広島大学の留年率・ストレート合格率・学費【最新データで総点検】【2026年8月更新】
広島大学に入学したら、6年で歯科医師になれる可能性はどのくらいあるのか。どの学年で留年しやすく、6年間でいくらかかるのか。本記事では、文部科学省「歯学部の修学状況等の調査」、厚生労働省の歯科医師国家試験結果、河合塾の偏差値データ、そして大学公式サイトの公表データを使って、パンフレットでは見えにくい「入学後の6年間」を総点検します。
先に結論をお伝えすると、広島大学でつまずきが集まるのは6年間の在学中ではなく、卒業したあとの国家試験です。結果が確定している平成30年度入学世代(第117回国試世代)を見ると、入学した53人のうち歯科医師になれなかったのは13人。そのうち6人(およそ半数)は、ストレート卒業したあとの国家試験の段階で届きませんでした。在学中の6年間で減ったのは7人だけです。
このため、ストレート卒業率は86.8%と高い一方、国家試験の合格まで含めたストレート合格率は75.5%まで下がります(同じ世代の数字で11.3ポイントの差)。文部科学省が毎年公表するストレート合格率の直近3年平均は72.3%で、国公立12校中8位の中位です。
広島大学のストレート合格率は、年による振れも小さめです。単年で見ても第116回8位・第117回5位タイ・第118回9位と、3年平均の8位とほぼ同じ水準で安定しています。当ブログが前回扱った新潟大学が同じ3回で1位相当・11位相当・2位相当と大きく振れていたのとは対照的です。
なお、進級・卒業の詳細データは令和6年5月1日時点が最新で、卒業・国家試験まで確定している世代は平成30年度入学にとどまります(当ブログがこれまで扱った九州歯科大学・東北大学・徳島大学より1世代さかのぼります)。ただし同じ指標で比べると、その世代の75.5%と直近3年平均の72.3%の差は3.2ポイントで、古いデータだから実力が違って見える、という関係ではありません。
学年ごとの動きを見ると、広島大学には突出した「壁」と呼べる学年はありません。進級段階の脱落率は2.53%〜5.15%という狭いレンジに収まっています。留年率も令和元年度の20.7%から令和6年度の10.2%まで低下しており(令和7年度は11.0%へわずかに反転)、新潟大学が同じ期間に留年率を上げていたのとは対照的な動きです。
この記事では、「在学中は堅調、最後の国家試験で差がつく」という広島大学の形を、進級・卒業・国家試験の各段階に分けて整理します。あわせて、卒業率とストレート合格率のようにどこまでを数えた数字なのかで印象が変わることも、具体的な数値で確認していきます。
目次
- 広島大学の基本情報
- ストレート合格率とは(新卒合格率との違い)
- ストレート合格率の10年推移|3年平均72.3%は国公立12校中8位
- コホート追跡|入学53人のゆくえ(在学中に7人・卒業後の国家試験で6人)
- どの学年でつまずくか|脱落率は2.53%〜5.15%の狭いレンジ(突出した壁はない)
- 留年率は10.2〜20.7%で推移|退学率1.0%は国公立12校でやや高いグループ
- 学費は入学金+授業料の6年合計で約350万円(国立標準額)と留年1年の経済的リアリティ
- 偏差値は指標で評価が割れる(方式別57.5×学部学科60.0)——同ランク5校中4位
- まとめ|3つのポイント
広島大学の基本情報
まず、大学の基本プロフィールを押さえておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 〒734-8553 広島県広島市南区霞1丁目2番3号(霞キャンパス) |
| 入学者数 | 実績として53人で推移(平成30〜令和6年度・大学公表資料より) |
| 河合塾偏差値(2027年度) | 方式別57.5/学部学科ランク60.0/共通テスト得点率 前期73%・後期80% ※2026年7月確認時点の予想値 |
| 学費(入学金+授業料の6年合計) | 349.68万円(国立標準額・県内外の区別なし)※2026年度掲載額・諸費用別途 |
| 大学院 | 大学院医系科学研究科(医学部等と統合した組織) |
ここで、本記事を読むうえで大切な注意点を1つお伝えします。広島大学の歯学部には、歯学科のほかに口腔健康科学科が置かれています。本記事で扱うストレート合格率・進級・卒業・国家試験合格などの数値は、すべて歯学科(歯科医師を養成する6年制課程)のみを対象としており、口腔健康科学科の数字は含まれていません。修業年限も進路も異なる学科ですので、混同しないようご注意ください。大学院は歯学部単独ではなく、医学部等と統合した「大学院医系科学研究科」という組織になっています。
なお、中国・四国地方には広島大学のほかに国立の岡山大学・徳島大学の歯学部もあります。そのため本記事では「中国・四国唯一」といった位置づけの表現は使いません。また、募集人員の選抜方式別の内訳(一般選抜・学校推薦型選抜等)は今回参照した公開情報では確認できませんでしたが、大学が公表している入学者数(1年次の学生数)は平成30年度から令和6年度まですべての年度で53人と安定しています。本記事では、この53人という数字をもとにコホート(入学世代)を追跡していきます。
一次データの形式についても補足します。広島大学は進級者数・卒業率・卒業留年率の3つの表をまとめて1枚の画像として公開しており、入学年度別の推移を細かく追える手厚い内容です。当ブログの歯学部29大学 情報公開姿勢ランキングでも、広島大学はこの詳細公開を評価して国公立Bグループに位置づけています。
保護者の方に、1つ先にお伝えしておきます。広島大学は在学中の6年間は比較的堅調で、確定している世代のストレート卒業率は86.8%と高い水準です。ただし国家試験の合格まで含めると75.5%まで下がります。「卒業率」と「合格率」はどこまでを数えた数字かが違うので、大学の資料や説明会で数字を見るときは、その点を確かめておくと判断を誤りません。
