国試データ分析

歯学部の国家試験合格率90%のからくり|新卒 vs ストレートの乖離を解説

kameman

「歯学部の国家試験合格率90%以上」という数字は嘘ではありません。しかし、受験生・保護者が本当に知るべき数字でもありません。

大学パンフレットや公式サイトでよく見かける「国家試験合格率90%以上」のほとんどは、新卒合格率です。新卒合格率の分母は「その年度に卒業できた学生」のみで、留年した学生も退学した学生も含まれていません。分母から静かに消えているのです。

一方、入学者を分母にしたストレート合格率(修業年限内合格率)を文部科学省の公式データから計算すると、私立15大学平均は42.13%(第118回・2025年2月実施)です。東京歯科大学・昭和医科大学を除く15校の平均で、2人に1人以上がストレートでの国家試験合格に届いていません。

さらに象徴的な例を1つ先に出しておきます。第118回で新卒合格率90.7%でも、ストレート合格率は24.7%という大学があります(松本歯科大学)。新卒合格率とストレート合格率の乖離は66ポイント。同じ大学で公表されている2つの「合格率」が、これだけ違う意味を持つことがあるのです。

この記事では、第118回(2025年2月実施)のデータを主軸に、

  • 新卒合格率とストレート合格率の定義と構造の違い
  • 全17大学の乖離ランキング(新卒 vs ストレート)
  • 受験生・保護者が引っかかる「数字のからくり」3パターン
  • 数字のずれが家計にもたらす経済的インパクト

の順で整理します。全29大学のデータランキングそのものは全29大学の修学状況ランキング(親記事)に集約していますので、この記事で「指標の読み方」を確認してから親記事に進んでいただくのがおすすめです。

保護者の方へ 大学パンフレットの「合格率90%以上」を額面どおりに受け取ってしまうと、入学後に留年が続発し、当初想定した学費の倍近い負担になるケースがあります。私立歯学部の学費は6年間で2,000万〜4,000万円、さらに留年1年ごとに約1,500万円の追加負担が発生しうる構造です。本記事は「どの数字を見ればこのリスクを事前に把握できるか」を整理した内容になっています。


「合格率90%以上」が意味すること(と意味しないこと)

結論:大学が公表する「国家試験合格率90%以上」のほとんどは新卒合格率。この指標の分母は「その年度に卒業した学生」のみで、留年者も退学者も含まれていません。

新卒合格率の定義:分母に誰が入っているか

新卒合格率は、以下の式で計算されます。

新卒合格率 =(その年度の国家試験新卒合格者数)÷(その年度の新卒受験者数)× 100

ここでいう「新卒受験者」とは、その年に卒業する見込みの学生です。つまり、

  • 留年して翌年以降に受験する学生
  • 卒業後に複数回浪人して受験する学生(既卒受験者)
  • 退学した学生(受験すらしていない)

これらの学生は、分母から除外されています。分母が絞り込まれているため、歯科医師国家試験の合格率としては構造的に高く出る指標です。

比較のため、ストレート合格率(修業年限内合格率)と並べると次のようになります。

指標分母分子何が消えているか
新卒合格率その年度の新卒受験者新卒合格者留年者・退学者・既卒受験者
ストレート合格率入学者最低修業年限内合格者誰も消えない

ストレート合格率は入学者を分母にするため、留年しても退学しても分母からは除かれません。これが「入学した100人のうち、6年で歯科医師になれた人は何人か」という、受験生・保護者にとって本質的な確率を示します。

具体例:「90%台」の中身が全く違う2大学

同じ「新卒合格率90%台」でも、中身は全く違うことがあります。第118回の実データで2校を並べます。

東京歯科大学(第118回)

  • 新卒受験者133人中129人合格 → 新卒合格率 97.0%
  • 入学者128人中96人がストレート合格 → ストレート合格率 75.0%
  • 乖離:22.0ポイント

松本歯科大学(第118回)

  • 新卒受験者54人中49人合格 → 新卒合格率 90.7%
  • 入学者85人中21人がストレート合格 → ストレート合格率 24.7%
  • 乖離:66.0ポイント

どちらも公式統計ベースで新卒合格率は90%台です。しかし、入学者を分母にしたストレート合格率は75.0%と24.7%で、50ポイント以上離れています。言い方を変えれば、同じ「90%台」という表示が、大学によって全く別の意味を持っているのです。

