退学率・脱落分析

歯学部に入学しても歯科医になれない?退学・留年・国試の壁を私立17校で比較

kameman

「歯学部に合格した時点で、歯科医師になる未来はほぼ確定する」——保護者や受験生の多くがそう信じています。しかし、私立歯学部17校の公的データを丁寧に集計すると、その前提は大学によって大きく揺らぎます。最も低水準の大学では、入学者の3人に1人しか6年で歯科医師にたどり着けていない計算になります。残りの2人はどこに消えるのか。途中で退学する人、低学年から留年で足止めされる人、卒業はできても国家試験で詰まり続ける人——進路は3つに分かれます。

本記事では、この「歯科医師になれないリスク」を退学率・全体留年率・既卒滞留・ストレート合格率の4つの指標で多角的に検証します。私立17校のうち、特にリスクが高い2校(松本歯科大学・鶴見大学)を名指しで提示しつつ、大学選びで何を主軸に据えるべきかを論証していきます。お子さんの志望校が安全圏に入っているかどうか、保護者の方も最終確認の資料として読んでいただけたら幸いです。

本記事の要点(30秒まとめ)

  • 歯科医師になれないルートは「退学・留年・既卒滞留」の3つ。総合指標がストレート合格率
  • 退学率・全体留年率はストレート合格率と強い負の相関(r=−0.63/−0.70)。一本の数字に収束する
  • 既卒滞留はストレート合格率と相関しない別軸リスク。ただしストレート合格できれば結果として詰まる確率も下がる
  • 結論:大学選びはストレート合格率を主軸に。既卒滞留は補完的に確認する
  • 特にリスクが高いのは松本歯科大学・鶴見大学。どちらも複数指標で17校中トップクラスの高リスク水準

目次

  1. なぜ「入学者の生涯合格率」を一発で出せないのか
  2. 歯科医師になれない3つのルートと1つの総合指標
  3. 退学率の実態(R4〜R6平均)
  4. 全体留年率の実態(R7・全学年)
  5. 既卒滞留・詰まっている人数の実態(第119回スナップショット)
  6. ストレート合格率ランキング(第116〜118回 3年平均)
  7. 4指標の相関分析 — 退学・留年はストレート合格率で読める
  8. メカニズム分類 — 低リスク〜全複合〜③グループ
  9. 大学選びはストレート合格率を主軸に — 検証結論
  10. リスクが特に高い2校(松本歯科大学・鶴見大学)
  11. まとめ — 大学選びは入り口、本当の勝負は入学後の毎日

なぜ「入学者の生涯合格率」を一発で出せないのか

本来であれば、「ある大学に入学した100人のうち、最終的に何人が歯科医師になれたか」を一発で示せる指標があれば話は簡単です。入学者数と国家試験合格者数を比べれば計算できそうに見えるからです。

ところが、これが思いのほか難しい。理由は学士編入者の存在です。厚生労働省が公表する歯科医師国家試験の合格者数には学士編入で入学した人も含まれますが、文部科学省が公表する各大学の入学者数には学士編入者が原則として計上されません。分母と分子の母集団がそろわないため、純粋な「入学者の生涯合格率」を一本の数字で出すことは現状できないのです。

そこで本記事では方針を転換し、「歯科医師になれないリスク」を4つの角度から多角的に検証します。退学・留年・既卒滞留の3ルートと、それらの結果として表れる総合指標であるストレート合格率。それぞれを順番に見ていけば、リスクの全体像が立体的に浮かび上がります。


歯科医師になれない3つのルートと1つの総合指標

歯科医師になれないルートは大きく3つに分かれます。さらに、それら3ルートの結果を集約した1つの総合指標があります。

歯科医師になれない3つのルート

  1. ①退学(途中で脱落):在籍中に大学を離れる学生がどれくらいいるか。本記事ではR4〜R6の3か年平均の退学等割合を使用します。
  2. ②留年・休学(途中で足止め):在籍学生総数に占める留年・休学者の割合(令和7年度・1年次〜6年次の全学年合算)を使用します。6年次だけの留年率ではなく、低学年も含めた全体像を捉える指標です。
  3. ③既卒滞留(卒業後に国家試験で詰まる):卒業した後にきそつ受験者として不合格になり続けている人数。第119回(2026年3月発表)のスナップショットで集計しています。