出典:広島大学 公式サイト(所在地・学部構成・大学院)/河合塾(偏差値)/大学公表資料(入学者数)
ストレート合格率とは(新卒合格率との違い)
本題に入る前に、当ブログが最重要指標としている「ストレート合格率」を説明します。すでにご存じの方は次のセクションへ進んでください。
大学の広告やパンフレットでよく使われるのは新卒合格率です。これは歯科医師国家試験の新卒受験者数を分母とした合格率で、卒業試験や進級判定で受験者が選別されたあとの数字です。つまり、入学前の人が本当に知りたい「入学してから歯科医師になれる確率」は、新卒合格率からは見えません。
そこで当ブログが主軸にしているのがストレート合格率(正式名称:修業年限内合格率)です。
- 分母: 入学者数
- 分子: 6年間(修業年限内)で国家試験に合格した人数
入学者を分母にするため、留年や退学も含めた6年間の現実がそのまま反映されます。
※ 本記事のコホート追跡・ストレート合格率・学年別脱落率の数値は、大学が文部科学省の様式に沿って公表しているデータに基づき、編入学を除く入学者ベースです(大学公表資料の注記に準拠)。
ストレート合格率の10年推移|3年平均72.3%は国公立12校中8位
それでは、広島大学のストレート合格率を、第109回から第118回までの10年分で確認します。

図の実線が広島大学、破線が国公立12校平均です。実線は長く破線の下を走っていますが、第116回・第117回でわずかに追い越し、第118回で再び下に戻っているのが見て取れます。数値で確認していきましょう。
| 受験回 | 広島大学 | 国公立12校平均 | 差(広島−平均) |
|---|---|---|---|
| 第109回 | 65.5% | 67.4% | −1.9pt |
| 第110回 | 62.3% | 69.6% | −7.3pt |
| 第111回 | 66.0% | 72.1% | −6.1pt |
| 第112回 | 69.8% | 70.9% | −1.1pt |
| 第113回 | 66.0% | 69.9% | −3.9pt |
| 第114回 | 66.0% | 71.5% | −5.5pt |
| 第115回 | 60.4% | 65.7% | −5.3pt |
| 第116回 | 71.7% | 71.3% | +0.4pt |
| 第117回 | 75.5% | 75.0% | +0.5pt |
| 第118回 | 69.8% | 75.6% | −5.8pt |
※表の「差(広島−平均)」は、丸める前の平均値から算出しています。
※ストレート合格率の分母となる入学者数は、第109回のみ55人で、第110回以降は一貫して53人です。
※国公立12校平均は、当ブログが文部科学省のデータをもとに独自に算出した数値です。東京科学大学は2024年10月に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合して誕生した大学で(「改称」ではありません)、この集計では統合前の東京医科歯科大学の実績を東京科学大学の実績として通算しています。
このデータから読み取れることは2つあります。1つは、広島大学は第109回から第115回まで7回連続で国公立12校平均を下回っていたことです。その後、第116回(71.7%・平均71.3%)と第117回(75.5%・平均75.0%)で平均をわずかに上回り、第118回(69.8%・平均75.6%)で再び5.8ポイント下回りました。
もう1つは、年ごとの振れ幅が比較的小さいことです。10年間の実数値は最小60.4%(第115回)〜最大75.5%(第117回)で、その差は15.1ポイント。平均との差も−7.3ポイント〜+0.5ポイントの範囲に収まっており、「国公立12校平均のやや下から、わずかに上までを行き来する」という安定した推移です。新潟大学は同じ10年で振れ幅22.5ポイント、しかも第115回以降は65.0%と87.5%を1回ごとに行き来する交互振動を示していましたが、広島大学にはそうした極端な動きは見られません。
なお、参考までに私立15大学平均(第109〜118回で36%台〜43%台)と比べると、広島大学は最も落ち込んだ第115回(60.4%)を含め、いずれの回も上回っています。ただし、これは国公立と私立という設置形態の違いによるもので、大学の教育の質の優劣を示すものではありません。国公立は選抜性が高く定員も少ないため、私立平均との単純比較には注意が必要です。
※私立15大学平均は、ストレート合格率が突出して高い東京歯科大学・昭和医科大学(旧・昭和大学)の上位2校を除いた、当ブログ独自集計の平均値です。
※ ここでのストレート合格率(修業年限内合格率)は、文部科学省の修学状況データに基づくもので、確認できる最新回は第118回です。厚生労働省が公表する国家試験の結果自体は第119回(2026年3月発表)まで出ていますが、ストレート(修業年限内)の集計は第118回までが最新である点にご注意ください。
直近3年平均は72.3%=国公立12校中8位
単年の数字はぶれるため、当ブログでは直近3年の平均で評価します。第116〜118回の各回のストレート合格率を平均すると72.3%で、国公立12校中8位という中位の位置です。
※ 本記事の3年平均は、各回の合格率(%)を単純平均したものです(12校すべて同じ方法でそろえています)。広島大学は3年とも入学者数が53人でそろっているため、入学者数と合格者数をそれぞれ合算して求める方法(加重平均)でも72.3%となり、どちらの計算でも同じ数字になります。
| 順位 | 大学 | 3年平均(第116〜118回) |
|---|---|---|
| 1位 | 北海道大学 | 84.1% |
| 2位 | 岡山大学 | 82.7% |
| 3位 | 鹿児島大学 | 81.8% |
| 4位 | 新潟大学 | 80.0% |
| 5位 | 東京科学大学 | 76.5% |