なぜこうなるのか。2つの指標はそもそも見ている集団が違います。次の図で整理します。

ある大学に100人が入学したと仮定します。6年経過した時点で、ストレート卒業して国試に合格できるのは40人、卒業はしたが国試に不合格は5人、留年中で卒業に届いていないのが35人、退学は20人だったとしましょう。ストレート合格率は40 ÷ 100 = 40%です。分母は入学者100人で、誰も消えません。

一方、新卒合格率の分母は「ある回の試験を新卒受験する人」です。これは入学コホート全体ではなく、その回に卒業見込みになる学生の集まりです。仮にこの大学のある回の新卒受験者が60人(うちストレート組40人+過年度に留年した経験のある今年卒業組20人)で、合格者が57人だったとすると、新卒合格率は57 ÷ 60 = 95%になります。

同じ大学の話なのに、分母にする集団が違うので40%と95%という別の数字が同時に存在する構造です。「どちらが本当か」ではなく「何を分母にしているか」を見ることが重要です。

「偽っている」わけではなく「どの指標を見るべきかが周知されていない」

ここで重要な整理をしておきます。新卒合格率は、正式な指標です。大学が新卒合格率を公表すること自体は、何も問題がありません。

問題は、受験生・保護者が「入学後にストレートで国試を通れる確率」を知りたい場面で、新卒合格率だけが広報の前面に出てしまうことにあります。指標そのものは正確ですが、文脈が違うと読み手の意思決定を誤らせます。

この記事も、「大学が嘘をついている」という論調ではなく、「どちらの指標を見るべきかを受験生・保護者が知っておく」という視点で書いています。


入学者ベースで見る「本当の合格率」

結論:入学者を分母にしたストレート合格率(修業年限内合格率)では、私立15大学平均は42.13%(第118回)。東京歯科大・昭和医科大を除く15校の2人に1人以上は、6年でのストレート合格に届いていません。

ストレート合格率(修業年限内合格率)の定義

ストレート合格率の正式名称は、文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果」で使われる「最低修業年限内国家試験合格率」です。本サイトでは、一般的にわかりやすい「ストレート合格率」という呼称と公式名称を、文脈に応じて併用します。

計算式は次のとおりです。

ストレート合格率 =(入学者のうち最低修業年限6年で国家試験に合格した人数)÷(入学者数)× 100

「入学者数」も「最低修業年限合格者数」も、どちらも文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果(医学教育課調べ)」に公表されている数値です。誰も分母から消えない指標で、留年した学生も退学した学生もそのまま分母に残ります。

データ出典は、文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果(医学教育課調べ)」です。

第118回(2025年2月実施)の全体像

第118回歯科医師国家試験でのストレート合格率を、国公立・私立の区分ごとに並べます。

区分ストレート合格率(第118回)
国立11大学合計75.0%
公立・九州歯科大学78.9%
私立17大学合計47.4%
私立15大学平均(東京歯科大学・昭和医科大学を除く)42.13%

出典:文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果(医学教育課調べ)」

ここで1点、集計方法について補足します。「国立11大学合計」「公立・九州歯科大学」「私立17大学合計」の3行は、対象大学全体の入学者数を分母にして合算した合計値です。一方、「私立15大学平均」は東京歯科大・昭和医科大を除く15校それぞれのストレート合格率を単純に算術平均した値で、合算ベースの数字とは計算方法が異なります。

私立と国公立で30ポイント以上の差があります。そして、私立17大学の合計値(47.4%)と15大学の単純平均(42.13%)の違いにも注意が必要です。

本サイトが「私立15大学平均」を主要比較指標としている理由はシンプルです。東京歯科大(75.0%)と昭和医科大(71.9%)の2校は他校と20ポイント以上離れた高水準で、この2校が突出して優れていることはすでに明らかです。受験生・保護者にとって本当に有用な情報は、残り15校のなかでどの大学が相対的にどの位置にいるかです。2校を含めて全17校で平均すると数字が引き上げられ、15校の中での違いが見えにくくなってしまうため、当サイトでは比較用の平均値として15校の算術平均を採用しています。

なお、ランキングの順位については本サイト全体で一貫して「私立17大学中◯位」で表記しています。15校に絞ったランキングを作っているわけではなく、あくまで比較用の平均値として15校の算術平均を使う、という整理です。