総合指標:ストレート合格率(修業年限内合格率)

ストレート合格率(正式名称:修業年限内合格率)は、入学した年から最低修業年限の6年で歯科医師国家試験に合格した人の割合です。3ルートのどれかに引っかかれば、ストレート合格はできません。つまりこの数字は、退学・留年・既卒滞留の結果が最終的に集約された総合指標と言えます。

本記事ではストレート合格率を単年ではなく第116〜118回の3か年単純平均で扱います。単年だと上振れ・下振れが大きく実力を見誤るため、3年分を平均してノイズを抑える方針です。

指標定義使用データ
①退学率退学等を理由に在籍を離れた割合R4〜R6 3か年平均(文科省)
②全体留年率1〜6年次の在籍学生総数に占める留年・休学者の割合令和7年度(文科省)
③詰まっている人数新卒不合格+既卒不合格の合計(第119回)第119回(厚労省)
④ストレート合格率入学コホートから6年で国試合格した割合第116〜118回 3年平均(文科省)

退学率の実態(R4〜R6平均)

まず1つ目のルート、退学率を見ていきます。R4〜R6の3か年平均で、私立17校の平均値は4.4%。ですがランキングを見ると、上位3校が際立って高い数字を示します。

退学率ランキング(私立17校・R4〜R6平均)

順位大学名退学率
1鶴見大学10.3%
2奥羽大学8.3%
3松本歯科大学8.2%
4北海道医療大学5.3%
5日本歯科大学(新潟)4.8%
6岩手医科大学4.7%
7明海大学4.5%
8日本歯科大学4.1%
9福岡歯科大学3.8%
10朝日大学3.6%
11日本大学3.2%
12日本大学(松戸)3.0%
12神奈川歯科大学3.0%
14大阪歯科大学2.4%
15愛知学院大学2.2%
16東京歯科大学1.5%
17昭和医科大学 ※11.1%

※1 昭和医科大学は旧昭和大学(2025年4月改称)。本記事では新名称で統一表記します。

鶴見大学が10.3%、奥羽大学が8.3%、松本歯科大学が8.2%。6年間に在籍した学生のおよそ1割が退学等で離籍する計算です。一方、昭和医科大学は1.1%、東京歯科大学は1.5%で、ほとんど退学が発生していません。退学率5%超を「脱落リスクが高い」と判定する閾値とすると、鶴見・奥羽・北海道医療・松本歯科の4校が該当します。


全体留年率の実態(R7・全学年)

2つ目のルートは留年です。ここで注意したいのが、6年次の留年率だけ見ても実態は分からないということ。低学年でも留年や休学は発生しており、6年次留年率はそれを取りこぼします。そのため本記事では、文部科学省が公表する「在籍学生総数に占める留年・休学者の割合」(令和7年度・1年次から6年次までの全学年合算)を採用します。

なぜ全体留年率なのか

6年次留年率は「卒業試験の壁の高さ」を測るのには有効ですが、低学年で足止めされている学生数を反映しません。歯学部の特性上、留年は1〜3年次の基礎科目段階で起きやすく、6年次だけ見ると本当の留年圧力が見えなくなります。1〜6年次の全在籍者を分母にした全体留年率を使うことで、留年・休学の実態を漏れなく捉えます。

全体留年率ランキング(私立17校・R7)

順位大学名全体留年率
1松本歯科大学41.7%
2明海大学38.6%
3奥羽大学34.9%
4岩手医科大学32.1%
5鶴見大学31.2%
6日本大学30.8%
7神奈川歯科大学30.6%
8北海道医療大学29.5%
9日本歯科大学28.0%
10日本歯科大学(新潟)27.7%
11日本大学(松戸)27.1%
12愛知学院大学26.1%
13福岡歯科大学24.6%
14朝日大学21.6%
15東京歯科大学15.9%
16大阪歯科大学14.5%
17昭和医科大学14.4%

17校の中央値は28.0%(日本歯科大学)。最高値の松本歯科大学41.7%は、在籍学生の4割以上が留年または休学していることを意味します。続く明海大学38.6%、奥羽大学34.9%も高水準です。

一方、昭和医科大学14.4%、大阪歯科大学14.5%、東京歯科大学15.9%の3校は留年圧力がきわめて低く、6年でストレートに進級できる学生の割合が高いことが読み取れます。