| 6位 | 長崎大学 | 76.0% |
| 7位 | 九州歯科大学 | 73.7% |
| 8位 | 広島大学 | 72.3% |
| 9位 | 大阪大学 | 71.1% |
| 10位 | 東北大学 | 70.0% |
| 11位 | 徳島大学 | 62.5% |
| 12位 | 九州大学 | 57.0% |
上下の大学との差はごくわずかです。7位の九州歯科大学(73.7%)とは1.4ポイント差、9位の大阪大学(71.1%)とは1.2ポイント差で、わずかな変動で順位が入れ替わる位置にあります。この順位そのものを固定的な序列として受け取るのは適切ではありません。
ここで、広島大学の特徴をもう1つお伝えします。単年でランキングした場合の順位も、第116回8位・第117回5位タイ・第118回9位と、3年平均の8位とほぼ同じ水準で安定しています。(第117回の75.5%は東北大学と同じ数値で並んでいます。)新潟大学は同じ3回で1位相当・11位相当・2位相当と大きく振れましたが、広島大学は単年で見ても3年平均で見ても中位という、評価がぶれにくい大学です。新潟大学の「確定データは低いが直近は高い」という構造については、新潟大学の記事で詳しく扱っています。
国公立12校のストレート合格率10年推移をまとめて比較したい方は、国公立歯学部のストレート合格率 推移まとめをご覧ください。第118回単年の詳しい順位は、第118回 国公立歯学部ストレート合格率ランキングで確認できます。
出典:文部科学省(ストレート合格率)
コホート追跡|入学53人のゆくえ(在学中に7人・卒業後の国家試験で6人)
次に、実際に入学した学生がどの学年で減っていくのかを、入学年度別(コホート)に追跡します。ただし、広島大学ではここで大切な前提があります。
まず「データの時点」を整理する
当ブログがこれまで扱った九州歯科大学・東北大学・徳島大学は、修学状況の公表データが令和7年5月1日現在で、令和元年度入学世代(第118回国試世代)まで卒業・国家試験の結果が確定していました。一方、広島大学の進級・卒業の詳細データは令和6年5月1日現在が最新です。 そのため、卒業・国家試験の結果まで確定している最新の世代は平成30年度入学(第117回国試世代)で、この3校より1世代ぶんさかのぼることになります。
これは大学が情報を出していないという話ではありません。前述のとおり、広島大学は入学年度別の進級マトリクスに加え、卒業率・卒業留年率まで3つの表を詳細に公開しており、公表の内容自体はむしろ手厚い部類です。ポイントは、進級・卒業の詳細データには基準日があり、次の更新までは新しい世代の結果が反映されないという仕組みの側にあるということです。
そして、この基準日の違いが1つのズレを生みます。次の図をご覧ください。

上段の帯が大学公表の進級・卒業の詳細データ、下段の帯が文部科学省のストレート合格率です。下段のほうが1回分だけ右に長く伸びており、この「はみ出した1回分」が本記事のポイントになります。
| データの種類 | 確認できる最新の時点 | 出典 |
|---|---|---|
| 進級マトリクス・コホート生存曲線(本セクション) | 平成30年度入学(第117回)まで確定・令和6年5月1日現在 | 広島大学 公式サイト |
| ストレート合格率の推移・3年平均(セクション3) | 第118回まで(最新) | 文部科学省 |
この図が示しているのは、令和元年度入学世代の最終結果(第118回・69.8%)は、大学公式ページの進級・卒業データではまだ確定していないものの、文部科学省の年次集計ではすでに判明しているという1年分のズレです。同じ「広島大学の国家試験まわりの数字」でも、コホート追跡は1世代前の確定データ、ストレート合格率の推移はより新しいデータであることを、頭の片隅に置きながら読み進めてください。なお、厚生労働省が公表する新卒・総数の合格率はさらに新しく、第119回(2026年3月発表)まで確認できます。
確定コホート(平成30年度入学53人)のゆくえ
それでは、卒業・国家試験まで結果が確定している平成30年度入学世代(第117回国試世代・入学者53人)を追跡します。あわせて、令和元年度入学世代の途中経過(令和6年5月1日時点)を点線で示します。

実線が確定している平成30年度入学世代、破線が令和元年度入学世代です。実線は5年次までほぼ真横に進み、そこから卒業・国家試験にかけて段差を作っています。人数で追ってみましょう。
| 学年の段階 | 人数 | 入学者53人に対する割合 |
|---|---|---|
| 入学(1年次) | 53人 | 100% |
| 2年次 | 53人 | 100% |
| 3年次 | 52人 | 98.1% |
| 4年次 | 52人 | 98.1% |
| 5年次 | 52人 | 98.1% |
| 6年次 | 49人 | 92.5% |
| ストレート卒業 | 46人 | 86.8% |
| 国家試験合格 | 40人 | 75.5% |
53人でスタートし、2年次は53人のまま、3年次で52人(マイナス1人)、4年次・5年次も52人と、1年次から5年次までの4段階で減ったのはわずか1人です。そこから5年次から6年次で52人から49人(マイナス3人)、6年次からストレート卒業で49人から46人(マイナス3人)、そしてストレート卒業から国家試験合格で46人から40人(マイナス6人)と減っています。
そしてストレートで卒業できたのは46人。入学者53人に対してストレート卒業率は86.8%です。5人に4人以上が6年間で卒業までたどり着いている計算になります。
※ 広島大学の公式資料では、この卒業率が整数に丸めて「87%」と表記されています。本記事では46人÷53人=86.8%という精密値を採用しています。この差は大学側の整数丸めによるもので、データの不一致ではありません。 同様に国家試験合格率も公式表記は「75%」ですが、本記事では40人÷53人=75.5%を採用しています。
