割を切っても合格の可能性が残るため、共通テスト利用での出願ハードルが相対的に低いと読めます。

ただし、ここで立ち止まって考えてほしいことがあります。入りやすさ(共通テスト得点率の低さ)は、卒業のしやすさを保証しません。むしろ、基礎学力を幅広く固めないまま入学すると、入学後の膨大な専門科目についていくのが難しくなり、留年のリスクが高まる可能性があります。この「入口の易しさ」と「出口の厳しさ」の関係こそ、後述で扱うストレート合格率の話につながります。

※ ここで挙げた数字は、あくまで偏差値・共通テスト得点率という統計的な指標の比較です。実際に入学後どれだけ伸びるかは、本人の学習習慣と努力で大きく変わります。共通テスト得点率が低い大学を選んだから留年する、という単純な話ではありません。最終的な成果を最も左右するのは、入学してからの日々の積み重ねです。


河合塾の「方式別ランク」と「学部学科ランク」は何が違うのか

河合塾の偏差値には、実は2種類あります。「方式別ランク」と「学部学科ランク」です。本記事では方式別ランクを主軸に使っていますが、その理由を説明します。

  • 方式別ランク:入試方式(一般選抜・全学部日程・共通テスト併用など)ごとに細かく設定された偏差値。受験生が実際に出願する方式の難易度を直接表します。
  • 学部学科ランク:その学部・学科を代表する1つの偏差値。複数方式を集約した「看板の数字」です。

両者は一致する大学も多いのですが、ずれる大学もあります。具体例を見てみましょう。

大学名方式別偏差値(2027)学部学科偏差値(2027)
福岡歯科大学35.037.5
大阪歯科大学50.045.0
新潟大学55.060.0

福岡歯科大学は方式別35.0に対し学部学科37.5、大阪歯科大学は方式別50.0に対し学部学科45.0と、5.0近いずれがあります。新潟大学のように学部学科ランクの方が高く出る大学もあります。

本記事が方式別ランクを主軸にする理由

なぜ本記事では方式別ランクを採用したのか。理由は、受験生が実際に挑む試験の難易度に最も近いからです。学部学科ランクは複数方式を集約した代表値なので、自分が出願する方式の実際のハードルとずれることがあります。

たとえば大阪歯科大学を一般選抜で受けるなら、現実に向き合う偏差値は方式別の50.0です。学部学科ランクの45.0を見て「思ったより入りやすい」と判断すると、実際の一般選抜の難易度を見誤る恐れがあります。志望校の難易度を正確につかむには、自分が出願する方式の偏差値(=方式別ランク)を見るのが鉄則です。


河合塾とBenesseで偏差値が異なる理由

歯学部の偏差値を調べていると、河合塾とBenesse(駿台・ベネッセ)で数字が違うことに気づくはずです。たとえば東京歯科大学は河合塾の方式別偏差値が55.0なのに対し、Benesseでは59と表記されています。どちらが正しいのか、と迷う方も多いでしょう。

結論から言えば、どちらも正しく、ただし算出の前提が違うだけです。

  • 母集団が違う:河合塾とBenesseでは模試を受ける受験生の層が異なります。母集団が違えば、同じ大学でも偏差値の出方は変わります。
  • 判定基準が違う:合格可能性50%のラインをどう引くか、刻み幅をどうするかが各社で異なります。一般に、河合塾は2.5刻み、Benesseは1刻みに近い設定です。
  • 数字の意味が違う:河合塾の55.0とBenesseの59は、別々のものさしで測った値です。河合塾どうし、Benesseどうしで比較するのが正しい使い方で、両社の数字を直接引き算してはいけません。

実用的には、自分が受けた模試の偏差値を、その模試のボーダー偏差値と照らし合わせるのが正しい使い方です。河合塾の全統模試を受けたなら、自分の河合塾偏差値を本記事の河合塾ボーダー偏差値と比べる。Benesse(駿台・ベネッセ)の模試を受けたなら、自分のBenesse偏差値をBenesseのボーダー偏差値と比べる。こうすれば、同じものさしの上で「合格まであと何ポイント必要か」を正確につかめます。

年度のズレにも注意

もう一つ注意したいのが年度です。本記事の河合塾の数字は2027年度入試向けの最新値ですが、Benesseは2026年度の値を参考として併記しています。Benesseの2027年度版が本記事執筆時点で未公開のためです。

そのため、本記事の私立ランキング表でBenesseの数字を見るときは、「1年前の参考値」として扱ってください。河合塾2027とBenesse2026を厳密に比べると、年度差の分だけ誤差が乗ります。あくまで河合塾は河合塾の中で、Benesseは参考程度に、という読み方が安全です。


