2025

【保存版】私立歯学部ストレート合格率推移(過去16年分)|偏差値では見えない「進級と国試」の真実と格差

kameman

私立歯学部の受験を考える際、多くの受験生と保護者が最も気にする指標は「国家試験合格率」でしょう。
大学のパンフレットやホームページには、「新卒合格率90%以上!」「全国トップクラスの実績!」といった華々しい数字が並んでいます。

しかし、データを紐解くと、そこには「数字のカラクリ」が存在します。
その高い合格率の裏で、何人の学生が留年し、何人が退学し、何人が卒業試験でふるい落とされたのか――。表向きの数字からは、入学した学生が「6年間でスムーズに歯科医師になれる確率」は見えてきません。

本記事では、文部科学省が公表している公式データに基づき、私立歯学部全17大学の「ストレート合格率(最低修業年限での国家試験合格率)」の推移を徹底分析しました。

「ストレート合格率」とは、入学した学生が、一度も留年・休学することなく6年間で卒業し、その年度の国家試験に合格した割合のことです。

私立歯学部の学費は6年間で約2,000万円〜3,000万円。
もし1年留年すれば、追加の学費と生活費、そして歯科医師としての1年分の逸失利益(年収)を合わせ、約1,500万円の経済的損失が発生します。

「偏差値が届くから」という理由だけで大学を選び、入学後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために。偏差値表からは見えない、各大学の「教育力」と「進級の厳しさ」の真実を公開します。

国公立大学のストレート合格率の推移が知りたい方はこちらから
【保存版】国公立12大学「ストレート合格率」全推移を完全分析。〜偏差値では分からない「大学の興亡」がここにある〜|歯学部受験情報館


【歴史の転換点】「107回ショック」とは

私立歯学部のストレート合格率推移を見る前に、現在の厳しい状況を決定づけた出来事を知る必要があります。
それが、2014年(平成26年)に実施された第107回歯科医師国家試験、通称「107回ショック」です。

それまでの国家試験は、合格率が概ね70%〜80%台で推移しており、「歯学部に入って真面目に勉強していれば、多くの学生は受かる」という時代でした。
しかし、この第107回で潮目が完全に変わりました。

■ 歯科医師過剰問題への本格対応

この急激な変化の背景には、厚生労働省による方針転換があります。将来的な「歯科医師過剰問題」に対応するため、国家試験の合格基準を厳格化し、合格者数を絞り込むことで歯科医師の需給調整へと明確に舵が切られたのです。

結果として、第106回の合格率71.2%から、第107回では63.3%へと急落。合格者数は1年で300人以上も減少しました。

■ 私立大学のデータが示す「2割〜3割」への転落

この方針転換の影響を如実に受けたのが、一部の私立歯学部でした。
今回集計した文部科学省のデータ(最低修業年限での合格率)を確認すると、この年からストレート合格率が極めて低い水準にまで落ち込む大学が現れ始めました。

  • 奥羽大学: 第106回(41.7%)から、107回では28.1%へ下落。
  • 松本歯科大学: 第106回(8.5% ※前々年より低迷)から、107回も20.0%と低水準が継続。
  • 神奈川歯科大学: 第106回(44.2%)から、107回では32.5%へ下落。

このように、複数の大学において「入学者の3人に1人もストレートで受からない」という2割〜3割台の数字が、データとして明確に記録されました。

■ 現在へと続く低合格率の起点

この「107回ショック」を起点として、多くの私立大学においてストレート合格率は50%を割り込む水準で固定化されることになります。
近年のデータで見られる「厳しい進級判定」や「特定の学年での脱落者数の増加」といった傾向は、この方針転換以降、多くの大学が国家試験合格率を維持するために、より慎重な進級・卒業判断を行わざるを得なくなった状況を反映していると考えられます。

【分析の前提】データの定義と「トップ2除外」の理由

本記事で提示するグラフや数値は、以下の定義とルールに基づいて算出しています。

  • データの出典: 文部科学省 医学教育課「各大学歯学部の入学状況及び国家試験結果」(平成24年度~令和7年度公表分)
  • 指標:「最低修業年限での国家試験合格率(ストレート合格率)」
    • 入学してから一度も留年・休学せず、ストレートの6年間で卒業し、その年度の国家試験に合格した者の割合です。

東京歯科大・昭和大の「平均除外」について

本分析では、あえて「東京歯科大学」と「昭和医科大学(旧:昭和大学)」の2校を計算から除外し、残りの「私立15大学」で平均値を算出しています。

なぜ、トップ2を除外するのか?