ストレート卒業した46人のうち、第117回国家試験に合格したのは40人でした。入学者53人を分母にしたストレート合格率は75.5%です。
なお、この世代の内訳をもう少し詳しく見ておきます。卒業46人のうち国家試験に合格したのは40人で、合格に至らなかった割合は13.0%(6人÷46人=13.04%)。この6人が全員受験したうえで不合格だったのかは公表データからは分からないため、本記事では「不合格率」ではなく「合格に至らなかった割合」と表記します。同じ平成30年度入学世代の進級段階で最も減少が大きかったのは5年次から6年次の5.8%(52人→49人)ですから、その2倍以上の水準です。当ブログが以前扱った徳島大学(同18.18%)・鹿児島大学(同20.83%)と同じく「卒業から国家試験までの段階で相対的に大きく削れる」構造ですが、広島大学の13.0%はこの2校よりも軽い水準です。ただしこれは平成30年度入学世代という1つの世代の実績であり、今後の世代にそのまま当てはまるとは限りません。原因についても公表データからは分かりません。
同じく「1年次から5年次はほぼ無傷で、終盤に減少が集中する」という形も、平成30年度入学世代に限って確認できる動きです。次に見る令和元年度入学世代は1年次から2年次でいきなり3人減っており、同じパターンを繰り返してはいません。全世代に共通する傾向として一般化しないようご注意ください。
確定コホートの卒業率を他の国公立と並べてみる
平成30年度入学世代のストレート卒業率86.8%は、他の国公立と比べるとどの位置になるのでしょうか。当ブログが確定コホートの卒業率を把握できている国公立8校を並べると、次のようになります。
| 大学 | ストレート卒業率 | 基準となる入学世代 |
|---|---|---|
| 鹿児島大学 | 90.6% | 平成28年度 |
| 九州歯科大学 | 87.4% | 令和元年度 |
| 広島大学 | 86.8% | 平成30年度 |
| 徳島大学 | 82.5% | 令和元年度 |
| 長崎大学 | 82.0% | 平成30年度 |
| 大阪大学 | 75.5% | 令和元年度 |
| 東北大学 | 73.6% | 令和元年度 |
| 新潟大学 | 67.5% | 平成30年度 |
この8校の中では、広島大学の86.8%は3位という好成績です。 ただし、この比較には重要な留保があります。8校の基準となる入学世代がそろっていません。 鹿児島大学は平成28年度入学、九州歯科・徳島・大阪・東北の4校は令和元年度入学、広島・長崎・新潟の3校は平成30年度入学が基準です。それぞれの大学が公表している最新の確定世代を並べたものであり、同じ年に入学した学生同士を比べた表ではない点にご注意ください(各校のデータ更新のタイミングが異なるためです)。
ここで大切なのは、86.8%が「卒業まで」の数字だということです。 同じ世代でも、国家試験の合格まで含めたストレート合格率は75.5%まで下がります(11.3ポイントの差)。卒業率だけを見て「安泰」と受け止めるのは早計で、広島大学の場合、順位が上位から中位へ移るのは、この卒業から国家試験までの段階を数に入れたときです。
なお、この86.8%は1世代前(平成30年度入学)の確定データですが、同じストレート合格率という指標で比べると、この世代の75.5%と直近3年平均の72.3%の差は3.2ポイントにとどまります。上位と中位の違いを生んでいるのは、データの新しさではなく、どの段階までを数えているかだとわかります。
令和元年度入学世代は6年次到達までが公表分
令和元年度入学世代(第118回国試世代・入学者53人)の途中経過も見ておきます。
| 入学世代 | 入学 | 2年次 | 3年次 | 4年次 | 5年次 | 6年次 | ストレート卒業 | 国試合格 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成30年度(第117回・確定) | 53人 | 53人 | 52人 | 52人 | 52人 | 49人 | 46人(86.8%) | 40人(75.5%) |
| 令和元年度(令和6年5月1日時点) | 53人 | 50人 | 48人 | 48人 | 45人 | 43人 | 未公表 | 未公表 |
※各学年の人数は、入学者のうち留年・休学・退学をせずにその学年までストレートで進級した人数です(%は入学者数53人が分母)。人数が減っている分だけ、その学年で留年するなどして予定どおり進級できなかった学生がいることを意味します。
令和元年度入学世代は、1年次から2年次で3人、2年次から3年次で2人減り、3年次から4年次は48人のまま横ばい。その後4年次から5年次で3人、5年次から6年次で2人減って、6年次到達は43人(入学者の81.1%)でした。大学公表資料ではストレート卒業・国家試験合格の集計は公表されていません(データなし)。ただしセクション3で見たとおり、文部科学省の年次集計ではこの世代の最終結果として第118回で37人合格・69.8%が判明しています。この世代の卒業者数そのものは大学公表データからは確認できないため、卒業率については断定しません。
なお、令和2年度以降の入学世代(現在5年次までが公表分)については、卒業率・国家試験合格率がどうなるかを予測することはできません。本記事では確定した数字のみを扱います。
混同しやすい数字の整理
ここで、混同しやすい数字を整理しておきます。
まず、大学が公表した令和5年度の卒業留年に関する資料によると、6年次に在籍していた学生54人が全員卒業し、卒業留年率は0%(大学公表値)でした。ここで注意したいのは、先ほどの平成30年度入学世代の「6年次進級者49人」と、この「6年次在籍総数54人」は別の集団だということです。54人は、平成30年度入学世代の49人に、それより前の入学世代で留年を経験して6年次に在籍している学生などを加えた、令和5年度時点の6年次在籍者全体です(この集計は編入学を含みます)。この2つの「6年次」の数字を同一視して、差の5人を「留年した学生数」と読むことはできません。また、卒業留年率0%は「令和5年度に限って」6年次在籍者が全員卒業したという意味であり、広島大学に留年が一切ないという意味ではありません。平成30年度入学世代自体、53人のうち4人が標準の6年で6年次まで到達できていません。