偏差値だけで大学を選んではいけない本当の理由

ここまで偏差値と共通テスト得点率を見てきました。しかし、歯学部選びで本当に大切なのは入口の難易度ではなく、6年間で卒業して歯科医師になれるかどうかです。そして入口の偏差値と出口の実績は、しばしば逆転します。

最も象徴的な事例を挙げます。河合塾の方式別偏差値で比べると、日本大学歯学部(50.0)の方が愛知学院大学(37.5)よりもはるかに難しい大学です。共通テスト得点率でも日本大学76%・愛知学院49%と、入口の難易度は日本大学が大きく上回ります。

ところが、直近の第118回歯科医師国家試験のストレート合格率を見ると、結果は逆転します。

大学名方式別偏差値(2027)共通テスト得点率(2027)ストレート合格率(第118回)
日本大学歯学部50.076%45.3%
愛知学院大学37.549%63.9%

入口では日本大学が上なのに、出口(第118回ストレート合格率)では愛知学院が63.9%と日本大学の45.3%を上回りました。偏差値で12.5も低い大学の方が、6年で順当に卒業して国家試験に合格する割合が高い、という逆転が現実に起きているのです。

同じ偏差値37.5でもストレート合格率は約1.8倍ひらく

入口逆転だけではありません。同じ偏差値の大学どうしでも、出口は大きく開きます。河合塾の方式別偏差値37.5の3校を、ストレート合格率の3回平均(第116〜118回)で並べてみましょう。

大学名方式別偏差値(2027)ストレート合格率 3回平均(116〜118回)
愛知学院大学37.552.1%
北海道医療大学37.544.3%
鶴見大学37.529.5%

同じ方式別偏差値37.5でありながら、ストレート合格率は愛知学院52.1%に対し鶴見29.5%。その差は約1.8倍(52.1%÷29.5%≒1.77倍)です。入口の難易度はほぼ同じなのに、6年後に歯科医師になれる割合がこれほど違う、ということです。本記事のタイトルにある「偏差値が同じでもストレート合格率が約1.8倍ひらく」とは、まさにこの数字を指しています。

この事実が示すのは、偏差値という入口の数字だけで大学を選ぶと、肝心の「歯科医師になれるかどうか」という出口を見落とす、ということです。

※ ここで示したのは複数年の統計平均に基づく傾向です。特定の大学の教育を否定するものではありません。どの大学に入っても、入学後に正しい学習習慣を身につけて着実に積み重ねれば、ストレート合格は十分に狙えます。逆に偏差値の高い大学に入っても、学習を怠れば留年は起こります。最終的な合否を最も左右するのは、大学名ではなく本人の日々の取り組みです。

図で見る:偏差値とストレート合格率の関係

ここまでの話を1枚の図にまとめました。横軸が河合塾の方式別偏差値(2027年度)、縦軸がストレート合格率(第116〜118回の3年平均)です。

全体としては「偏差値が高いほどストレート合格率も高い」という右肩上がりの傾向はあります。ただし、その傾向を強く支えているのは、右上に位置する別格の2校(東京歯科・昭和医科)と、左上から右上に固まる国公立グループです。

注目してほしいのは、私立のかたまりです。別格の2校(東京歯科・昭和医科)を除いた私立15校のうち、ボーダーフリーで偏差値が数値化されない奥羽大学を除いた14校で見ると、偏差値とストレート合格率の相関は r=0.37 まで弱まります。これは、ストレート合格率のばらつきのうち、偏差値で説明できるのは全体の約13%にすぎない、という意味です。残りの約87%は、偏差値だけでは説明できない部分——大学の教育内容や進級・卒業判定の厳しさ、学生自身の学習環境など——が影響していると考えられます。

同じ偏差値帯でも縦に大きく散らばっていること、偏差値37.5の愛知学院(52.1%)が偏差値50.0の日本大学歯学部(44.3%)より上に位置していること。図を見れば、入口の偏差値だけでは出口を読みきれないことが、ひと目で分かります。


大学選びの新基準:ストレート合格率

ここまで繰り返し登場してきた「ストレート合格率」こそ、本ブログが大学選びの最重要指標として一貫して推している数字です。改めて定義を確認しましょう。

ストレート合格率(修業年限内合格率)とは、ある年度の入学者を分母とし、その人たちが留年も浪人もせず6年間で歯科医師国家試験に合格した割合です。「入学した人のうち、何割が予定どおり6年で歯科医師になれたか」を直接表します。受験生・保護者にとって、これ以上に実感に近い指標はありません。