理由は、この2校の実績があまりにも突出しすぎているからです。
東京歯科大と昭和大は、長年にわたり国立大学に匹敵するストレート合格率(70%~80%超)を維持しており、私立の中では「別格」の存在です。

これらを含めた「私立全17大学の平均」を計算すると、第118回では45.8%となります。しかし、トップ2を除いた「15大学の平均」は42.1%まで低下します。

  • 私立全体の平均(17校): 45.8%
  • トップ2を除く平均(15校): 42.1%

多くの受験生が進学することになる「トップ2以外の大学」の実力を測るには、この「42.1%」という数字こそが、嘘偽りのない「リアルな合格確率(生存率)」となります。
本記事ではこの数値を基準(ボーダーライン)として、各大学の状況を分析していきます。

【別格】東京歯科・昭和医科は「国立」として扱え

まずは、別格の2校の推移を見てみましょう。

東京歯科大学:不動の王者

16年間にわたり一度も65%を下回ることなく、ほぼ常に70%台のストレート合格率を維持しています。
特筆すべきは、「107回ショック」の影響すら全く感じさせない点です。国家試験の難化に関わらず、揺るがない教育システムが確立されています。
令和元年入学者の追跡データを見ても、ストレートで卒業した96名全員が国家試験に合格しており(合格率100%)、学費に見合うだけの確実性があります。

昭和医科大学(旧:昭和大学):無傷の安定感

昭和医科大学もまた、私立平均のはるか上空を安定飛行しています。
第107回の際も微減に留め、直近の第118回でも71.9%と、国立大学平均(約75%)に肉薄する高い水準です。
留年に陥る学生も少なく、「入学者をしっかり教育して、高い確率で卒業・合格させる」という、大学教育としてあるべき姿が実現されています。

【実態解明】私立15大学の「真の平均」と各大学の推移

ここからは、トップ2を除いた残り15大学について、北から順に詳細を見ていきます。
15大学平均「42.1%」という厳しい数字の中で、どのようなドラマがあるのでしょうか。

1. 北海道・東北エリア

北海道医療大学

  • 最高値: 56.3%(第113回)
  • 最低値: 29.2%(第109回)
  • 直近値: 43.4%(第118回)
【分析】「107回ショック」からの脱却と、新たな停滞

第109回に29.2%まで急落しましたが、その後V字回復。しかし、ここ数年は私立15大学平均(赤点線)のライン前後を行き来しており、「40%台前半の壁」を突破できずに足踏みしている状態です。

■ 追跡調査:83人が入学し、6年後に残ったのは43人

なぜ、ストレート合格率が伸び悩むのか。その原因は**「進級の厳しさ」**にあります。
令和元年(2019年)に入学した学生たちの「その後」を追跡したデータを見ると、過酷なサバイバルレースの実態が見えてきます。

  • 1年生(入学時):83名
  • 2年生進級時:66名(いきなり17名が脱落)
  • 6年生進級時:43名

入学時には83名いた同期が、1年終了時点で66名に減り、最終的にストレートで6年生になれたのは43名(約51%)しかいません。
国家試験を受ける以前の問題として、
「6年生の教室にストレートでたどり着けるのが、そもそも2人に1人」
という厳しい選抜が行われているのです。

岩手医科大学

  • 最高値: 55.9%(第112回)
  • 最低値: 25.5%(第115回)
  • 直近値: 32.0%(第118回)
【分析】定員割れと「低学年・中学年」での徹底的な絞り込み