次に、厚生労働省が公表する第117回の広島大学の新卒合格率は81.48%ですが、これは「その年度の新卒受験者54人」を分母にした数字です。この新卒受験者54人は、大学公表資料の6年次在籍総数54人と一致します。一方、新卒で合格した44人と、コホート追跡で見た標準修業年限内の国家試験合格者40人は一致しません。新卒受験者54人のうち、標準の6年で卒業したのは46人(平成30年度入学世代のストレート卒業者)で、残り8人は延長した修業年限で令和5年度に卒業した学生とみられます。新卒合格44人と標準修業年限内合格40人の差4人は、この延長修業年限で卒業した学生のうちの合格者と考えられますが、正確な内訳は公表データからは分かりません。
最も大切なのは、新卒合格率81.48%(分母54・その年度の新卒受験者)と、ストレート合格率75.5%(分母53・平成30年度入学者)は、対象がまったく異なる別の指標だということです。前者はその年度に新卒で受験した人の合格割合、後者は平成30年度に入学した53人が6年間で歯科医師になれた割合です。両者には約6ポイントの開きがあります(44人÷54人=81.48%と40人÷53人=75.47%の差で6.01ポイント)。並べて比べる際は、この違いを押さえておいてください。
※ なお、歯科医師国家試験の結果は年度によって変動します。厚生労働省が公表する直近の第119回(2026年3月発表)では、広島大学の新卒合格率は85.71%(前年の第118回は83.33%)とわずかに上がりましたが、総数合格率は74.60%(前年79.03%)と下がりました。既卒の受験者14人のうち合格が5人だったことが総数を押し下げています。いつの世代も同じ結果になるとは限りません。原因については公表データからは分かりません(第119回は新卒・総数の数値で、ストレート=修業年限内の集計はまだ第118回までが最新です)。
出典:広島大学 公表の修学状況データ(令和6年5月1日基準)/文部科学省(ストレート合格率)/厚生労働省(新卒・総数合格率)
どの学年でつまずくか|脱落率は2.53%〜5.15%の狭いレンジ(突出した壁はない)
「どの学年でつまずきやすいか」は、大学選びでいちばん知りたいところでしょう。ここで注意が必要です。よく使われる学年別の留年率(その年度に在籍する学生のうち、在学中に一度でも留年・休学を経験した学生の割合)では、実は「どの学年でつまずくか」は正確にはわかりません。留年・休学を経験した学生は上の学年に積み上がっていくため、高学年ほど数字が大きく出やすいからです。
そこで本記事では、入学した世代(コホート)ごとに、各学年で何%の学生が予定どおり上の学年へ進級できず脱落したかを計算しました。平成30年度から令和5年度までの入学世代について、大学が公表している入学年度別の進級データ(令和6年5月1日現在)を用い、各学年遷移の脱落率をプール集計したものが次の図と表です。

棒の下にある「n=」は、その学年の集計に使えた入学世代の数です(学年が上がるほど確定している世代が少なくなります)。
| 学年(遷移) | 1年次(入学→2年) | 2年次(2→3年) | 3年次(3→4年) | 4年次(4→5年) | 5年次(5→6年) |
|---|---|---|---|---|---|
| 脱落率 | 4.09% | 3.94% | 2.53% | 3.33% | 5.15% |
| 集計世代数 | 6世代 | 5世代 | 4世代 | 3世代 | 2世代 |
結果の特徴は、5つの棒の高さがほとんどそろっていることです。最も低い3年次から4年次の2.53%と、最も高い5年次から6年次の5.15%の差は2.62ポイントしかなく、進級のどこかに「壁」と呼べる突出した段階は見当たりません。当ブログがこれまで扱った東北大学(2年次から3年次の脱落率が全遷移中最大の14.5%)・新潟大学(同8.81%)のような明確な関門は、広島大学のデータには現れていません。本記事ではこれを便宜的に「狭いレンジ型」と呼ぶことにします。
最大値5.15%の読み方には注意が必要
進級段階で最も高いのは5年次から6年次の5.15%ですが、この数字の読み方には注意が必要です。この5.15%は、平成30年度入学世代(52人→49人)と令和元年度入学世代(45人→43人)という2つの世代のみを合算した数値です。学年が上がるほど確定した世代が少なくなるため、5年次から6年次はどうしてもデータの厚みが薄くなります。
一方、1年次から2年次の4.09%は6つの入学世代を合算した数字で、平成30年度(53人→53人)・令和元年度(53人→50人)・令和2年度(53人→51人)・令和3年度(53人→52人)・令和4年度(53人→48人)・令和5年度(53人→51人)という広い範囲の実績に支えられています。同じ「脱落率」でも、根拠となる世代数が異なる点は押さえておいてください。 より厚みのあるデータで裏付けられた1年次から2年次の4.09%と、最大値の5.15%との差は1.06ポイントにすぎず、広島大学は、現時点で確定しているデータを見るかぎり、特定の学年に明確な壁があるというよりは、6年間を通じて脱落率が平坦に分布しているタイプと言えます。
参考までに、平成30年度から令和6年度までの各入学世代の生存曲線を重ねて描いたのが次の図です。入学者数が全世代で53人と一律のため、正規化はシンプルです。