既卒滞留・詰まっている人数の実態(第119回)

3つ目のルートが、本記事のなかでも最もクセのある指標です。卒業はできたものの、国家試験で詰まり続けている学生の数。第119回歯科医師国家試験(2026年3月発表)のスナップショットで、各大学別に新卒不合格者と既卒不合格者を合計して集計しました。

詰まっている人数ランキング(私立17校・第119回)

順位大学名新卒不合格既卒不合格合計
1日本大学(松戸)3764101人
2福岡歯科大学1981100人
3朝日大学198099人
4日本大学434689人
5奥羽大学205171人
6大阪歯科大学06868人 ※特殊
7日本歯科大学372057人
8愛知学院大学123749人
9鶴見大学172946人
10岩手医科大学162642人
11明海大学73138人
12神奈川歯科大学151530人
13松本歯科大学121426人
14北海道医療大学61319人
15日本歯科大学(新潟)7512人
16昭和医科大学5510人
17東京歯科大学448人

日本大学(松戸)101人、福岡歯科大学100人、朝日大学99人。この3校では、新卒と既卒を合わせた不合格者数が100人前後に達しています。1大学1学年あたりの定員が80〜130人程度であることを考えると、ほぼ1学年分の人数が国家試験で詰まり続けていることになります。

大阪歯科大学の特殊なケース

大阪歯科大学は、第119回の新卒受験者57人が全員合格しています。新卒合格率だけを見れば完璧。しかし、既卒で不合格となった人が68人存在します。過去の卒業生が国家試験で詰まり続けている構造があるということです。

さらに大阪歯科大学が公表している卒業者数は103人。第119回の新卒受験者は57人ですから、差し引き46人が、卒業しながら第119回を受験していない計算になります。既卒不合格68人と合わせると、大阪歯科大学で「卒業後に詰まっている学生数」は実質的に114人に達することになります。新卒合格率100%という見出しだけでは捉えきれない構造があり、この点は別記事の新卒合格率100%のからくりで詳しく解説しています。


ストレート合格率ランキング(第116〜118回 3年平均)

そして総合指標がストレート合格率です。入学した年から6年以内に国家試験に合格した人の割合。退学・留年・既卒滞留の結果が最終的に集約された数字で、大学選びの最終判断軸として最も重要な指標です。

3か年平均で見る理由

ストレート合格率は単年で大きく上下します。一例として朝日大学は第116回50.8%・第117回29.7%・第118回45.7%と、わずか2年で20pt以上の振れ幅があります。単年でランキングを作ると、一時的なノイズに引きずられて大学の実力を見誤ります。そこで本記事では第116〜118回(H29〜H31入学コホート)の3か年平均を使用します。

ストレート合格率ランキング(私立17校・第116〜118回 3年平均)

順位大学名3年平均第116回第117回第118回
1東京歯科大学71.9%69.5%71.1%75.0%
2昭和医科大学70.6%67.0%72.9%71.9%
3愛知学院大学52.1%44.4%47.9%63.9%
4日本歯科大学51.4%51.6%50.8%51.9%
5奥羽大学48.5%49.0%51.0%45.5%
6大阪歯科大学47.1%46.1%48.4%46.9%
7北海道医療大学44.3%50.9%38.6%43.4%
7日本大学44.3%44.5%43.0%45.3%
9福岡歯科大学42.3%33.3%46.4%47.1%
9日本大学(松戸)42.3%37.0%51.3%38.6%
11朝日大学42.1%50.8%29.7%45.7%
12明海大学38.3%38.3%39.2%37.5%
13神奈川歯科大学36.2%32.5%35.3%40.7%
14岩手医科大学34.1%33.3%37.0%32.0%
15日本歯科大学(新潟)32.9%30.6%32.8%35.4%
16松本歯科大学30.1%37.5%28.1%24.7%
17鶴見大学29.5%31.3%23.9%33.3%

突出しているのは東京歯科大学71.9%・昭和医科大学70.6%の2校。続いて愛知学院大学52.1%、日本歯科大学51.4%が高水準です。

一方、最下位グループは鶴見大学29.5%・松本歯科大学30.1%・日本歯科大学(新潟)32.9%。冒頭の「3人に1人しか歯科医師になれない大学」とは、この最下位グループの数字を指しています。

