2026

浪人合格率が27%へ急落…。第119回歯科医師国家試験の残酷なデータと「現役合格」が絶対条件な理由

kameman

第119回歯科医師国家試験は合格者が激減し、既卒(浪人)合格率が27.8%へ急落する過酷な結果となりました。本記事ではデータに基づき「n浪の壁」や不適切問題の影響を徹底分析。歯学部生・受験生が「現役合格」を勝ち取るための確実な学習戦略と防衛策を解説します。
なお、第119回歯科医師国歌試験における、大学別の合格率ランキングが気になる方は、「【第119回国試発表】新卒合格率ランキング公開!でも「信じてはいけない」理由。大学選びで真に見るべき数字とは?」の記事でまとめていますので、是非ご覧ください。

第119回国家試験の衝撃 ― 合格者数急減と「既卒者」への影響

3月16日に発表された第119回歯科医師国家試験の結果は、受験者や関係者に大きな衝撃を与えました。一言で表すならば、「新卒者の合格率は保たれたが、既卒者の合格率が急減した試験」です。

1. 過去10年で最低、合格者「1,757名」の衝撃

まず直視すべきは、最終的な合格者数です。前回の第118回では2,136名が合格しましたが、今回は1,757名と、わずか1年で379名もの合格者が減少しました。

これまでの過去10年で一番合格者数が少ない年でも、1,969名だったことから、今回が際立って低い数字であることがわかります。受験者数自体も、これまでの3,000名台から2,837名へと減少していますが、それ以上に「合格の枠」そのものが絞り込まれた印象です。また、全体合格率61.9%という数字は、過去10年の水準(61.6〜70.3%)の下限にあたり、率としても、近年では最も合格しにくい回の一つとなりました。第119回歯科医師国家試験では、全体の受験者数が減少したこともあり、合格者数ではなく、合格率を目安にしながら、合格基準が設定された可能性があると考えます。

2. 新卒受験者減少の真相 ― 大学の選別ではなく「母集団そのものの減少」

今回の新卒受験者数は1,849名と、前回(1,973名)から124名減少しました。これについて「大学側が合格率を維持するために卒業判定を厳格化した」という見方もできますが、そもそも、今回の新卒出願者数自体も前回より約123名少ない状況でした。そのため、昨年と比較して、大学の卒業判定が厳しかったわけではなく、6年生として在籍している学生数そのものが、この学年において、昨年よりも少なかったと考えられます。

3. 「入り口」から始まる縮小の波 ― 120回以降への展望

この母集団の減少は、一過性のものではありません。文部科学省のデータに基づくと、歯学部の入学者数は以下のように推移しています。

  • 令和2年度入学者:2,342人(今回の119回受験世代)
  • 令和3年度入学者:2,197人(次回の120回受験世代)

入学段階で既に約150名の減少が見られることから、来年の第120回試験においても、新卒の受験者数はさらに減少する可能性が高いと言えます。今回、全体の合格者数は大きく減少しましたが、新卒合格率はかろうじて80%を超える水準でした。仮に、新卒合格率80%程度を目安に合格基準を設定されているとした場合、新卒受験者の数の減少が見込まれる次の120回試験においても、今年と同じく合格者数が1,700人台に抑えられてしまうリスクも想定しておく必要があります。

4. 既卒合格率27.83% ― 合格者減少の影響が大きかった既卒受験者

新卒の母集団が減少し、新卒合格率が80.15%と一定の水準を維持した一方で、合格率が急減したのは既卒者でした。
今回の既卒合格率は、前回(44.9%)から半減に近い27.8%を記録しました。全体の合格枠が1,700名台まで圧縮される中で、新卒者がその大半を占めた結果、浪人生が合格を勝ち取るための枠が減少しています。