近年、私立平均を下回る推移が続いています。特に第115回には25.5%を記録し、直近の第118回でも32.0%と厳しい状況にあります。

■ 追跡調査:50名が入学し、6年生になれたのは20名

令和元年入学者の追跡データから、この大学の「選抜のタイミング」が明確に見えてきます。

  • 1年生(入学時):50名
  • 2年生進級時:40名(10名留年・退学)
  • 5年生進級時:21名(4→5年進級時に8名減)
  • 6年生進級時:20名

入学した50名のうち、ストレートで6年生の教室にたどり着けたのは20名(40.0%)でした。1年次と、CBTがある4年次の前後で徹底的に学生を絞り込み、基準を満たした少数精鋭だけを最終学年に上げています。

■ 「全体の卒業留年率」が示すもう一つの現実

ストレートで6年生まで上がれた20名に関しては高い確率で卒業・合格できていますが、大学全体で見ると、令和6年度の卒業留年率は36.2%です。
ストレートで進級してきた学生が順調に卒業する一方で、
「留年を経験した学生は、卒業するのも容易ではない」
。一度躓くとリカバリーに相応の努力が必要となる厳しさをデータは示唆しています。

奥羽大学

  • 最高値: 59.1%(第113回)
  • 最低値: 24.0%(第112回)
  • 直近値: 45.5%(第118回)
【分析】V字回復と「6年連続平均超え」の安定感

かつては20%台に低迷していましたが、第113回で突如59.1%へV字回復。特筆すべきはその後で、直近の第118回(45.5%)に至るまで、6年連続で私立15校平均を上回り続けています。
かつての低迷期を脱し、中堅校の中でも安定した成績を残すポジションに定着しつつあります。

■ 追跡調査:定員96名に対し入学者44名、6年後の合格は20名

令和元年の入学者データを見ると、当時の入学定員96名に対し、実際の入学者は44名(定員充足率約46%)でした。

  • 1年生(入学時):44名
  • 5年生進級時:20名(4→5年進級時に8名減)
  • 6年生進級時:20名

最終的にストレートで6年生になり、卒業・合格したのは20名(45.5%)でした。
入学者数が少ないため、数名の留年が全体の「率」を大きく変動させる要因となりますが、特にCBT前後の3年次から5年次にかけての減少が目立ちます。

■ 6年生での「3割」の足止め

令和6年度のデータによると、6年生在籍総数67名に対し、卒業者は46名(卒業留年率31.3%)でした。特待生制度という入り口の魅力だけでなく、入学後には「進級のハードル」と「6年間の継続的な学習」が求められる環境です。

2. 関東エリア(東京歯科・昭和以外)

明海大学

  • 最高値: 68.3%(第104回)
  • 最低値: 28.9%(第108回)
  • 直近値: 37.5%(第118回)
【分析】3年連続30%台、広がる「平均」との距離

明海大学のデータ推移は、ここ数年で下降トレンドに入っています。第116回(38.3%)、第117回(39.2%)、第118回(37.5%)と、3年連続でストレート合格率が30%台に沈んでおり、私立15大学の平均ライン(赤点線)からも徐々に引き離されています。

■ 追跡調査:120名が入学し、6年生での脱落が顕著

令和元年入学者の追跡データを見ると、低学年での留年は比較的抑えられていますが、高学年で急激に振るい落としがかかる構造が見えます。

  • 6年生進級時:83名(入学時120名から約7割が到達)
  • 卒業者:47名

ストレートで6年生までたどり着いた83名のうち、卒業できたのは47名でした。約43%(36名)の学生が卒業試験などで留年となり、国家試験を受けることができませんでした。
「6年生になれば安心」ではなく、「6年生こそが最大の鬼門」であると言えます。

日本大学 歯学部

  • 最高値: 80.5%(第103回)
  • 最低値: 32.8%(第114回)
  • 直近値: 45.3%(第118回)
【分析】名門の苦闘、「80%時代」からの変化