下の表は、私立歯学部17校のストレート合格率3回平均(第116〜118回)を、降順で並べたものです。

私立内順位(17校中)大学名ストレート合格率 3回平均(116〜118回)
1位東京歯科大学71.9%
2位昭和医科大学70.6%
3位愛知学院大学52.1%
4位日本歯科大学(東京)51.4%
5位奥羽大学48.5%
6位大阪歯科大学47.1%
7位日本大学歯学部44.3%
7位北海道医療大学44.3%
9位日本大学松戸歯学部42.3%
9位福岡歯科大学42.3%
11位朝日大学42.1%
12位明海大学38.3%
13位神奈川歯科大学36.2%
14位岩手医科大学34.1%
15位日本歯科大学(新潟)32.9%
16位松本歯科大学30.1%
17位鶴見大学29.5%

私立15大学平均(東京歯科大学・昭和医科大学を除く15校)=41.0%です。この平均は、突出して高い上位2校(東京歯科・昭和医科)を除くことで、私立歯学部の実態に近い「中間水準」を示しています。自分の志望校がこの41.0%より上か下かを見ると、私立全体の中での位置がつかめます。

※ 本記事の私立15大学平均41.0%は第116〜118回の3回平均値です。当サイトの他記事で用いる第118回単年値(私立15校平均42.13%)とは算出基準が異なります。

なお、表の順位は東京歯科・昭和医科を含む私立17大学中の順位で表記しています。上位2校を含めた全体の中での立ち位置と、上位2校を除いた15大学平均、両方の視点で見ることをおすすめします。

なぜ単年でなく3年平均で見るのか

ストレート合格率は、単年で見ると意外に大きく揺れます。たとえば愛知学院大学は第116回44.4%・第117回47.9%・第118回63.9%と、3年間で約20ポイントも動いています。単年の数字だけを見て「この大学は良い/悪い」と判断すると、たまたまその年だけ良かった(悪かった)数字に振り回されてしまいます。

そこで本記事では、直近3回(第116〜118回)の平均を採用しています。複数年でならすことで、一時的なブレを抑え、その大学の実力に近い水準を読み取れます。志望校を比較するときは、必ず複数年でならした数字を見るようにしてください。

なぜ15大学平均(東京歯科・昭和医科を除く)を主軸にするのか

私立17校の平均をそのまま計算すると、東京歯科・昭和医科の2校が突出して高いため、平均値が実態より高めに引き上げられてしまいます。この2校は別格で、多くの受験生にとっての現実的な選択肢とは難易度が異なります。

そこで本ブログでは、上位2校を除いた15大学平均(41.0%)を「ノイズを取り除いた実態水準」として主軸に据えています。この41.0%を基準線にすると、自分の志望校が私立歯学部の現実の中でどのあたりにいるかが、より正確に見えてきます。

留年1年の重み:偏差値の数字に表れないコスト

ストレート合格率を重視すべき理由は、合格率だけの問題ではありません。留年には大きな経済的負担が伴うからです。これは受験生本人だけでなく、学費を負担する保護者にとっても重大な論点です。

私立歯学部の6年間の学費は、大学によって約2,000万円〜4,000万円と幅があります。これだけでも大きな金額ですが、もし1年留年すると、さらに次のような追加コストが発生します。本ブログでは、留年1年の損失を独自に次のように試算しています。

  • 追加の学費:約500万円(全大学共通の固定値として試算)
  • 追加の生活費:約200万円(1年分の生活費)
  • 機会損失:約800万円(歯科医師としてのキャリアが1年遅れることで失われる、キャリア終盤の1年分の年収相当)
  • 合計:約1,500万円

つまり、留年1年は約1,500万円の損失に相当します(これは本ブログ独自の試算です)。偏差値が同じでも、ストレート合格率が低い大学を選んでしまうと、こうした追加コストを背負うリスクが統計的に高まる、ということです。入口の偏差値だけで大学を選ぶことが「実は危険」だと冒頭で述べたのは、この経済的なリアリティも含めての話です。

なお、ストレート合格率が低いことは、退学・留年・国家試験での苦戦など複数の要因が重なった結果です。「1−ストレート合格率」がそのまま「将来浪人する確率」になるわけではありません。ただ、ストレートで合格できなければ、卒業や国家試験の段階でつまずき、卒業後に既卒受験者として国家試験に挑む可能性が高まる、という方向性は読み取れます。だからこそ、入口の段階でストレート合格率の高い大学を選んでおくことが、結果的にリスクを下げる一手になるのです。

各大学の留年率や学費の詳細は、以下の記事でさらに深掘りしています。


新卒合格率とストレート合格率は別物

歯学部の合格率を語るとき、もう一つよく登場するのが「新卒合格率」です。各大学が公式サイトで大きく掲げるのは、たいていこの新卒合格率です。しかし、ストレート合格率と新卒合格率は、分母がまったく違う別物です。混同すると大学選びを誤ります。

  • 新卒合格率の分母=その年の新卒受験者数:その年に国家試験を受けた新卒者のうち、合格した割合です。
  • ストレート合格率の分母=入学者数:入学した人のうち、6年間で合格した割合です。