今後も合格者数が1,700名台となることが継続される場合、既卒者の合格率は、今後も低い水準になってしまうことが予想されます。

歯科医師国家試験 合格者数・合格率の推移

加速する「n浪の壁」 ― 過去5年で最も過酷な既卒者選別

新卒で合格できずに再挑戦している国試浪人生にとって、第119回は前回までと比較して非常に厳しい結果となりました。結果について、比較表を見ながら確認していきましょう。

1. 受験回数別合格率:過去5年間の詳細比較表

過去5年間の受験回数別合格率を並べると、第119回の特異性が明確になります。

受験回第115回第116回第117回第118回第119回
1回目(新卒)77.10%77.30%81.50%84.00%80.15%
2回目(1浪)54.00%63.80%58.50%61.90%42.75%
3回目(2浪)36.36%41.01%41.30%52.74%31.25%
4回目(3浪)27.59%38.69%33.06%38.95%26.09%
5回目(4浪)27.66%30.49%23.75%32.43%19.64%
受験回数別合格率:過去5年間の詳細比較表

2. 「2回目受験」の歴史的下落

注目すべきは「2回目受験」の合格率です。第116回〜第118回までは概ね6割前後で推移していましたが、今回は42.75%まで急落しました。
これは、過去5年で最も厳しい結果となっています。

3. 「3回目・4回目の壁」がより高く

3回目受験(2浪)以降の合格率もかなり低下しています。

  • 3回目: 前回52.74%から31.25%へ(21.49ポイント低下)
  • 4回目: 前回38.95%から26.09%へ(12.86ポイント低下)

一度合格の波に乗り損ねると、翌年以降にその差を埋めることが年々難しくなっています。合格枠が「1,757名」まで絞り込まれた結果、新卒者がその枠の8割以上を確保し、残りのわずかな枠を既卒生が勝ち取ることが困難であった試験となりました。

4. なぜ既卒生(浪人生)の合格が困難なのか

「集団の力」を失う孤独な戦い 

合格者数が絞られる厳しい状況下でも、新卒生が高い合格率(80.15%)を維持できた最大の要因は、同じ目標を持つ同級生と刺激し合える学習環境にあると考えられます。教え合い、競い合い、時に不安を共有できる「集団のダイナミズム」は、学習への大きな推進力となっています。

モチベーション維持という最大の難問 

一方で既卒生は、大学という強制力のある環境から離れ、徹底した自己管理による学習が求められます。1浪目は「次こそは」という悔しさをバネにできても、2浪、3浪と重なるにつれ、将来への不安、反復的な学習内容、周囲から取り残される焦燥感によって、精神的なエネルギーは確実に削られていきます。

 第119回のデータが突きつけたのは、歯科医師免許取得において「新卒での合格を逃すと、その後の合格難易度が飛躍的に上がる」という厳しい現実です。

歯科医師国家試験:回数を重ねるほど合格が困難に

第119回国家試験「過去最多22問」の不適切問題 ― 必修80問のうち11問の「不備」と合格ラインの厳格化

第119回歯科医師国家試験において、「採点除外(削除)および正答訂正」が合計22問という、過去11年間で最多の不適切問題を記録しました。

1. 過去11年で最悪の数値 ― 22問の衝撃

提供された第109回以降の不適切問題の合計数は8〜20問程度で推移してきました。
これまで最多だったのは第114回の20問でしたが、今回はそれを上回る22問
合格者数が1,757名と激減した年に、試験問題の質そのものが過去最悪レベルで揺らいだ事実は、受験生にとって、納得できない部分も多かったのではないでしょうか。

2. 必修80問の「不備率13.7%」 ― 採点除外による分母の変動

受験生にとって最も致命的なのは、絶対基準として「80%以上の得点」が課される必修問題(全80問)の取り扱いです。今回の必修における不備は以下の通りです。

  • 必修・削除(採点除外):8問(うち、採点対象から完全に外れる「完全削除」は3問:A9, B20, D6)
  • 必修・正答訂正:3問
  • 必修不備・合計:11問