15年前はストレート合格率80%超を誇る「絶対王者」でしたが、現在は40%台中盤での推移が定着しつつあります。私立15大学平均をわずかに上回る数値ですが、かつての名門としての実績を知る世代からすると、物足りなさを感じる数字かもしれません。

■ 追跡調査:2年生から3年生への進級が「鬼門」
令和2年入学者のデータを見ると、学生数が激減するタイミングがはっきりしています。

  • 2年生進級時:112名
  • 3年生進級時:74名

ここで38名(約34%)が一気に脱落しています。2年生から3年生に上がる段階が、第一の大きな関所となっています。
この大学の特徴は、「2年次終了時点」での絞り込みが極めて激しい
ことです。基礎系科目が集中するこの時期に、クラスの3割以上がストレート進級コースから脱落しています。

日本大学 松戸歯学部

  • 最高値: 61.7%(第105回)
  • 最低値: 24.7%(第109回)
  • 直近値: 38.6%(第118回)
【分析】予測不能の「ジェットコースター」推移

この大学のデータ推移を一言で表すなら**「乱高下」**です。
第114回(52.4%)→第115回(30.7%)→第117回(51.3%)→第118回(38.6%)と、10〜20ポイント近い変動を繰り返しています。
この「良い年」と「悪い年」の振れ幅の大きさは、受験生にとって「自分が受ける年がどうなるか読めない」というリスク要因となります。

■ 追跡調査:鬼門は「2年生」と「4年生」

令和元年入学者(114名)の追跡データでは、2つの大きな壁が確認できます。

  • 2年生→3年生: 23名脱落(約21%減)
  • 4年生→5年生: 16名脱落

入学者の約半数が途中で留年・退学し、ストレートで卒業できても、そこから国試に受かるのはさらに絞られます。「日大」というブランドや規模感は魅力ですが、入学後の進級ルートには大きな落とし穴があることを、データは警告しています。

日本歯科大学 生命歯学部(東京)

  • 最高値: 64.1%(第103回)
  • 最低値: 44.5%(第111回)
  • 直近値: 51.9%(第118回)
■ 【分析】伝統の「50%ライン」――ブランド力に見合う成果が出ているか

日本歯科大学(東京)のデータは、長年にわたり「50%前後」という極めて狭いレンジで安定しています。
特筆すべきは、多くの私立大学が打撃を受けた「107回ショック」の際も数値を落とさず、むしろ62.5%へと上昇させている点です。こうした危機下での安定感は、試験対策のノウハウが蓄積された伝統校ならではの底力と言えます。

■ 入試難易度に対する「物足りなさ」

しかし、近年のデータを入試難易度(入り口)と比較すると、別の側面が見えてきます。
本学部の偏差値は45.0(河合塾)と、私立15大学の中では上位グループに位置し、競争倍率も2倍以上を維持しています。それにもかかわらず、ストレート合格率は長らく50%付近で足踏みを続けています。

ここで、偏差値35.0(河合塾)ながら直近で63.9%を記録した愛知学院大学と比較すると、その差は歴然です。「入り口の難易度が高い日本歯科大学の方が、出口のストレート合格率で10ポイント以上下回っている」という逆転現象が起きています。

「2人に1人しかストレートで受からない」という数字は、本学部のブランド力や受験生のレベルからすれば、決して満足できる水準(合格効率)とは言えません。

■ 追跡調査:2年生進級時が最大の難所

令和元年(2019年)の入学者データ(129名入学)を追跡すると、学生が脱落するタイミングが明確です。

  • 1年生(入学時):129名
  • 2年生進級時:124名
  • 3年生進級時:100名
    • ここで24名(約19%)が減少しています。 2年生から3年生に上がるタイミングで、最初の大きな選抜が行われています。
  • 6年生進級時:82名

最終的に合格したのは67名(ストレート合格率51.9%)でした。
「一度も躓かずに6年生の教室にたどり着けるのが、入学者の約6割」という事実は、中堅以上の学力を持って入学した学生たちにとっても、決して容易な道のりではないことを示しています。
伝統の安心感に安住せず、低学年次からの徹底した自己管理が求められる大学です。