本サイトの比較基準である私立15大学の3年平均は41.0%(東京歯科・昭和医科を除く)。突出した上位2校を除いた残り15校では、入学者のおよそ4割しか6年でゴールにたどり着けない計算です。

算出方法に関する注記: 本記事のストレート合格率3年平均は、各年の合格率(%)を単純算術平均して算出しています。文部科学省が公表するグラフ値は加重平均(3年通算の合格者÷3年通算の入学者)で計算されており、当方の単純平均と最大0.3pt程度の差が生じますが、17校の順位は完全に一致します(鶴見29.5%が最下位、松本歯科30.1%が16位、私立15校平均41.0%等の構造は不変)。

個別大学のストレート合格率推移や定義の詳細は、私立歯学部17校 修学状況まとめの親記事で解説しています。


4指標の相関分析 — 退学・留年はストレート合格率で読める

ここまで4つの指標を見てきました。次は、それぞれの指標がどう関係しているかを統計的に確かめてみます。私立17校のデータでピアソンの相関係数を算出した結果は次の通りです(有意水準:t検定 df=15、|t|>2.131でp<0.05)。

ストレート合格率と各リスク指標の相関

比較相関係数 r有意性解釈
ストレート合格率 vs 退学率−0.63有意中強度の負の相関
ストレート合格率 vs 全体留年率−0.70有意強い負の相関
ストレート合格率 vs 詰まり率 ※−0.31非有意弱い相関(実質無相関)

※ 詰まり率=(新卒不合格+既卒不合格の合計人数)÷新卒受験者数。「既卒不合格率」とは別の指標で、規模補正を施したものです。

退学率・全体留年率は「1本の数字に溶けている」

退学率(r=−0.63)と全体留年率(r=−0.70)はいずれも統計的に有意。退学が多い大学はストレート合格率が低く、留年が多い大学もストレート合格率が低いという強い相関が認められます。

これは重要な発見です。4つの角度から追いかけましたが、退学率と全体留年率の2指標は、ストレート合格率という1本の数字におおむね反映されているということです。ストレート合格率を見れば、その大学の退学・留年の厳しさが概ね把握できるという意味で、極めて使い勝手の良い指標なのです。

既卒滞留(詰まり率)だけは別軸

一方、詰まり率とストレート合格率の相関はr=−0.31で統計的に有意ではありません。ストレート合格率からは、その大学の既卒滞留の多さは読み取れないのです。

なぜか。理由は、既卒滞留が退学・留年とは別軸のリスクを示しているからです。詰まり率が高い大学を見てみましょう。日本大学(松戸)142.3%、福岡歯科大学147.1%、朝日大学110.0%、大阪歯科大学119.3%。これら4校はいずれも退学率や全体留年率が私立17校の平均より低めです。つまり、卒業の門は比較的緩い大学と言えます。にもかかわらず、卒業後の国家試験で詰まる学生が大量にいる。卒業の門は緩いが、国家試験で詰まる。この構造が、詰まり率の高い大学に共通しています。

既卒滞留は、卒業した後に歯科医師になれないリスクを、退学や留年とは独立した形で示している指標と言えます。


メカニズム分類 — 低リスク〜全複合〜③グループ

4指標の動きから、私立17校をいくつかのグループに整理できます。判定閾値は次の通りに設定しました。

  • ①退学型:退学率 > 5.0%(17校平均4.4%超)
  • ②留年型:全体留年率 > 28.0%(17校中央値超)
  • ③詰型:詰まり率 > 50%(新卒受験者数の半数超が国試で詰まっている状態)
分類該当校特徴
低リスク東京歯科・昭和医科・日本歯科・日本歯科(新潟)・愛知学院3指標とも閾値以下水準
②留年型明海・神奈川歯科留年圧力のみ高い
②③複合型日本大学・岩手医科留年+既卒滞留
③詰型日本大学(松戸)・朝日・大阪歯科・福岡歯科退学・留年は低めだが既卒滞留が大量
①②複合型北海道医療・松本歯科退学+留年
①②③全複合型奥羽・鶴見全3指標が閾値超え

注目すべき③グループ(参考情報)