必修問題80問のうち、13.7%にあたる11問において出題側の不備や正答の揺らぎがあったことになります。

3. 「64/80」から「62/77」へ ― 切り上げルールが生んだ「許容誤答数」の減少

通常、必修の合格基準は64点(80点の80%)です。しかし、今回3問が完全削除されたことで、採点対象となる分母は「77点」に減少しました。ここで歯科医師国家試験の「合格基準は切り上げ」というルールを適用すると、驚くべき事実が浮かび上がります。

  • 計算式:77点 × 80.0% = 61.6点
  • 合格基準点:62点(小数点以下切り上げ)

本来、80問ベースであれば「16問」までの誤答が許容されていました。しかし、分母が77問になり基準点が62点となった今回、誤答が許されるのは「15問」までへと厳格化されたのです。数値上、合格のハードルはむしろ高まったと言えます。

【具体例:削除が合否を分ける】

必修80問のうち、削除された3問を除いた「77問」の自己採点が61点(誤答16問)、あるいは62点(誤答15問)だった当落線上の受験生を比較してみましょう。

  • 受験生Aさん:削除された3問を「自力で正解」していた場合
    残り77問で61点のAさんは、本来の80問ベースであれば「61+3=64点」となり、合格でした。しかし、その3問が削除されたことで**「正解していた3点」が消滅**。合計は61点のままとなり、引き上げられた基準点62点に届かず、不合格に転落します。
  • 受験生Bさん:削除された3問を「間違えて」いた場合
    残り77問で62点のBさんは、本来の80問ベースであれば「62+0=62点」で、本来は不合格(基準64)でした。しかし、3問が削除されたことで分母が減り、62点のまま合格へと逆転します。削除が「本来の失点を消し去る福音」となった形です。

※問題の不備ゆえの削除であり、そもそも正答が存在しない可能性もありますが、一旦その点は考慮外としても、受験生の合否が「どの問題を削除対象にするか」という、本人の努力ではコントロール不可能な「運」に左右されてしまった事実は揺らぎません。

4.不適切問題を「前提」とした学習の重要性

とはいえ、不適切問題によって合格ラインが揺れ動く現状では、「出題ミスがないこと」を前提にして不満を抱いても仕方がありません。試験の内容や採点は、受験生にはコントロールできない部分だからです。受験生にできるのは、こうした試験の現状を理解したうえで、確実に取れる問題を一つでも多く増やすことです。試験制度の改善などは外部の動きに任せ、自分自身の学習にただ集中しましょう。不適切問題の扱いがどう転んでも合格ラインを超えられるだけの「揺るぎない実力」を身につけることこそが、受験生にできる範囲では、最善の防衛策になります。

歯科医師国家試験:不適切問題(削除・訂正)数の推移

男女別の合格動向

歯科医師国家試験のデータを性別という切り口で観察すると、毎年のように繰り返される非常に顕著な傾向が見て取れます。今回の第119回試験においても、その傾向は例外ではありませんでした。

1. 受験者数の比率:およそ「6:4」の構成

まず、受験者数全体のボリュームを見てみましょう。
今回の第119回試験では、男性受験者が1,654名、女性受験者が1,183名となっており、比率としてはおよそ6対4で男性が多い状況です。この比率は過去10年以上の推移を見ても大きく変わっておらず、歯科医師を目指す母集団の基本的な構造と言えます。

2. 合格率に現れる「約10ポイント」の開き

一方で、合格率に目を向けると、男女間で明確な格差が継続しています。

  • 男性合格率:57.56%
  • 女性合格率:68.05%

今回の試験においても、女性の合格率が男性を約10.5ポイント上回る結果となりました。
過去11年間の推移を遡っても、女性の合格率が男性を5〜10%程度上回り続けるという構図は一度も崩れていません。全体合格率が激減し、既卒者が苦戦した今回の厳しい条件下においても、女性は相対的に高い合格水準を維持しています。