昭和医科大学は、2025年4月に昭和大学から改称しました(旧:昭和大学歯学部)。本記事以降では新名称で統一します。

10年推移:第109回〜第118回

私立15大学平均のストレート合格率は、直近10年間で次のように推移しています。

回次実施年私立15大学平均
第109回2016年36.13%
第110回2017年38.73%
第111回2018年37.16%
第112回2019年43.65%
第113回2020年43.90%
第114回2021年43.71%
第115回2022年39.85%
第116回2023年40.74%
第117回2024年40.23%
第118回2025年42.13%

第112回以降は40%台前半での推移が続いています。ただし、第119回(2026年2月実施)については、厚生労働省が公表した合格者数が前年より減少しており、最終的な修業年限内合格率(文部科学省集計)が公表された際に平均が低下する可能性があります。断定は避け、データが出そろった段階で改めて評価します。

10年分の各大学別の推移と増減傾向は、私立17大学ストレート合格率推移(109〜118回)で確認できます。


新卒合格率 vs ストレート合格率:乖離ランキング(第118回・第117回)

結論:新卒合格率とストレート合格率の乖離は最大66ポイント(第118回・松本歯科大)。「広報数字」と「入学者の実態」の差を理解することが、大学選びの第一歩です。

乖離の仕組み:3層構造で理解する

新卒合格率とストレート合格率の乖離は、入学から国家試験合格までの「ふるい落とし」の結果として発生します。入学者100人を出発点とするモデルで、次のように整理できます。

【第1層】入学者100人(ストレート合格率の分母)
     ↓ 留年・退学でふるい落とされる
【第2層】6年で卒業した学生 → 新卒受験者:例として60人
     ↓ 新卒合格・不合格
【第3層】6年で卒業かつ国家試験に合格した学生 → 例として57人
          これが「ストレート合格率」の分子

この例で計算すると、

  • 新卒合格率 = 57 ÷ 60 = 95.0%(高く見える)
  • ストレート合格率 = 57 ÷ 100 = 57.0%(入学者ベース)

新卒合格率とストレート合格率の差は38ポイントです。この例の数値はあくまでイメージ用で、実際の大学別の乖離は次の表で確認します。

乖離ランキング(第118回・全17大学)

第118回での新卒合格率とストレート合格率を並べ、乖離幅で整理した表です。

大学名新卒合格率(第118回)ストレート合格率(第118回)乖離幅
松本歯科大学90.7%24.7%66.0pt
日本歯科大学(新潟)88.7%35.4%53.3pt
大阪歯科大学100.0%46.9%53.1pt
朝日大学95.9%45.7%50.2pt
北海道医療大学91.7%43.4%48.3pt
明海大学83.8%37.5%46.3pt
日本歯科大学(東京)93.3%51.9%41.4pt
神奈川歯科大学79.1%40.7%38.4pt
鶴見大学68.8%33.3%35.5pt
日本大学71.4%45.3%26.1pt
昭和医科大学97.7%71.9%25.8pt
奥羽大学69.6%45.5%24.1pt
日本大学(松戸)61.0%38.6%22.4pt
岩手医科大学54.1%32.0%22.1pt
東京歯科大学96.9%75.0%21.9pt
愛知学院大学85.4%63.9%21.5pt
福岡歯科大学53.5%47.1%6.4pt

出典:厚生労働省「歯科医師国家試験第118回 大学別合格状況」・文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果」

この表から見えてくるポイントは3つあります。

1つ目:乖離が最大の松本歯科大は66ポイント

新卒合格率90.7%とストレート合格率24.7%の差は66.0ポイント。新卒受験までたどり着いた学生はほぼ合格していますが、そもそも新卒受験まで到達する学生が少ないことを意味します。入学者85人のうち、6年で国試合格まで届いたのは21人だけです。

2つ目:大阪歯科大の「新卒合格率100%」の構造

大阪歯科大学の新卒合格率100%は、6年次在籍者から絞り込まれた新卒受験者60人全員が合格したことによるものです。入学者128人を分母にしたストレート合格率は46.9%で、乖離は53.1ポイント。分母をどこまで絞り込むかで、公表される「合格率」がここまで変わる典型例です。

3つ目:乖離が最も小さいのは福岡歯科大(6.4ポイント)

福岡歯科大は新卒合格率53.5%・ストレート合格率47.1%で、2つの指標がほぼ一致しています。これは修業年限内卒業率が58.8%と比較的高く、卒業まで残った学生のうち国試を通過する割合も安定していることを示します。第118回時点で新卒合格率が他校より低めに見えていたのは、6年次在籍者105人のうち99人が新卒受験するなど、新卒受験者をほとんど絞り込んでいなかったことの裏返しで、大阪歯科大と対照的な構造です。なお、第119回(2026年2月実施)では新卒出願者81人に対し新卒受験者は68人と絞り込みが入っており、新卒受験者の絞り込み運用は大学ごとに異なるだけでなく、同じ大学でも年度によって変わりうる点には留意が必要です。