本記事の動画版でも言及している通り、③グループ4校(日本大学松戸・朝日・大阪歯科・福岡歯科)は退学率も全体留年率も平均より低く、卒業まではしやすい大学と言えます。しかし卒業後の国家試験で詰まる学生が大量にいるという構造を持ちます。大学選びの主軸はストレート合格率ですが、③グループの存在は「卒業の門だけ見て国家試験のハードルを軽視してはいけない」ことを教えてくれます。

なお、愛知学院大学は詰まり率61.3%で機械的な閾値判定では③詰型に該当しますが、ストレート合格率は52.1%(3年平均で私立3位)と高い数字を示しており、本記事の主軸であるストレート合格率の観点では明らかに高水準の大学です。③型代表校の提示からは除外して低リスクグループに分類しています。

各大学の卒業試験の壁の高さや6年次留年率の詳細は、別記事の私立17校「卒業の壁」徹底比較で4タイプ分類しています。


大学選びはストレート合格率を主軸に — 検証結論

4つの角度から検証した結論を整理します。

大学選びはストレート合格率を主軸に据えるのが良い——これが今回の検証から導かれる答えです。

なぜストレート合格率なのか

ストレート合格率は、入学した年から6年で歯科医師になれた割合を示します。これが高いということは、つまり退学や留年で足止めを食う可能性が低いことも意味します。実際、相関分析の結果でも退学率・全体留年率はストレート合格率と統計的に有意な負の相関を示し、ストレート合格率を見れば①退学と②留年のリスクは概ね読み取れることが確認されました。

加えて、卒業後に既卒として詰まる可能性についても、ストレート合格率は手がかりになります。自分が6年でストレート合格できれば、結果として既卒滞留に流れる可能性も低くなるからです。ストレート合格率は「最短で歯科医師になれる確率」を示すと同時に、「結果として最終的に歯科医師になれる可能性」も間接的に反映する、極めて有意義な指標と言えます。

ただしここで一つ注意があります。「1−ストレート合格率」がそのまま「歯科医師になれない確率」と等号で結ばれるわけではありません。ストレート合格しなかった人の中には、1年留年してから国試にきそつ合格する人、休学を挟んで復帰する人、退学する人など複数のルートが含まれます。ストレート合格率が高い大学は「結果として既卒滞留も少なくなる傾向がある」という方向性の話であって、不合格イコール退学・既卒不合格という直接の等号ではないことは押さえておいてください。

既卒滞留は補完指標として確認する

既卒滞留はストック変数です。過去数年から十数年分の不合格者が積み上がった結果として現れる数字で、これから入学する人の運命を直接決めるものではありません。ストレート合格率は直近6年のフロー変数で、時間軸が根本的に違います。

もし既卒滞留が多くても、ストレート合格率が改善トレンドにある大学なら、それは過去の負債を消化中の状態です。今の教育・国家試験対策が改善されていれば、新規入学者は改善後の環境で6年間を過ごします。逆に、既卒滞留が少なくてもストレート合格率が低ければ、自分が将来の既卒プールに加わる可能性が高い。

大学選びはストレート合格率を主軸に。既卒滞留は「卒業の門は緩いが国家試験で詰まる」という別軸の構造を示す指標として、参考情報として確認しておく——これが本記事から提案する実践的なフレームです。


リスクが特に高い2校(松本歯科大学・鶴見大学)

ここまでの検証を踏まえ、入学者が歯科医師になれないリスクが特に高い2校を、データに基づいて名指しでご紹介します。松本歯科大学と鶴見大学の2校です。順位付けはせず、両校の指標を並べて提示します。

松本歯科大学・鶴見大学の4指標比較

指標松本歯科大学鶴見大学
ストレート合格率(3年平均)30.1%(17校中16位29.5%(17校中17位・最下位
退学率(R4〜R6平均)8.2%(17校中3位10.3%(17校中1位・最高
全体留年率(R7)41.7%(17校中1位・最高31.2%(17校中5位)
不合格者(新卒+既卒・第119回)26人46人
メカニズム分類①②複合型(退学+留年)①②③全複合型(退学+留年+既卒滞留)

松本歯科大学:①②複合型の代表

松本歯科大学はストレート合格率30.1%が私立17校で下から2番目の低さ。退学率8.2%は17校で3番目の高さで、全体留年率41.7%は17校で最も高い水準です。途中の脱落と途中の足止め、両方が多い「退学・留年複合型」の代表校と言えます。