歯科医師国家試験:男女別受験者数と合格率の推移

終わりに:第119回の結果が受け止められない・・

第119回歯科医師国家試験の結果を総括すると、そこには「試験が難しかった」という言葉だけでは片付けられない、構造的な懸念事項があります。

1. 予想を裏切る「合格者1,757名」の衝撃

今回の合格者数が1,700名台まで落ち込んだことは、大きな衝撃でした。
近年、歯科医療の現場では「訪問歯科診療」をはじめとするニーズの多様化が進んでいます。また、都心部への歯科医師集中といった「偏在問題」を解決するため、需給バランスの見直しを求める論調も一部で見られました。こうした背景から、合格者数は大きく増えずとも、少なくとも現状を維持する(2,000名程度)ものと予測していましたが、結果はその期待を大きく裏切る強烈な「絞り込み」となりました。

2. 「入り口」への冷や水 ― 私立大学が直面する経営的リスク

もう一点、非常に懸念しているのが今後の歯学部志願者の動向です。
ここ2年ほどのデータでは、歯学部を目指す学生が微増に転じる兆しも見えていました。しかし、新卒合格率が80%を維持したとはいえ、合格者総数がここまで激減し、既卒合格率が3割を割るという「出口の狭さ」を見せつけられたことは、志望者やその保護者にとって大きな心理的障壁となります。

来年以降、歯科医師を目指す志願者が再び減少に転じる可能性は否定できません。特に、定員確保と国家試験合格率の両立に苦しむ私立大学にとっては、これまで以上に厳しい逆風が続く「冬の時代」が到来するのではないかと危惧しています。

3. 「新卒合格」が唯一の生存戦略

既卒合格率27.83%という数字は、一度レールを外れた際の復帰がいかに困難であるかを物語っています。第2章で触れた「n浪の壁」は、環境を失い、モチベーションの維持が困難になる中で、統計的な絶望として現れます。
大学という最高の学習環境、そして仲間という集団の力を最大限に活用できる「新卒」のうちに、確実に合格を掴み取ること。これが、歯科医師としてのキャリアを守るための唯一無二の戦略です。

4. 最後に:運を排除する「圧倒的な学習習慣」を

過去最多となった22問の不適切問題や、削除問題による合格基準の変動は、試験の不確実性を高めました。しかし、この「運」に左右されたのは、常にボーダーライン付近にいた受験生たちです。
低学年からの誠実な積み重ねによって「圧倒的なマージン(余裕)」を築き上げた層にとって、こうしたノイズは合格を揺るがす要因にはなり得ません。

データは残酷ですが、真実です。現在、歯学部で学んでいる学生のみなさんは、今回の第119回の厳しい結果を「自分ごと」として捉え、日々の勉強に向かうための強いモチベーションに変えていきましょう。

そして、これから歯学部を目指す受験生のみなさんも、決して過度に不安になる必要はありません。国家試験のハードルは確かに高いですが、入学後からコツコツと学習習慣を身につけていけば、必ず現役合格を勝ち取ることができます。どのような試験環境であっても、結局のところ合否を分けるのは「毎日の積み重ね」です。未来の歯科医師を目指して、日々の学習にしっかりと取り組んでいきましょう。

なお、第119回歯科医師国歌試験における、大学別の合格率ランキングが気になる方は、「【第119回国試発表】新卒合格率ランキング公開!でも「信じてはいけない」理由。大学選びで真に見るべき数字とは?」の記事にまとめていますので、是非ご覧ください。

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入試・教育データの分析を専門
入試・教育データの分析を専門とし、10年以上にわたる継続的な調査研究を行っています。 歯学部受験において、受験生が本当に知るべき「数字の真実」を中立に伝えるためのメディアです。国、自治体、各大学が公表する一次資料を徹底的に精査し、新卒合格率だけでは見えないストレート合格率や留年リスクを可視化。16年分の蓄積データに基づき、後悔しないための大学選びをサポートします。数字の背景や注意点まで含めて詳説し、偏差値に偏らない客観的で実用的な指標を提供することが使命です。
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