同じ「合格率」という言葉でも、分母の絞り込み方で数字は大きく変わります。複数の大学を比較するときは、どちらの指標をどのような分母で公表しているかを必ず確認してください。

第117回との2年比較:単年度の偶然ではない

乖離が単年度の偶然ではなく構造的な傾向であることを確認するため、ストレート合格率の変化が大きい上位5校について、第117回との比較を見ます。

大学名ストレート合格率(第117回)ストレート合格率(第118回)変化幅
朝日大学29.7%45.7%+16.0pt
鶴見大学23.9%33.3%+9.4pt
神奈川歯科大学35.3%40.7%+5.4pt
北海道医療大学38.6%43.4%+4.8pt
松本歯科大学28.1%24.7%-3.4pt

出典:data/raw/national-exam/straight_pass_rate.csv(第117回・第118回)

朝日大学は第117回から第118回にかけて+16.0ポイントの大幅上昇、鶴見大も+9.4ポイントの回復基調を示しています。一方、松本歯科大はすでに低水準だったストレート合格率がさらに下がる形で推移しています。単年度の結果だけで「良い大学/悪い大学」と判断するのは危険で、複数年の推移と乖離の両方を見る視点が欠かせません。

10年分のストレート合格率推移を大学別に確認したい場合は、私立17大学ストレート合格率推移(109〜118回)で一覧できます。


受験生・保護者が引っかかる「3つのからくり」

結論:大学の「合格率」表示で読み取れない情報は、3パターンに分類できます。分母の操作・時系列の罠・大学全体の数字では見えない個別リスク。この3パターンを知るだけで、数字の読み方が変わります。

からくり①:分母の絞り込み

本質はシンプルで、分母を小さくすれば分子の比率は自動的に上がるという算数の問題です。

パターンA:新卒合格率の使用

すでに解説したとおり、新卒合格率は留年者・退学者を分母から除きます。第118回の乖離表で見たとおり、同じ大学でも新卒合格率とストレート合格率では最大66ポイントの差が出ます。

パターンB:卒業見込者の段階での絞り込み

6年次在籍者から新卒受験者を絞り込む運用がある大学も存在します。大阪歯科大の例(6年次在籍138人 → 新卒受験者60人 → 新卒合格率100%)がわかりやすい構造で、分母を絞ったことで高い新卒合格率が実現しているわけです。これが不正というわけではなく、国試受験資格審査で合格可能性が十分ではないと判断された学生を一度足踏みさせる、という運用の結果です。

ただし、どの段階でどのように絞り込まれるかは大学ごとに運用が異なり、透明性にも差があります。受験生・保護者としては、「新卒合格率の分母は何人ですか」「6年次在籍者のうち何人が新卒受験しましたか」を確認する価値があります。

対処法:新卒合格率だけでなくストレート合格率も必ず確認する。可能であれば、新卒受験者数と6年次在籍者数の両方を公式サイトで確認する。

からくり②:時系列の罠

2つ目のからくりは、1〜2年の好調期の数字を「直近実績」として前面に出すパターンです。

第117回と第118回のストレート合格率で比較すると、次のようなケースがあります。

  • 愛知学院大:第117回47.9% → 第118回63.9%(+16.0ポイントの大幅上昇)
  • 朝日大学:第116回50.8% → 第117回29.7% → 第118回45.7%(第117回は一時的に低迷)

第117回の朝日大学の数字を見ると29.7%ですが、第118回では45.7%に回復しています。逆に第118回の愛知学院大の63.9%を見て「この水準が続く」と判断すると、第116回・第115回の水準(それぞれ別記事で確認可能)と乖離する可能性があります。

「最新の1回だけ」のデータで大学を評価すると、単年度の揺れを実力と誤認する危険があります。私立歯学部のストレート合格率は上位2〜3校を除いて団子状態にあり、単年度で数人の合格者増減で順位が大きく入れ替わる構造です。