日本歯科大学 新潟生命歯学部

  • 最高値: 51.0%(第103回)
  • 最低値: 26.0%(第115回)
  • 直近値: 35.4%(第118回)
【分析】「東京」と同じブランド、全く異なる「現実」

同じ「日本歯科大学」の名を冠していますが、東京キャンパス(生命歯学部)と新潟キャンパス(新潟生命歯学部)のデータには明確な差があります。東京が概ね50%前後で推移しているのに対し、新潟は過去16年間のうち13回で40%を下回っており、苦戦が続いています。

第112回に44.4%まで回復した場面もありましたが、その後は再び下降し、直近の第118回でも35.4%に留まっています。受験生はイメージだけで選ぶのではなく、キャンパスごとに異なる現実を直視すべきです。

■ 追跡調査:4年生になるまでに「半数」が消える

令和元年入学者(65名)のデータを追跡すると、低学年次における学生減少のスピードが非常に速いことが分かります。

  • 1年生:65名
  • 4年生:31名

入学からわずか3年で、ストレート進級者が半数以下になっています。「国試直前の6年生で落ちる」のではなく、「基礎教育段階(1〜3年)でついていけずに脱落する学生が極めて多い」というのが、この大学の特徴です。

神奈川歯科大学

  • 最高値: 55.8%(第104回)
  • 最低値: 18.5%(第111回)
  • 直近値: 40.7%(第118回)
【分析】「18.5%の衝撃」からの脱却と、分厚い卒業の壁

第111回(2018年)に記録した18.5%という底値から、大学改革を経て徐々に水準を戻しています。直近の第118回では40.7%を記録し、私立15校平均(42.1%)に肉薄するラインまで回復しました。

■ 追跡調査:入学直後の「1年生」で2割が消える

令和元年入学者(118名)のデータでは、入学早々に厳しい選抜が行われています。

  • 1年生→2年生: 26名(約22%)脱落

さらに深刻なのは、6年生になってからの「卒業留年」の多さです。令和6年度の卒業留年率は38.5%
6年生までたどり着いても、約4割近い学生が卒業試験などで足止めを食らっています。入学直後の「早期選抜」と、卒業直前の「最終選抜」という二重のフィルターが、現在の回復傾向を支えていると言えます。

鶴見大学

  • 最高値: 61.7%(第104回)
  • 最低値: 13.2%(第109回)
  • 直近値: 33.3%(第118回)
【分析】13.2%の記録と、長期化する低迷

かつては60%近い合格率を記録していましたが、第107回以降に数字を落とし、第109回には13.2%という記録的な低水準となりました。その後改善傾向にありますが、現在に至るまで11年連続でストレート合格率が30%台以下という状況が続いています。

■ 追跡調査:入学直後に「4人に1人」が苦戦

令和元年入学者(84名)の追跡データでは、入学して最初の1年で20名(約24%)が留年・退学しています。
これは、専門教育のスタートラインである1年生の段階で、カリキュラムについていくのに苦戦する学生が非常に多いことを示しています。大学側が「理解不足のまま安易に進級させず、着実に知識を身につけさせる」という方針をとっているとも言えますが、学生にとっては入学直後から試練が始まります。

3. 中部・北陸エリア

松本歯科大学

  • 最高値: 53.3%(第110回)
  • 最低値: 8.5%(第106回)
  • 直近値: 24.7%(第118回)
【分析】8.5%からの回復と、近年の再低迷

第106回に8.5%という極めて低い数値を記録した後、第110回には53.3%まで回復しましたが、その勢いは定着せず、ここ数年は再び下降トレンドに入っています。直近の第118回では24.7%。入学者の約4人に3人が、ストレートでの国家試験合格に至っていないのが現状です。