この違いがなぜ重要なのか。新卒合格率は「実際に受験した新卒者」だけを分母にするため、国家試験に受かりそうにない学生を卒業時点で絞り込めば、見かけ上の数字を高く保てるという構造があるからです。卒業を厳しくして受験者を選抜すれば、新卒受験者数が減り、合格率(分子÷分母)は上がります。

一方、ストレート合格率は入学者全員を分母にするため、こうした卒業段階の絞り込みの影響を受けません。「入学した人のうち何割が6年で歯科医師になれたか」という、入学する側にとって最も知りたい現実をそのまま映します。

新卒合格率100%でもストレート合格率は40%台、ということが現実に起きている

具体例で見てみましょう。たとえば大阪歯科大学は、第118回の新卒合格率が100.0%(新卒受験60人・全員合格)である一方、入学者を分母にしたストレート合格率は46.9%です。新卒で受験した人は全員が合格していても、入学者全体で見れば、6年間で順当に歯科医師国家試験まで到達できたのは半数以下、という構造がここにあります。公式サイトに並ぶ「新卒合格率100%」という数字だけを見ていると、この入学者ベースの現実は見えてきません。

なお、これは指標の仕組みの違いを説明するための例であり、特定の大学の教育の質を評価・否定するものではありません。

だからこそ、大学の公式サイトに並ぶ新卒合格率の数字をそのまま信じてはいけません。受験生・保護者が見るべきは、入学者を分母としたストレート合格率です。この点を詳しく解説した記事も用意しています。


まとめ:受験生が最初に見るべき数字

ここまで、歯学部の偏差値・共通テスト得点率・ストレート合格率を横並びで見てきました。最後に、大学選びで見るべき数字の優先順位を3ステップに整理します。

  1. 偏差値(方式別ランク)で入口の難易度をつかむ:自分が出願する方式の偏差値を見る。河合塾とBenesseは別々のものさしなので混同しない。
  2. 共通テスト得点率で基礎学力の必要水準を確認する:同じ偏差値帯でも共通テスト得点率には最大19ポイントの差がある。共通テスト利用なら60%前後が一つの目安(大学・方式で大きく異なるため最新値を確認)。
  3. ストレート合格率で出口を確かめる:入学者を分母とした6年での合格率こそが、歯科医師になれる確率に最も近い。私立15大学平均(東京歯科大学・昭和医科大学を除く)の41.0%を基準線にする。複数年平均で見る。

本記事で見たとおり、同じ偏差値37.5でもストレート合格率は約1.8倍ひらき、入口の偏差値が高い大学の方が出口の合格率は低い、という逆転も現実に起きています。偏差値という入口の数字だけで志望校を決めるのは、歯科医師になるという最終ゴールから逆算すると、判断材料が足りないのです。

ただし、最後にもう一度強調しておきたいことがあります。どの大学に入っても、ストレート合格は十分に狙えます。ここで示したストレート合格率は、あくまで統計的な傾向です。低学年のうちから正しい学習習慣を身につけ、日々の積み重ねを怠らず着実に進級していけば、留年せず6年で歯科医師国家試験に合格する道は、すべての大学の学生に開かれています。大学名や偏差値はスタートラインにすぎません。最終的に歯科医師になれるかどうかを決めるのは、入学してからのあなた自身の努力です。

入口の偏差値・共通テスト得点率と、出口のストレート合格率。この両方を見て志望校を選ぶことが、6年後に「歯科医師になる」というゴールへの一番確実な近道になります。


出典・データについて

  • 偏差値・共通テスト得点率:河合塾「Kei-Net」2027年度入試難易予想(一般選抜・方式別ランク)。Benesseの数値は2026年度の参考値(2027年度版未公開のため)。
  • ストレート合格率(修業年限内合格率):文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果」に基づく修業年限内合格率(第116〜118回)の3回平均。各大学の入学者数を分母とした、6年間で歯科医師国家試験に合格した割合です。
  • 歯科医師国家試験の合格率(新卒合格率など):厚生労働省「歯科医師国家試験の学校別合格者状況」。
  • 入学者数・修学状況:文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果」および各大学公表値。
  • 偏差値・共通テスト得点率は2027年度入試向けの予想値であり、今後の模試結果等により変動する可能性があります。最新情報は河合塾・各大学公式サイトで必ずご確認ください。
  • 学費・特待生制度の金額は変動します。最新情報は各大学公式サイトでご確認ください。

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歯学部受験情報館を運営しているシカラボです。 教育機関で10年以上、歯学部に関するデータを扱ってきました。 入学者ベースのストレート合格率・留年率・退学率など、見落とされやすい指標を、 厚生労働省・文部科学省・各大学公式サイトの一次資料から継続的に分析しています。
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