対処法:複数年の推移を必ず確認する。私立17大学ストレート合格率推移(109〜118回)で10年分の推移を一覧できます。

からくり③:大学全体の数字で個別のリスクが見えない

3つ目のからくりは、大学全体のストレート合格率は中位でも、特定の学年で急に脱落が増えるケースが読み取れないことです。

例えば、私立17大学合計の留年率は令和7年度時点で次のような学年別の数字になっています。

学年私立17大学合計の留年率(令和7年度)
1年次7.6%
2年次18.8%
3年次23.5%
4年次31.9%
5年次35.1%
6年次41.8%

学年が上がるにつれて留年率は累積的に上がり、6年次では4割を超えます。なお、これは在籍学生のスナップショットなので、各学年の数字には前の学年からの足踏み組も含まれます。学年差分(その学年で新たに増える滞留)で見ると、1年次→2年次の+11.2ポイントが最大の段差で、次が3年次→4年次の+8.4ポイントです。つまりストレート進級者が最初に大きく振るい落とされるのは低学年、とくに1年次から2年次の壁であり、その次に4年次のCBT・OSCEや本格化する歯科専門科目という二段構えの構造です。

大学全体のストレート合格率が42%でも、入学した自分が低学年と4年次のどちらで・どの程度足踏みするかは大学ごとに違います。学年別の脱落パターンは個別記事で詳しく扱っています。

対処法:大学全体のストレート合格率に加えて、留年率・退学率の3指標をセットで確認する。特定学年で極端に数字が悪化していないかをチェックする。


数字のずれが「いくらの損失」につながるか

結論:新卒合格率90%を信じて入学した大学でストレート合格率が実際には25%だった場合、統計的に期待される留年年数は約2年。追加コストは約3,000万円になりうる計算です。

1,500万円の計算式(概要)

本サイトでは、留年1年の経済的損失を次の式で試算しています。

留年1年の損失 = 学費500万円 + 生活費200万円 + 機会損失800万円 = 1,500万円

  • 学費500万円:本サイトでは全大学共通の固定値として設定しています(実際の各大学の年額ではなく、論点をシンプルにするため)
  • 生活費200万円:1年間の私立歯学部生の生活費平均
  • 機会損失800万円:キャリア終盤の1年分の年収。留年で開始が1年遅れると、最後の年の高年収が消える考え方です

計算式の詳細な背景と数式モデル(幾何分布モデル)については、『私立歯学部の実質コストランキング|留年リスクを含めた本当の学費』で数式展開の予定です。公開後に本記事からもリンクします。

ストレート合格率と期待留年コスト

ストレート合格率が異なる大学で、統計的に期待される留年年数・追加コストを比較します。

ストレート合格率統計的期待留年年数期待追加コスト
25%約2年約3,000万円
50%約1年約1,500万円
75%約0.4年約600万円

出典:幾何分布モデルによる推計『私立歯学部の実質コストランキング』で解説)

計算根拠について補足します。この数値は平均的な期待値であり、個人の学習習慣・努力によって実際の結果は大きく変わります。ストレート合格率25%の大学でも、着実に進級する学生は6年でストレート合格します。逆にストレート合格率75%の大学でも、個別には留年する学生もいます。

あくまで「大学全体として期待される平均値」として参照してください。

保護者の方へ 歯学部受験の意思決定では、6年間の学費総額だけで比較されがちですが、上記の「期待追加コスト」を合算した実質コストで比較することをおすすめします。学費が安くてもストレート合格率が低い大学では、実質コストが逆転するケースが珍しくありません。学費ランキングと留年リスクを掛け合わせた実質コスト比較は、『私立歯学部の実質コストランキング|留年リスクを含めた本当の学費』で詳述しています。

私立17大学の学費 × 留年リスクの実質コスト比較については、2026年5月1日公開予定の『私立歯学部の実質コストランキング|留年リスクを含めた本当の学費』で詳しく解説予定です(対象は私立17大学)。歯科医師としてのキャリア終盤の年収水準については、歯科医師の年収データ(厚生労働省賃金統計)も参照してください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 新卒合格率とストレート合格率、どちらを参考にすべきですか?

入学を検討している段階であれば、ストレート合格率(修業年限内合格率)を優先して参照することを推奨します。新卒合格率は留年・退学者が分母から除かれているため、実際に入学して6年でストレートに国試合格できる確率より大幅に高く見えます。

なお、どちらの指標も公式データから算出されており、一方が「正確」でもう一方が「不正確」なわけではありません。目的と文脈によって使い分けるのが正確な解釈です。「卒業まで残った学生のうち国家試験を通過できる割合」を見るなら新卒合格率、「入学者のサバイバル確率」を見るならストレート合格率、という整理になります。ただし、新卒合格率が高くても留年・退学で途中離脱した学生が多い大学では、そもそも卒業まで残れた学生が少数派なので、在校生全体の学習の質を保証する指標ではないことに注意が必要です。

Q2. 新卒合格率が高い大学はなぜストレート合格率が低いことがあるのですか?