このグラフを見ると、世代ごとのばらつきはあることが分かります。平成30年度入学世代は5年次まで52人でほぼ横ばいに進んだ一方、令和3年度入学世代は2年次から3年次で52人から47人へ5人減り、令和4年度入学世代は1年次から2年次で53人から48人へ5人減っています。減る場所が世代によって違うのはデータから確認できる事実ですが、その原因は公表データからは分かりません。
- 今回のデータでは、進級段階の脱落率はどの学年も2.53%〜5.15%の範囲に収まり、特定の学年に集中する形にはなっていない。
- だからこそ、どこか1学年だけを警戒するのではなく、6年間を通じて学習習慣を切らさないことが大切とも言えます。
なお、なぜ広島大学の脱落率が学年をまたいで平坦なのか、その理由までは公表データからはわかりません。数字はあくまで結果の傾向として受け止めてください。
出典:広島大学 公表の修学状況データ(令和6年5月1日現在・編入学を除く・歯学科のみ)
留年率は10.2〜20.7%で推移|退学率1.0%は国公立12校でやや高いグループ
次に、留年率と退学率を確認します。
留年率(在籍者ベース)は10.2〜20.7%の範囲
まず留年率です。ここでいう留年率は、文部科学省の集計で、その年度に在籍する学生のうち、在学中に一度でも留年または休学を経験した学生の割合を指します(その年度に留年した学生だけを数えたものではありません)。広島大学全体の留年率は、平成26年度以降で最小10.2%(令和6年度)〜最大20.7%(令和元年度)の範囲で推移しています。
| 年度 | 全体の留年率 |
|---|---|
| 平成26年度 | 13.7% |
| 平成27年度 | 18.1% |
| 平成28年度 | 19.8% |
| 平成29年度 | 19.9% |
| 平成30年度 | 20.2% |
| 令和元年度 | 20.7% |
| 令和2年度 | 18.6% |
| 令和3年度 | 16.2% |
| 令和4年度 | 16.2% |
| 令和5年度 | 13.2% |
| 令和6年度 | 10.2% |
| 令和7年度 | 11.0% |
注目したいのは、令和元年度(20.7%・この12年間で最も高い水準)から令和6年度(10.2%・同じ期間で最も低い水準)にかけて、留年率が10.5ポイント下がっている点です。20.7% → 18.6% → 16.2% → 16.2% → 13.2% → 10.2%と、令和3年度から令和4年度の横ばい(ともに16.2%)を挟みながら、5年度分をかけて低下しました。ただし直近の令和7年度は10.2%から11.0%へとわずかに反転上昇しています。この動きの背景については、進級判定の運用が変わった、学生への学習支援が手厚くなった、入学者の層が変化したなど、いくつかの推測もできますが、公表データからその理由を特定することはできません。
参考として、当ブログが前回扱った新潟大学は同じ期間に令和元年度7.3%から令和7年度16.2%まで一貫して上昇していました。広島大学はこれとは正反対の動きです。 留年率の推移パターンは大学によって大きく異なることがわかります。また国公立12校平均との比較でも、平成26年度から令和4年度までは広島大学が平均を上回っていましたが、令和5年度以降は平均を下回るように逆転しています。
令和7年度の学年別の留年率は、1年次9.3%、2年次11.9%、3年次9.3%、4年次8.2%、5年次18.9%、6年次8.2%でした。4年次と6年次の8.2%は、いずれも国公立12校の中で最も低い数値です。ここで1つ注意点があります。3年次と1年次はどちらも9.3%という同じ数値ですが、国公立12校の中での位置はまったく異なります。 3年次の9.3%は低い順に2番目である一方、1年次の9.3%は低い順に10番目(=12校の中で3番目に高い水準)です。同じ数値でも他校との相対的な位置は別ものですので、混同しないようご注意ください。最も高いのは5年次の18.9%で、これは12校の中では6番目(中位)です。学年によって「全国で最も低い」水準と「相対的に高い」水準が混在しており、広島大学の留年率は学年ごとのばらつきが大きいというのが実態です。
なお留年率は在籍者ベースの単年の指標、前のセクションで見た脱落率は複数世代を追跡した累積の指標であり、定義が異なる点にはご注意ください。
退学率1.0%は国公立12校でやや高いグループ
次に、退学率を見てみます。令和4〜6年度の3か年平均で、広島大学の退学率は1.0%です。
| 区分 | 退学率(令和4〜6年度3か年平均) |
|---|---|
| 広島大学 | 1.0% |
| 国公立12校 単純平均 | 約0.6% |
| 私立17校 単純平均 | 4.4% |
この1.0%という数字は、国公立12校を低い順に並べると10番目にあたります。新潟大学(0.9%)と徳島大学・長崎大学(ともに1.1%)の間に位置し、全国29の歯学部(国公立12校+私立17校)の中でも10番目です。ここまで見てきたとおり、広島大学はストレート合格率3年平均が国公立12校中8位の中位で、退学率についても国公立の中ではやや高いグループにあたるという組み合わせです。突出した強みも弱みも見当たらない、中庸な位置づけと言えます。
ただし、なぜ退学率がこの水準なのか、その原因は公表データからは分かりません。これらは統計上の割合であって、個々の学生の事情はさまざまです。なお、私立17校平均の4.4%と比べると大幅に低い水準ですが、この差は設置形態(国公立/私立)の違いによる面もあり、大学の教育の質の優劣を単純に示すものではありません。
出典:文部科学省(留年率・退学率)
学費は入学金+授業料の6年合計で約350万円(国立標準額)と留年1年の経済的リアリティ
ここからはお金の話です。広島大学は国立大学のため、学費は大きな魅力のひとつです。
学費の内訳(2026年度)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 入学金 | 282,000円 |