■ 6年生の「半数近く」が卒業できない

ストレート合格率が伸び悩む大きな要因として、最終学年における進級判定の厳しさが挙げられます。
令和6年度のデータによると、卒業留年率は43.8%に達しています。6年生のクラスにいる学生の半数近くが、その年の春に卒業できていません。「1,800万円〜」という安価な学費設定は魅力ですが、出口での足止めにより、結果として在学期間の延長が発生しやすい環境であると言えます。

朝日大学

  • 最高値: 59.4%(第103回)
  • 最低値: 26.4%(第109回)
  • 直近値: 45.7%(第118回)
【分析】「50%」を巡る攻防と、油断できない乱高下

低迷期を脱し、3年連続で50%台をキープしていましたが、第117回(2024年)に突如29.7%へと急落。翌年の第118回ですぐに45.7%まで戻しましたが、この乱高下は受験生にとって「安定圏に入ったと安心しきるにはまだ早い」というシグナルです。

■ 6年間で「半数」が入れ替わる

令和元年入学者(129名)のうち、ストレートで卒業できたのは69名(53.5%)。
約半数の学生が、6年間のどこかで留年・退学を経験しています。特定の学年で大量に落とすというよりは、毎年コンスタントに厳格な判定が行われ、積み重なって半数になるというパターンです。

愛知学院大学

  • 最高値: 74.2%(第104回)
  • 最低値: 39.6%(第114回)
  • 直近値: 63.9%(第118回)
【分析】名門復活の兆し、「63.9%」への急上昇

今回の分析で最も注目すべき「V字回復」の大学です。
一時期は40%前後で低迷していましたが、直近で63.9%まで急上昇し、私立上位グループへと返り咲きました。

■ 4年生で絞り、6年生は守る

令和元年入学者の追跡データを見ると、4年生から5年生に上がる段階(CBT前後)で12名が減少していますが、ストレートで6年生まで進級した93名については、92名が卒業(卒業率98.9%)しています。
「低〜中学年で厳しく選抜し、6年生に上がった学生は大学が責任を持って卒業させる」というメリハリのある教育体制が、近年の好成績に繋がっていると考えられます。

4. 関西・九州エリア

大阪歯科大学

  • 最高値: 75.0%(第103回)
  • 最低値: 39.8%(第109回、第115回)
  • 直近値: 46.9%(第118回)
【分析】「合格率100%」の裏にある、驚くべきカラクリ

直近の第118回国家試験において、「新卒合格率 100%(受験者60名/合格者60名)」という驚異的な結果を出しましたが、その裏には他大学には見られない特殊な事情があります。

■ 卒業したのに「半分」が受験しない?

令和6年度のデータでは、120名が卒業しているにもかかわらず、国家試験を受けたのはその半数の60名だけです。
「卒業は認めるが、国家試験は受けさせない(あるいは学生が自主的に見送る)」というケースが半数近く発生しています。
受験生からすれば、「卒業できても、半分の確率でその年の国試は受けられない(=歯科医師になれるのは1年後以降)」というリスクを意味します。名門校のブランドは魅力的ですが、その数字の構成要素を正しく理解しておく必要があります。

福岡歯科大学

  • 最高値: 76.0%(第103回)
  • 最低値: 25.0%(第110回)
  • 直近値: 47.1%(第118回)
【分析】苦境からの脱却、そして「平均超え」の定着へ

第110回・第111回には25%台という底値を記録しましたが、そこから明確な上昇トレンドに入っています。
直近の第118回では47.1%を記録し、私立15大学平均(42.1%)を5ポイント上回りました。一時の低迷期を完全に脱し、現在は「平均以上の成績を安定して残せる大学」へと変貌を遂げています。

■ 偏差値との逆転現象

特筆すべきは、「入り口(入試偏差値)」に対して「出口(ストレート合格率)」の成績が良い点です。
大学側が入学後の教育に力を入れ、学生の学力を6年間で育成している例と言えるでしょう。

【まとめ】大学別・箱ひげ図で見る「実力と安定感」の格付け

最後に、過去16年間のデータを大学ごとに集約した「箱ひげ図」を見てみましょう。
このグラフは、各大学の「実力のベースライン(中央値)」「成績の振れ幅(箱とひげの長さ)」を一目で比較できる指標です。