新卒合格率の分母は「その年度に卒業できた学生」のみで、留年中の学生と退学した学生は分母に入りません。ストレートで卒業できた学生の割合(修業年限内卒業率)が低い大学では、新卒受験者が入学者の半数以下になることがあります。

その状態で新卒合格率が90%であっても、入学者ベースで計算すると45%以下になります。分母が絞り込まれた結果として、新卒合格率は構造的に高く見えるのです。

Q3. ストレート合格率のデータはどこで確認できますか?

文部科学省「歯学部の修学状況等の調査結果(医学教育課調べ)」で公表されています。当サイトでは計算済みのデータを全29大学の修学状況ランキングで無料公開しています。全大学の10年分の推移については私立17大学ストレート合格率推移(109〜118回)をご確認ください。

Q4. 大学の公式サイトに掲載されている合格率は信頼できますか?

厚生労働省発表の公式統計(新卒合格者数・受験者数)に基づく数値であれば、数字そのものは信頼できます。ただし「どの合格率か」(新卒合格率なのかストレート合格率なのか)が明記されていない場合、そのほとんどは新卒合格率です。

受験生・保護者は大学案内で合格率の表示を見たときに、「分母は何人の学生ですか」「ストレート合格率は公表していますか」と問うことで、数値の実態をより正確に把握できます。

Q5. 留年率が低い大学ほどストレート合格率が高いのですか?

傾向としては相関がありますが、一対一の関係ではありません。留年率が低くても退学率が高い大学では、ストレート合格率も低くなるケースがあります。

また、留年率は「在籍学生ベース」のスナップショットであり、退学した学生は分母から除かれています。留年率・退学率・ストレート合格率の3指標をセットで見ることを推奨します(全29大学の修学状況ランキングを参照)。

Q6. 第119回(2026年2月実施)のデータはいつ反映されますか?

厚生労働省は国家試験合格発表後(例年3月)に大学別合格状況を公表します。文部科学省による修業年限内合格率(ストレート合格率)は修学状況調査として年末〜翌年にかけて公表されます。当サイトでは公式発表後に順次更新予定です。

なお、第119回は厚生労働省発表の合格者数が前年より減少しており、最終的な私立平均ストレート合格率は第118回の42.13%より低下する可能性があります。断定は避け、正式発表後に改めて評価します。


まとめ:どの数字で大学を選ぶべきか

結論:大学選びで見るべき数字の優先順位は、①ストレート合格率(修業年限内合格率)→ ②修業年限内卒業率 → ③退学率・留年率です。新卒合格率は参考値として補完的に使うのがおすすめです。

3つの指標の意味を改めて整理します。

  1. ストレート合格率:6年で歯科医師になれる確率(入学者ベース)
  2. 修業年限内卒業率:6年で卒業できる確率(入学者ベース)
  3. 退学率・留年率:入学後に辞めてしまう割合・足踏みする割合

この3指標をセットで見ることで、「6年で歯科医師になれる確率」「途中で脱落する確率」「卒業試験・国家試験それぞれの厳しさ」という大学選びに必要な情報がそろいます。

新卒合格率は、どうしても参照したい場合には「卒業まで残った学生のうち国家試験を通過できる割合」を示す補完指標として使うのが良いでしょう。留年・退学で離脱した学生が多い大学では、新卒合格率の高さが在校生全体の学習の質を保証するわけではない点に注意してください。受験生・保護者が意思決定の中心に置くべき指標ではない、という認識が出発点です。

低学年からしっかり学習習慣を身につけ、着実に進級すれば、どの大学からでもストレート合格は十分に狙えます大切なのは、パンフレットの「合格率90%以上」という表示を鵜呑みにせず、公式データから算出されたストレート合格率を確認することです。この記事が、その出発点になれば幸いです。


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歯学部受験情報館を運営しているシカラボです。 教育機関で10年以上、歯学部に関するデータを扱ってきました。 入学者ベースのストレート合格率・留年率・退学率など、見落とされやすい指標を、 厚生労働省・文部科学省・各大学公式サイトの一次資料から継続的に分析しています。
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