| 年間授業料 | 535,800円 × 6年 |
| 入学金+授業料の6年合計 | 3,496,800円 |
広島大学の入学金+授業料の6年合計349.68万円は、文部科学省が定める国立大学の標準額とまったく同じ水準です(年間授業料535,800円は国立標準額と同額)。国立大学のため、県内者・県外者の区別はなく、一律です。なお、この金額は入学金と授業料のみの合計で、このほかに学生保険や実習器具、教科書・参考書、学外実習の交通費などの諸費用が別途かかります。
これを私立と比べると、その差は歴然としています。私立17校の6年総額の単純平均は約2,611万円。広島大学はその約7.5分の1にあたります。私立で最も高い東京歯科大学(3,190万円)と比べると約9.1分の1、私立で最も安い明海大学・朝日大学(ともに1,793万円)と比べても約5.1分の1です。学費を負担するご家庭にとって、この差は非常に大きいといえるでしょう。なお、この学費差は国公立と私立という設置形態の違いによるものであり、教育内容や指導の質を示すものではありません。
※ 本セクションの学費は、2026年7月時点で大学公式サイト等に掲載されている2026年度の金額に基づきます(2027年度の学費は本記事執筆時点で未公表のため、2026年度額を使用しています)。最新情報は必ず大学公式サイト・募集要項でご確認ください。
留年1年の経済的リアリティ(当ブログの独自試算)
当ブログでは、留年1年の経済的損失を1,500万円と試算しています。
- 学費 500万円(※実際の各大学の学費額ではなく、全大学共通の固定値です)
- 生活費 200万円
- 機会損失 800万円(キャリア終盤の1年分の年収が消える考え方)
この試算はあくまで当ブログ独自のモデル計算です。ただし、この500万円は全大学共通の固定値モデルであり、広島大学の実際の年間授業料は535,800円(国立大学標準額と同額)と、モデル値よりはるかに低い水準です。実額に置き換えると、留年1年あたりの損失は、生活費200万円+機会損失800万円を中心とした1,000万円程度が現実的な下限になります。ただし、生活費200万円・機会損失800万円は一定の前提を置いた概算であり、住まいや就職の時期、将来の収入などによって実際には大きな個人差があります。1,500万円という数字は、広島大学の実際の追加負担額ではなく、複数の前提を置いた参考シナリオとしてご覧ください。
ここで、先ほどのコホートのデータを思い出してください。確定コホート(平成30年度入学世代)のストレート卒業率は86.8%。5人に4人以上はストレートで卒業できる計算です。ただし直近3年平均のストレート合格率は72.3%で国公立12校中8位の中位にとどまっており、この確定コホートの好成績だけを見て「安泰」と判断するのは早計かもしれません。いずれにせよ、卒業までの過程では生活費や将来の収入機会の面で大きな経済的影響が生じる可能性があります。学費を負担する保護者の方にとっては、合格発表がゴールではなく、入学後の6年間こそが本番です。学費の安さという大きなメリットがある一方で、留年や国家試験でつまずいた場合の生活費や機会損失は設置形態に関係なく生じる、という両面を押さえておきましょう。
出典:広島大学 公式サイト(学費)/私立17校の学費は各大学公式サイト
偏差値は指標で評価が割れる(方式別57.5×学部学科60.0)——同ランク5校中4位
最後に、国公立12校の中での立ち位置を「入口(偏差値)×出口(ストレート合格率)」で整理します。
その前に、広島大学の偏差値について1つ大切な注意点があります。広島大学は、河合塾のどの偏差値指標を見るかによって評価が変わる大学です。2027年度入試向けの河合塾の数値を見ると、次のようになっています(いずれも2026年7月確認時点の予想値)。
- 方式別偏差値(前期日程):57.5(国公立12校の中では中位グループ。北海道・岡山・九州・鹿児島と並ぶ)
- 学部学科偏差値:60.0(複数の入試方式をまとめ直したランク・国公立12校の中では最も高いグループ。東北・東京科学・岡山・新潟・徳島と並ぶ)
- 共通テスト得点率:前期日程73%/後期日程80%
このように、同じ広島大学でも「方式別偏差値では中位グループ、学部学科偏差値では上位グループ」と評価が2.5ポイント分割れます。単純に「偏差値が低い」「高い」とひとくくりにできない大学なので、どの指標を見ているかを必ず確認する必要があります。なお、この方式別57.5×学部学科60.0という組み合わせは岡山大学とまったく同じで、広島大学だけの特徴ではありません。共通テスト得点率は前期73%・後期80%と後期日程のほうが7ポイント高くなっていますが、前期・後期の定員配分などの詳細はデータがなく、断定はできません。
以下の散布図では、当ブログの他の分析記事と系列をそろえるため、方式別偏差値を横軸に使っています。

まず入口と出口の事実を並べてみます。広島大学の方式別偏差値57.5は国公立12校の中で中位グループ、出口のストレート合格率3年平均72.3%は12校中8位です。入口も出口も中位という組み合わせです。ただし、これを「偏差値がこうだから合格率もこうなる」といった因果関係で解釈するのは適切ではありません。
同じ方式別偏差値57.5の5校で、出口は27.1ポイント開く
ここで、本記事でぜひお伝えしたい事実があります。方式別偏差値が57.5でそろう国公立5校を、出口のストレート合格率3年平均で並べてみると次のようになります。
| 順位 | 大学 | 方式別偏差値 | ストレート合格率3年平均 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 北海道大学 | 57.5 | 84.1% |
| 2位 | 岡山大学 | 57.5 | 82.7% |
| 3位 | 鹿児島大学 | 57.5 | 81.8% |
| 4位 | 広島大学 | 57.5 | 72.3% |