1. 【別格】トップ2の揺るぎない安定感

左端の2校、東京歯科大学昭和医科大学をご覧ください。
箱の位置が圧倒的に高く、かつ箱の縦幅がコンパクトに収まっています。
これは、「いつ入学しても、どんなに国試が難しい年でも、安定して高い合格率を叩き出している」ことを証明しています。

2. 【中堅層】45〜50%前後で拮抗する伝統校・有力校

続くのが、日本大学、日本歯科大学(東京)、大阪歯科大学、愛知学院大学といったグループです。
これらは中央値(黄色の線)が概ね45〜50%台に位置しており、他校との差もそれほど大きくありません。「2人に1人がストレート合格できるかどうか」というラインで激しく拮抗しているのが私立歯学部の中核層の実態です。

3. 【振れ幅大】年度による変化が大きい大学群

福岡歯科大学、日本大学松戸歯学部、奥羽大学、朝日大学などは、箱やひげの縦幅が非常に長くなっています。
過去16年間の中で「50〜70%台の好調な時期」と「20〜30%台の苦戦した時期」の両方を経験しており、入学する年度によって成績の変動幅が大きいのが特徴です。

【※注:箱ひげ図では見えない「回復トレンド」】

ただし、箱ひげ図には「時系列」の情報が含まれません。
箱が長い大学の中には、単に乱高下しているだけでなく、明確な「回復トレンド(上昇気流)」に乗っている大学があります。
具体的には、愛知学院大学や福岡歯科大学です。これらは過去に一時的な低迷期がありましたが、直近数年では右肩上がりで数字を伸ばしており、箱の上端(高値)に近い成績を記録し始めています。
過去の「平均値」だけでなく、「直近の勢い」
を見ることが重要です。

4. 【苦戦】中央値が30%台に留まる大学群

グラフの右側に位置する岩手医科大学、神奈川歯科大学、鶴見大学、松本歯科大学、日本歯科大学(新潟)などは、中央値が30%台に留まっています。
これらの大学では、ストレート合格が「3人に1人」という厳しい状況が長期化しており、入学後には平均以上の学習努力が求められる環境にあると言えます。

結論:どの大学でも、道はあなたが切り拓ける

ここまで、厳しいデータや大学間の格差について触れてきました。
しかし、最後に受験生の皆さんにどうしてもお伝えしたい真実があります。

それは、「どの大学に入学しても、ストレートで歯科医師になることは十分に可能である」ということです。

データはあくまで「環境の厳しさ」を示す指標に過ぎません。
合格率が低い大学であっても、ストレートで合格していく学生は必ず存在します。逆に、トップ校に入っても、油断すれば留年します。

勝負を分けるのは、大学の偏差値ではありません。
「低学年のうちから、毎日コツコツと学習習慣を積み重ねられるか」
この一点に尽きます。

歯科医師国家試験は、基礎から臨床まで膨大な知識を問われますが、決して「天才にしか解けない試験」ではありません。1年生から日々の講義を大切にし、着実に知識を定着させていけば、どの大学からでも必ずストレート合格をつかみ取ることができます。

道のりは決して楽ではありませんが、歯科医師という素晴らしい職業を目指して、地道に、そして着実に歩んでいきましょう。
あなたの6年間の健闘を、心より応援しています。

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カメ人間
歯学部情報オタク
現役の私立大学勤務。入試・教育データの分析を専門とし、10年以上にわたる継続的な調査研究を行っています。 歯学部受験において、受験生が本当に知るべき「数字の真実」を中立に伝えるためのメディアです。国、自治体、各大学が公表する一次資料を徹底的に精査し、新卒合格率だけでは見えないストレート合格率や留年リスクを可視化。16年分の蓄積データに基づき、後悔しないための大学選びをサポートします。数字の背景や注意点まで含めて詳説し、偏差値に偏らない客観的で実用的な指標を提供することが使命です。
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