鶴見大学:①②③全複合型の代表

鶴見大学はストレート合格率29.5%が私立17校で最も低く、退学率10.3%も17校で最も高い数字。全体留年率31.2%、不合格者46人も高水準で、途中で脱落、足止め、そして卒業後の国家試験滞留——3つすべてのリスクが揃った「全複合型」の代表校です。

この2校はいずれも退学率が17校で突出して高く、複数の指標で高リスク水準にあります。本記事の主張「大学選びはストレート合格率を重視する」という結論を、実例で裏付ける形と言えます。

大切なお話 — データは大学選びの一材料にすぎません

ここで一つ、お伝えしておきたいことがあります。これらはあくまで統計的にリスクを見ただけにすぎません。最終的に国家試験にストレート合格できるかどうかを決めるのは、入学後の日々の学習です。リスクが高いとされる大学でも、コツコツと知識を積み上げていけば、ストレート合格は十分に可能です。逆に、リスクが低い大学に入学できたとしても、学びを怠ればストレート合格は遠のいてしまいます。

松本歯科大学・鶴見大学に在籍中の学生さん、これから受験を検討する受験生・保護者の方にお伝えしたいのは、大学選びはあくまでスタート地点であって、本当の勝負は入学した後の毎日にあるということ。低学年から学習習慣を身につけ、知識を着実に積み上げていけば、どの大学にいてもストレート合格は十分に届く目標です。


まとめ — 大学選びは入り口、本当の勝負は入学後の毎日

本記事では、入学者が歯科医師になれないリスクを4軸で検証してきました。退学率・全体留年率・既卒滞留の3指標を追いかけた結論は、ストレート合格率という1本の数字に収束していたことが確認されました。

4つの結論

  1. 退学率(r=−0.63)と全体留年率(r=−0.70)はストレート合格率と統計的に有意な強い負の相関を示す。ストレート合格率を見れば①②リスクは概ね読める
  2. 既卒滞留(詰まり率)は別軸のストック変数。ストレート合格率と相関しないが、自分がストレート合格できれば結果として詰まる可能性も下がる
  3. 大学選びはストレート合格率を主軸に。既卒滞留は補完的な参考情報として確認する
  4. 特にリスクが高いのは松本歯科大学(①②複合型)と鶴見大学(①②③全複合型)。複数指標で17校中トップクラスの高リスク水準

保護者の方への補足 — 留年1年が招く経済的影響

本サイトの読者は45歳以上の保護者層が約8割を占めます。最後に、お子さんの大学選びに関わる保護者の方に向けて、経済的なリアリティを共有しておきます。

仮にお子さんが留年した場合、追加で発生するコストは1年あたりおおよそ次の通りです(私立歯学部の標準的な水準で試算)。

  • 学費1年分:500万円(本サイトの試算用統一値)
  • 生活費1年分:200万円
  • 機会損失(歯科医師としてキャリア終盤の1年分の年収が消える):800万円
  • 合計:1,500万円/1年留年あたり

ストレート合格率が低い大学を選ぶことは、入学時点で「1,500万円のリスクを抱える確率」を上げることに直結します。偏差値や知名度だけでなく、ストレート合格率という指標を必ず確認してください。それが、お子さんの未来と家計の両方を守る、最も実践的な判断軸になります。

最後にひとつ — 未来を決めるのは自分自身

どの大学に入学しても、未来を決めるのは自分自身です。低学年から学習習慣を身につけ、着実に進級していけば、ストレート合格は十分に可能です。

言葉にすればたったこれだけ。低学年から学習習慣を身につけ、知識を着実に積み上げる。ところが、これを本当にやり切れる人は限りなく少ない。だからこそ、これをやり切れば大丈夫なのです。データを正しく読み、入り口を慎重に選び、入学後の毎日を積み上げる——この3つが揃えば、歯科医師という未来は必ず手の届くところにあります。


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  • 本記事の動画版:歯科医になれないリスクが高い2校|私立歯学部17校データ徹底検証(2026-07-17公開)
  • 歯学部ストレート合格率 16年間の推移(私立17校)
  • 私立17校「卒業の壁」徹底比較(6/26公開)

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