| 5位 | 九州大学 | 57.5 | 57.0% |
入口の偏差値がまったく同じ5校でも、出口の実績は最大27.1ポイント開きます。 その中で広島大学のストレート合格率3年平均は下から2番目に位置します。これは統計モデルによる推計ではなく、公表値をそのまま並べた事実です。ただし出口の実力は偏差値という1つの指標だけで測れるものではありません。 前述のとおり広島大学は学部学科偏差値では60.0=12校中最も高いグループであり、どの指標を軸に取るかで見え方が変わります。この5校のうち3位の鹿児島大学の6年間について詳しく知りたい方は、鹿児島大学の記事もあわせてご覧ください。
国公立では偏差値と出口がほとんど連動しない
5校の比較を12校全体に広げると、さらにはっきりします。国公立12校で偏差値(方式別)とストレート合格率3年平均の相関係数を計算すると、r≒−0.01とほぼゼロでした。学部学科偏差値を軸にした場合もr≒0.00で、こちらもほぼ無相関です。参考までに、当ブログが以前私立16校(BF校を除く)で同じ計算をしたときはr≒0.73で、こちらは「偏差値が高い大学ほど出口も高め」という緩やかな右肩上がりの傾向が見られました(ただし例外もあります)。国公立ではその緩やかな傾向すら当てはまらないのです。
つまり、今回の国公立12校とこの指標の組み合わせでは、偏差値とストレート合格率の間に直線的な関係はほとんど確認できませんでした。だからこそ国公立では、大学ごとにストレート合格率を個別に確認することが大切です。
なお、この結果は参考程度に受け止めるべきものです。国公立12校というサンプルは小さく(n=12)、方式別偏差値も55・57.5・60の3水準、学部学科偏差値も57.5・60の2水準に集中しているため、横軸の分解能が低いという限界があります。そもそも相関がほぼゼロである以上、回帰線そのものに偏差値から合格率を説明する力はほとんどなく、今回の結果を国公立歯学部全般に一般化することはできません。
いずれにせよ、偏差値は入口の難易度、ストレート合格率は出口の実績です。国公立ではこの2つが連動しないからこそ、大学選びでは必ず両方を確認してください。当ブログの歯学部偏差値ランキングの分析記事では、国公立12校の方式別偏差値・学部学科偏差値・共通テスト得点率・ストレート合格率を同じ表で比較していますので、あわせてご覧ください。
出典:河合塾(偏差値・共通テスト得点率)/文部科学省(ストレート合格率)
まとめ|3つのポイント
本記事のポイントを3つにまとめます。
- 出口の実績: ストレート合格率は直近3年平均72.3%で国公立12校中8位の中位。単年で見ても第116回8位・第117回5位タイ・第118回9位と、順位がぶれにくい安定型。ただし7位の九州歯科大学(73.7%)とは1.4ポイント差、9位の大阪大学(71.1%)とは1.2ポイント差の僅差で、わずかな変動で順位が入れ替わる位置にある
- つまずきが集まるのは卒業後: 学年別の脱落率は2.53%〜5.15%の狭いレンジに収まり、在学中に突出した「壁」と呼べる学年はない。入学53人のうち歯科医師になれなかった13人の内訳は、在学中の6年間が7人・卒業後の国家試験が6人でほぼ半々。一方、確定した平成30年度入学世代では卒業46人のうち国家試験に合格したのは40人で、合格に至らなかった割合13.0%は、同じ世代の進級段階で最も大きい5年次から6年次の5.8%の2倍以上(徳島大学18.18%・鹿児島大学20.83%と同型だが軽い水準)。ただし進級・卒業の詳細データは令和6年5月1日時点が最新で、確定した最新世代は平成30年度入学(第117回・ストレート卒業率86.8%・各校の最新の確定世代どうしを並べた比較で国公立8校中3位)にとどまる
- お金: 入学金+授業料の6年合計349.68万円(国立標準額)は私立平均の約7.5分の1という大きなメリット。ただし留年すれば、学費が安い国立でも生活費や将来の収入機会の損失が生じる(当ブログの留年1年1,500万円モデルは私立想定の参考試算・実額ベースではおよそ1,000万円程度が目安)
確定コホートのストレート卒業率は86.8%。5人に4人以上はストレートで卒業できる計算で、直近3年平均のストレート合格率も72.3%と国公立12校の中で中位を維持しています。大学選びの際は、1つの数字だけでなく複数の情報源・複数年のデータを組み合わせることが、経済的なリスクを正しく見積もるうえでも大切になります。学費を負担するご家庭にとっても、合格発表がゴールではなく、入学後の6年間こそが本番です。
なお、本記事で示した数字はあくまで統計的な評価です。合格や進級を最終的に決めるのは一人ひとりの学習習慣であって、広島大学の在学生や志願者の方を貶める意図はまったくありません。確定している世代のストレート卒業率は86.8%で、在学中の6年間という点では堅調です。国家試験まで含めたストレート合格率は72.3%(直近3年平均)と中位ですが、進級に突出した関門がなく、6年間を通じて学習を続けられる環境であること自体は、進学先を選ぶうえでの安心材料といえます。 大学選びの際は、1つの数字だけでなく複数の指標・複数年のデータを組み合わせて実力を評価することが大切です。
そして広島大学については、進級段階の脱落率がどの学年も2.53%〜5.15%という狭い範囲に収まっており、特定の学年に大きな関門が待ち構えている構造ではありません。低学年からしっかり学習習慣を身につけ、6年間それを切らさずに続けられれば、着実に進級を重ね、ストレートで歯科医師を目指せる環境が整っていると言えるでしょう。
他の歯学部のデータと比較したい方は、全国29歯学部の修学状況まとめ(親記事)をご覧ください。国公立12校のストレート合格率の推移は国公立歯学部のストレート合格率 推移まとめで確認できます。
データ出典: 文部科学省「歯学部の修学状況等の調査」/厚生労働省 歯科医師国家試験結果/河合塾(偏差値)/広島大学 公式サイト

